さて、二日目は「わがJAZZミューズ」五人の中で、暫定ではあるが、ただ一人の日本人枠を埋めている「伊藤君子」のコンサートである。私は、彼女こそ日本の現役女性JAZZボーカルの最高峰であると思っている。コンサートは我が地元の商工会が主催して、もう今年で22回目を迎える「West River Jazz Concert」。その今回のゲストが彼女。
さてその彼女が今回、ピアノ・トリオを引き連れてのコンサート。しかしこのトリオの顔合わせも、彼女との演奏もこの日が初だという。まずは、ピアノトリオの「枯葉」につづき登場、「イパネマの娘」、「ニューヨークの秋」でコンサートの幕が開いた。やはり、JAZZはライブである。コンサートホールでなく椅子席200ほどをしつらえた多目的ホールであったが、声の張りといい、艶といい、ノリノリ全速全開のスキャットといい、最初からJAZZボーカルの楽しさがびんびんと伝わってくる。「Summer Time」、「Fly Me To The Moon」ほか津軽弁で歌うスタンダードの頃になると、比較的おとなしかった客席もかなり乗ってきた。そして、名曲「Song For You」、「On A Clear Day You Can See Forever」、「You've Got A Friend」のドラマティックな熱唱で最高潮。そしてラストは「スイングしなけりゃ意味がない」、アンコールは「Follow Me」と締めくくった。
彼女のディスコグラフィからお薦めをいくつかあげておこう。まず、はじめて「伊藤君子」を聴いて見ようかという人には、ベスト盤がおすすめ。「Best of Best~Selected by 伊藤潔」。これまで伊藤君子のほぼ全作品を制作してきたプロデューサー伊藤潔氏が、1989-2004年のアルバムから、セレクトしたベスト・アルバム。「LOVE」、「イエスタデイ」、「明日に架ける橋」、「Close To You」など、ビートの効いたスタンダードから熱いソウル、甘いバラード、小粋なPOPSまで、これぞ女性ボーカルという美しい艶のある声で聞かせてくれる。
香川県小豆島出身ながら、「伊奈かっぺい」氏との対談の中から生まれたという津軽弁によるJAZZといった新しい企画のアルバム。このなかから3曲がコンサートでも歌われた。津軽弁の響きがこれほど美しく、ジャズにマッチすることを認識させられる野心的な試みのアルバム。津軽弁での訳詩は、1曲デュエットもしている「伊奈かっぺい」氏ほか。「連でけって お月様さど 星コの中さ ・・・・(Fly Me To The Moon)」。これだからJAZZは楽しい。