大屋地爵士のJAZZYな生活

我が青春のシネマ・グラフィティ(15) ~ フランソワーズ・アルヌール/ヘッドライト ~

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またもやフランス女優で恐縮です。「フランソワーズ・アルヌール」。「フランソワーズ・アルヌール/Françoise Arnoul(1931年6月3日 - )」は、当時フランス領であったアルジェリアのコンスタンティーヌで生まれ、1950年代から60年代にかけてフランスで活躍した女優です。

石ノ森章太郎による日本のSF漫画「サイボーグ009」の登場人物の「003=フランソワーズ・アルヌール」とお間違えないように・・・。しかし、その名前の由来は、石ノ森氏が大のファンであった「フランソワーズ・アルヌール」からとったという。

仏領時代のアルジェリア出身で、1950年代のフランス映画界でもっともセクシーといわれた女優である。一時はオードリー・ヘプバーンより人気があったとか。猫のような大きな眼、官能的な厚めの唇、可憐ではあるが、時折見せる小悪魔的色気が男心をそそる ・・・。「ブリジッド・バルドー/Brigitte Bardot」、「ミレーヌ・ドモンジョ/Mylene Demongeot」など彼女に続くフランス的小悪魔女優の先駆者だったといえよう。なんといっても、「ヘッドライト」(1955)が代表作であったが、1962年の「フランス式十戒」あたりを最後にその活躍が見られなくなってしまった。小悪魔から脱皮できず、30代半ばで時間が止まってしまったのだろうか。本当に惜しい気がする女優の一人である。

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なんといっても、「ヘッドライト/Des gens sans importance」(1955)である。原題の意味は、「重要性のない人間たち=名も無き人々」。「過去をもつ愛情」の翌年、「アンリ・ヴェルヌイユ/Henri Verneuil」が監督した切ない恋愛映画で、この映画もまた高校の名画鑑賞会で観た映画である。日本では、我々以上の世代にとっては、多分最も感涙にむせんだフランス映画の一つであろう。 「ジャン・ギャバン/Jean Gabin」が演じる、パリとボルドー間を走る初老の長距離トラック運転手と、「フランソワーズ・アルヌール」が演じるパリに憧れる運転手相手のカフェの若いウエイトレスの悲恋物語。社会の底辺にあえぐ人々が、希望のない貧しさがゆえに結ばれていく。今日にも通ずる物語かも知れない。夜の闇をひた走るトラック。対向車のヘッドライトにうかぶギャバンの横顔 ・・・。このラストシーンも、私にとっては、その音楽と共に忘れられないシーンである。
映画音楽は、シャンソンの名曲「枯葉」の作曲者、「ジョセフ・コスマ」が担当、ヴァイオリンの儚げで哀しげなミュゼットが感涙をしぼるように、ラストシーンを引き立てる。 背中で魅せる男、ギャバンにとっても、代表作の一つとなった。

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映画「ヘッドライト」の一シーンはこちら。

そしてJAZZファンである私にとって、記憶に残る彼女のもう一つの作品は、「大運河(グランカナル)/Sait-on jamais...」(1956年)。あの「ロジェ・ヴァディム/Roger Vadim」監督デビュー作となったミステリータッチの映画。若いソフィーを演じる「フランソワーズ・アルヌール」と絡むのはジャーナリストを演じた「クリスチャン・マルカン/Christian Marquand」とアルヌールの元恋人を演じた「ロベール・オッセン/Robert Hossein」。どちらもイケメン、相当な二枚目俳優でしたね。第二次大戦中に金融市場を撹乱を狙って贋金を製造した鋳型を持って、姿を隠した男爵。その男爵の養女だという美貌のソフィーに恋をしたジャーナリストが陥る恐怖を、水の都ベニスの運河を走る船を舞台にしたミステリーです。

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そして、特筆すべきことは、「モダン・ジャズ・カルテット/The Modern Jazz Quartet」、MJQのピアニスト、「ジョン・ルイス/John Lewis」が音楽を担当したということ。すなわち、映画でモダン・ジャスが使われた最初の作品であったのだ。その「大運河」で使用された6曲を収録したアルバムが、「たそがれのベニス」である。まるで組曲のような6曲が、哀愁とグルーヴィーなJAZZ感覚で見事に融合し、このアルバムはMJQの初期の代表作となった。そして、その翌年にはマイルスの「死刑台のエレベータ」、59年には再びロジェ・ヴァディム監督作品からは、アート・ブレーキー「危険な関係のブルース」と、ヨーロッパ映画からジャズの名曲が生まれていった。

たそがれのヴェニス

モダン・ジャズ・カルテット / Warner Music Japan =music=



高校生の頃、わたしが惹かれた歌の一つにポルトガルの歌手、「アマリア・ロドリゲス」の歌うファドの名曲で、「暗いはしけ/Barco Negro」という歌があった。この歌が映画の挿入歌であり、その映画に「フランソワーズ・アルヌール」が出演しているとは、相当あとまで知らなかった。たしか、TVでなにげなくみた映画でそうだと知ったのだった。
その映画が、「過去をもつ愛情/Les Amants du Tage」(1954年)。「ヘッドライト」と同じ監督の「アンリ・ヴェルヌイユ/Henri Verneuil」が前年に撮った作品である。パリとリスボンを舞台にした犯罪メロドラマでアルヌールは富豪の夫殺しの疑惑をかけられて、警察から追われている女を演じている。「アマリア・ロドリゲス」がファドを歌う酒場シーンが秀逸で、このシーンから、「黒い小舟」という意味の「暗いはしけ」は世界的に大ヒットして、ポルトガル民謡である「ファド」も知られるようになった。そして、「過去をもつ愛情」は「ミシェル・ルグラン/Michel Legrand」の映画音楽デビュー作品である。残念ながら、この映画はVHSビデオ版でしかリリースされていないようである。

ポルトガルが生んだ最高の歌姫「アマリア・ロドリゲス/Amalia Rodrigues」。ギターとマンドリンだけの伴奏とアマリアの悲痛な歌声。「ビリー・ホリデイ」や「エディット・ピアフ」に匹敵するほどの、ソウルフルな歌唱が凝縮したアルバム。もちろん名唱「暗いはしけ」も・・・。

アート・オブ・アマリア・ロドリゲス

アマリア・ロドリゲス / EMIミュージック・ジャパン



ロドリゲスが「暗いはしけ」を歌う映画のシーンはこちら。

このように、「フランソワーズ・アルヌール」は、私の音楽の嗜好とも深く関わりのあった女優であった。

ところで、本題からはそれるが、日本の歌謡曲歌手のなかで、私がその実力を認め、一度は本格的JAZZを歌って欲しいと思っている歌手の一人に、「ちあきなおみ」がいる。その彼女がファドのアルバムを出しているのをご存知だろうか。訳詩でなく、曲から受けるイメージで新しい日本語のタイトルと歌詞をつけてカバーした、ファド、シャンソン、JAZZスタンダードのカバー3部作(待夢、それぞれのテーブル、THREE HUNDREDS CLUB)である。その中からファド編のアルバムを紹介しておこう ・・・。このアルバムのラストで歌っている「始発・・・まで」が「暗いはしけ」のカバーである。(追補;3枚を2枚組1アルバムにまとめた「Another World」もリリースされている)

待夢(紙ジャケット仕様)

ちあきなおみ / ビクターエンタテインメント



ちあきなおみの歌う「始発・・・まで(暗いはしけ)」のYOUTUBE

          
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by knakano0311 | 2010-01-19 10:16 | シネマな生活 | Trackback | Comments(0)
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