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大屋地爵士のJAZZYな生活

おやじのハコものがたり(5) ~駅の記憶~

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最近、駅の建物、駅舎の個性が失われて、味気なくなったような気がする。便利さは増す一方で、記憶に残る駅が少なくなったとも感じている。とくに新幹線が停車する主要駅はそのような気がするのだ。国鉄民営化以降、在来線や地下鉄、私鉄、バスなどとの乗り換え、観光、ショッピング、周辺へのアクセスなどの利便性や企業利益の追求が優先された当然結果ともいえるのだが・・・。かって大学入学のため旅立った故郷の松本駅、新生活への期待と不安を抱えて降りたった仙台駅、昔の面影はない。また、後半の在職時の出張では飛行機、定年後は専ら車と、移動に列車を利用する機会がめっきり少なくなっていったという私サイドの事情も影響していると思う。そして関西に住んでいる私にとって記憶に残る駅の筆頭は「東京駅」である。新幹線で上京するたび、わざわざ丸の内側へ出て、あの赤レンガの優美な駅舎の眺めを楽しんだこともある。
1889年に国鉄東海道本線の新橋 - 神戸間が全通し、私鉄の日本鉄道が上野を始発駅として青森に向けて線路を建設していた。そこで、新橋と上野を結ぶ高架鉄道の建設が東京市区改正計画によって立案され、1896年の第9回帝国議会でこの新線の途中に中央停車場を建設することが可決されたという。実際の建設は日清戦争と日露戦争の影響で遅れ、1914年12月18日に完成し、同時に「東京駅」と命名された。赤レンガの駅舎の設計は建築家の辰野金吾。
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いくつかの思い出もある。一つは「エキコン」の名で親しまれた「赤煉瓦コンサート」を聴いたこと。結婚前は大手町で勤めていた妻が、大阪に帰る私を何度か送ってきたのもこの駅であった。もう一つは、駅舎内にある「東京ステーションホテル」に宿泊したことがある。共同風呂などで現代のシティ・ホテルには機能的には及ばないが、その重厚な内部の雰囲気、バーのレトロな感じなど再び泊まってみたいと思うほど、大変好ましい印象であった。2003年、このホテルを含む東京駅舎は重要文化財に指定された関係で、駅舎は2011年度末の完成予定で東京駅開業当初の姿への保存復元工事が行われている。これに伴い、ホテルは2006年3月31日から営業休止しているが、保存復元工事完成後に営業再開予定だという。

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JRの各駅が近代的に改装・改築されていく中で、レトロな趣のある駅はもう地方や私鉄にしか残っていないのではないかとさえ思ってしまう。そして、この東京駅を設計した「辰野金吾」氏の手になる駅に係わる建物が関西にもいくつか存在する。まずは、南海電車「浜寺公園駅」。駅舎は、2007年には建造から100年目を迎えた私鉄最古のもので、辰野金吾設計の木造平屋建ての洋風駅舎である。現在はこの付近一帯は広大な石油コンビナートとなっているが、かつて「東洋一」とうたわれた海水浴場だった。その名残りは、シンクロナイズドの五輪チームを輩出するスイミング・クラブがあることで知られている。1906(明治39)年、浜寺公園内の砂浜が海水浴場として整備され、南海電鉄は遊園地を造り、一大リゾート地を形成したため、夏の人出は60万~70万人に上ったという。戦後、工業地帯造成のための埋め立てが始まり、海水浴場は61年に閉鎖され、関西有数の高度経済成長の拠点へとひた走っていった。

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そして、2001年開業の神戸市営地下鉄海岸線の「みなと元町駅」。この駅は、かってのこの一帯栄町の繁栄振りを残すため、明治41年(1908年)竣工の辰野金吾設計による旧第一銀行神戸支店の外壁を残したものである。できることなら建物全部を残して欲しかったものである。かって神戸の繁栄の中心であったこの栄町一帯には、当時の洋館造り、レンガ造りの建物がたくさん残っていて、最近多くの洒落たブティックやカフェが集まっているので、賑わいを取り戻すと共に、私の「街歩き」のお気に入りの場所でもある。

