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大屋地爵士のJAZZYな生活

60歳過ぎたら聴きたい歌(39)  ~わたしが一番きれいだったとき~

わたしは昭和21年3月生まれ。敗戦の翌年に生まれた。だからいつも、今年は終戦後何年かはすぐ分かる。そして今年もまた八月が巡ってきた。

広島出身で、世界的デザイナーの三宅一生氏(71歳)が、ニューヨーク・タイムス紙への寄稿で7歳のときの自らの被爆体験を語り、オバマ米大統領に平和記念式への出席を呼びかけた。いままでは心の奥深くにその体験を封印してきた三宅氏であるが、「核兵器を使った唯一の国として、核無き世界を目指す」という、プラハでのオバマ大統領の演説を聞いて、自分も発言すべきだと心が揺り動かされたという。

プロ野球解説者の張本勲氏(69歳)。5歳のとき広島で被爆し、被爆手帳を持つ在日韓国人二世であるが、かれも発言を封印してきた一人。しかし、ここ数年被爆体験を話し始めた。きっかけはある番組で、どこへ原爆が落とされたか知らない若者がいたからであるという。

わたしも実のところ、戦争の実体験はない。もうなくなりつつある戦争体験をした先輩たちの時間。ヒロシマの祈り、ナガサキの願いをTVで観た・・・。

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「茨木 のり子」(いばらぎ のりこ、1926年6月12日 - 2006年2月17日)という詩人がいる。茨木のり子は、同人誌『櫂』を創刊し、戦後詩を牽引した日本を代表する女性詩人にして童話作家、エッセイスト、脚本家である。戦中・戦後の社会を感情的側面から描いた叙情詩を多数創作した。今回の聴きたい歌「わたしが一番きれいだったとき」は多数の国語教科書に掲載され、彼女の最も有名な詩のうちの1つである。
私達の親世代の戦争体験の歌であるが、永く語り継ぐべき歌であるとわたしは思う。女性がその一番美しいときにオシャレや恋ができなかった不幸と不条理と怒りを淡々と綴る。

「わたしが一番きれいだったとき -  茨木のり子」

          

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シンガーソングライターの「沢知恵」がこの詩の一部にメロディをつけ、弾き語っている。
「沢知恵」(さわ ともえ、1971年2月14日 - )。ピアノを弾き語る歌手。 日本人牧師の父と韓国人牧師の母の間に生まれる。母方の祖父は韓国の詩人である金素雲(キム・ソウン)。幼い頃より両親の仕事のため日本、韓国、アメリカを中心に移り住み、3ヶ国語を身につける。東京藝術大学音楽学部卒業。1998年、日本国籍を持つ歌手として戦後初めて韓国政府の許可を得て韓国でコンサートを行い、日本語で歌った。2001年より毎年香川県ハンセン病療養所大島青松園で無料コンサートを開いている。そんな各地でのライブ活動での歌唱をまとめたアルバムが「わたしが一番きれいだったとき」。女性の瑞々しい感性や細やかな情感で愛と平和を歌った歌を集めたこのアルバムのなかには「茨木のり子」の「自分の感受性くらい」も収録されている。たびたびこのブログに登場するわたしが最も好きな日本のシンガー・ソングライターの一人、「沢知恵」。

わたしが一番きれいだったとき

沢知恵 / コスモスレコーズ



【 わたしが一番きれいだったとき 】  茨木のり子 (東京書籍版「新しい国語2」より引用)

「♪ わたしが一番きれいだったとき 
   まちまちはがらがら崩れていって  
   とんでもないところから
   青空なんかが見えたりした

   わたしが一番きれいだったとき 
   まわりの人達が沢山死んだ
   工場で 海で 名もない島で
   わたしはおしゃれのきっかけを落としてしまった

   わたしが一番きれいだったとき 
   だれもやさしい贈物を捧げてはくれなかった
   男たちは挙手の礼しか知らなくて
   きれいな眼差だけを残し皆発っていった

   わたしが一番きれいだったとき 
   わたしの頭はからっぽで
   わたしの心はかたくなで
   手足ばかりが栗色に光った

   わたしが一番きれいだったとき 
   わたしの国は戦争で負けた
   そんな馬鹿なことってあるものか
   ブラウスの腕をまくり卑屈な街をのし歩いた

   わたしが一番きれいだったとき 
   ラジオからはジャズが溢れた
   禁煙を破ったときのようにくらくらしながら
   わたしは異国の甘い音楽をむさぼった

   わたしが一番きれいだったとき 
   わたしはとてもふしあわせ
   わたしはとてもとんちんかん
   わたしはめっぽうさびしかった

   だから決めた できれば長生きすることに
   年とってから凄く美しい絵を描いた
   フランスのルオー爺さんのように
                     ね     ♪」
by knakano0311 | 2009-08-09 22:29 | 60歳過ぎたら聴きたい歌 | Comments(0)
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