大屋地爵士のJAZZYな生活

天女の印 ~ 早春の秋篠寺を訪ねて ~

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あまりにも暖かでいい天気なので、帰省してきた息子を奈良までおくる用事の後、西大寺、西ノ京あたりを散策しようということになりました。我が家から、車で小一時間、息子を送ってから、まず訪れたのは「秋篠寺」。「伎藝天」で知られたお寺ですね。かって30年ほど前に訪れていたがお堂の佇まいなどは、もうすっかり忘れていました。

「秋篠寺」の草創は、光仁天皇の勅願とか秋篠氏の氏寺であったなどと言われていて、はっきりしないらしいが、宗派は創建当初の法相宗から現在は単立宗となっている。 「東塔・西塔」などを備えた伽藍規模からも、官寺並みの大寺院だったらしいが、平安時代に兵火により、伽藍の大半を失い、創建当時の大寺の面影は残念ながら今は偲ぶことができず、小ぢんまりながら静かな佇まいの寺となっている。

平成2年のご結婚後、陛下から皇室ゆかりの地名に因んだ宮号を賜った「秋篠宮」様。その妃殿下である「紀子さま」の横顔が、「伎芸天像」に似ておられるという評判から、ある時期多くの人が秋篠寺に訪れたそうである。またこの「伎芸天像」、女性、特にキャリアーウーマンには大変な人気なんだそうです。

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写真は仏像net HPより

駐車場から東門を抜け、 苔の翠がそれは鮮やかな木立を抜けると、すぐに国宝の本堂(創建時は講堂)。その中に諸仏と並んで、伎芸天はひっそりと安置されていました。 

「伎芸天(技芸天とも)」は、仏教守護の天部のひとつ。容姿端麗で伎芸の才に優れた天で、仏典などによれば、大自在天(=シヴァ神)が天界で器楽に興じている時、その髪の生え際から誕生した天女。そのため、芸道の上達を目指す人々の信仰は厚いそうだが、梵語名は不詳で謎の天女であるという。そして、わが国に現存する像は秋篠寺の天女像ただ一像のみであるという。
現存の像は、頭部のみが平安時代の造立当時のもので、首以下は鎌倉時代の補作によるものであり、造立当時のお姿は不明。「経軌」という「仏像の形マニュアル」によれば、左手に一天華を持ち、右手は下に下ろし衣を捻ると記述されており、現在の姿とは大きく異なっているため、「伎芸天」でない可能性もあるそうだ。しかし、秋篠寺を訪れた人々は、そんなことはどうでもよく、すっかり伎芸天のとりこになってしまうらしく、広隆寺の弥勒菩薩像などと同様、熱狂的なファンが多いようである。

本堂内、末座の位置に伎芸天はひっそりと安置されていた。仏教守護の天部の一人であるから、末座に安置されているのは当たり前なのだ。中央に「薬師如来」、向かって左右に「月光・日光菩薩」、さらに左右に「薬師12神将」、さらに左右に「地蔵菩薩・不動明王」。そして「薬師如来」から最も遠い左端の末座に「伎芸天」、右は「帝釈天」。

伎芸天、結構大きし、肉付きも豊かであられる。真っ先に気がつくのは、そのうつむき加減の優しい目線。「俵万智」が魅せられたあの角度の目線だ。笑みをかすかにたたえ、見上げながら、向き合う人をごく自然に安らかな気持ちに導くようだ。

  見上げれば同じ角度に見下ろせる 伎芸天女その深き微笑み  (俵 万智)

そして、その指先。豊かな感情が、人差し指と小指を立てたままで、さりげなく内側に軽く曲げられた中指・薬指の指先からあふれ出てくるようである。右手は上に曲げられ、左手は掌を内側に自然に垂らされている。「しな(科)」と呼ぶにはあまりにも上品なその形、まさに「伎芸天」と呼ばれる由縁か。

  秋篠の伎芸天女の印むすぶ指  細々と空に定まる   (鈴木光子)

さらにかすかな腰のひねりによって、その上品な「しな」は、完璧に完成される。この微かな捻りにほのかな色気を感じる人が多いようだ。

  贅肉(あまりじし)なき肉置きのたおやかに み面もみ腰もただうつつなし  (吉野秀雄)

作造年代が違う首から上と下とをあわせた像であるがそんなことはまったく感じさせない。むしろつなぎ合わせた無名の仏師によって完璧で絶妙なバランスを持つ像が誕生したといっていい。
この美しい立ち姿の像・・・。これは本当に信仰の対象としての仏像として造られたのだろうか。無名の仏師の作造の思いはなんだったのであろうか。一篇の物語が出来そうである。そんなことを感じさせるくらいこの像は美しい。

  伎芸天女寒きしじまの夕にすら 匂ひこぼれて立たせ給へり  (松山千代)
  一燭に春寧からむ伎芸天   (青畝)

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つかの間の陶酔から覚めて、寺のすぐ近くに目立たずひっそりと構えられた「秋篠窯」にむかう。応対に出てこられた奥様に聞くと、先代が土を求めてこの地に窯を開き作陶を始めたとのこと。木立の中の苔の翠を思わせるような青磁の皿と茶碗を、日用使いにと求めた。そして秋篠を後に、来年遷都1300年を迎える平城京址へと向かった。

秋篠寺といえば思い出す小説がある。朝鮮半島の出自の作家「立原正秋」の「春の鐘」。
古陶磁器の美を探求する妻に裏切られた美術館長と夫に離縁された女が、大和路の四季をバックに織りなす恋愛小説で、主人公たちが人目を忍んで借りた一軒家が、ここ「秋篠の里」である。どろどろの不倫小説なのに、いつもの「立原正秋」特有の爽やかな印象と清潔感に満ちていて救われる。またこの小説は、蔵原惟繕監督によって映画化され、主人公の鳴海と多恵は、北大路欣也、古手川祐子が演じている。(VHSのみ)

春の鐘 (上巻) (新潮文庫)

立原 正秋 / 新潮社



「伎藝天」に強いてなぞらえるつもりはないが、我がミューズ「カサンドラ・ウィルソン/ニュー・ムーン・ドーター」をあげてみたい。もう何の説明も不必要はくらい、超有名なアルバム。彼女自身のセミヌードの姿も話題になった。冒頭あのビリー・ホリディの「奇妙な果実/Strange Fruits」から始まり、今まで聞いたことのない不思議なアレンジの「Moon River」でおわる「New Moon Daughter」。96年度スイングジャーナル誌選定ジャズディスク大賞ボーカル賞受賞の文句なしカサンドラ・ウィルソン最高傑作アルバム。

ニュー・ムーン・ドーター
カサンドラ・ウィルソン / 東芝EMI
ISBN : B00005GKDL
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「Cassandra Wilson - Love Is Blindness (恋は盲目)」

          
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by knakano0311 | 2009-02-12 00:34 | おやじの遠足・街歩き | Trackback(1) | Comments(0)
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