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昨年開業した京阪電車・中之島新線の「なにわ橋駅」。この駅は、大阪の活性化に奔走する異色の建築家・安藤忠雄氏の設計であるが、夜の帳が訪れる頃、青く発光するLEDを埋め込んだクリスタル硝子のブロックを天井・壁の内側に張り詰めた出入り口を、コバルト・ブルーの空間につつまれて上がって行くと、半アーチ状の出入り口の先には、ライトアップされた中央公会堂の美しい姿が徐々に見えてくる。この中央公会堂が辰野金吾・片岡安が設計を行い、1918年(大正7年)に完成した赤レンガの美しい建物である。

まだ他にも全国には、このような美しい情緒のある駅がたくさん残っていると思う。効率化や機能化だけのために消え去って欲しくないと思うのは私だけではあるまい。

駅を歌った歌・・・。人生のドラマが凝縮された駅だけに、別れ、出会い、新生活をテーマにした歌や映画は数知れず・・・。そんな中で私の好きな歌は、「竹内まりや」によって提供され、「中森明菜」が歌う「駅」。歌姫シリーズの中で、彼女自身のセルフカバーによるアルバム「歌姫 ダブル・ディケイド」から。私は歌謡曲の特にファンというわけではないのだが、彼女のいくつかのアルバムには「う~ん」とうなってしまう。私生活では時折スキャンダラスな話題がつたえられるが、本当に歌はうまい。かっての恋人を偶然駅で見かけ、一つとなりの車両に乗って彼を見つめる ・・・。

Akina Nakamori~歌姫 ダブル・ディケイド~
中森明菜 村田陽一 森由里子 康珍化 森村献 冬杜花代子 武部聡志 許瑛子 千住明 / ユニバーサル・シグマ



「中森明菜 ― 駅(2002 歌姫 ダブル・ディケイド ver.)」

           

「終着駅」という言葉を含んだ歌は、ウエットな歌謡曲の世界には山ほどあるが、かって「奥村チヨ」が歌って大ヒットした「終着駅」が、その代表的な歌であろう。「中森明菜」のカバー・シリーズ「歌姫Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ」のなかではⅡの「ZERO album~歌姫II」が一番Jazzy。スキンヘッドのジャッケトでも大きな話題になったが、中身もなかなかなもの。EGO-WRAPPIN'の「色彩のブルース」のスイング感もすごいし、あの「秋桜」は山口百恵を超えたのではと思わせるほどのできばえ。その中の「終着駅」もまた秀逸な歌唱で聴かせる。

ZERO album~歌姫II
中森明菜 千住明 永六輔 康珍化 庄野真代 荒木とよひさ 竹内まりや / ユニバーサル・シグマ


いちどJAZZを歌わせてみたいと私が思う歌手、夫の逝去後、音楽の世界から一切身を引き、いまや「幻の歌手」化してしまった感のある「ちあきなおみ」。彼女の歌う「男駅・女駅」も、先に乗り込んだ列車で恋人を待っている女の情感を鮮やかに切り取ってみせた出色の歌唱である。アルバムは、彼女の歌手活動休止後、今までの音源を集め、コンサート仕立てで、リリースされた「ハンブルグにて」。バーチャル・コンサートと苦肉の副タイトルがついているが、圧巻「ねえ あんた」も収録されている。

VIRTUAL CONCERT 2005 ハンブルグにて
ちあきなおみ / / テイチクエンタテインメント
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邦画では、我が高校の一回り先輩である降旗康男監督の代表作「駅」をあげておこうか。雪の大晦日の場末の居酒屋で、TVに映る紅白歌合戦で、八代亜紀が「舟歌」を歌う画面を、女が一人見つめるシーンが印象的であった。

駅 STATION [DVD]

東宝ビデオ



  (つづく)
by knakano0311 | 2009-10-31 16:36 | おやじのハコものがたり | Comments(0)
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