そんなシーンの描写で始まる本がある。「終わりなき闇 ~チェット・ベイカーのすべて~」(河出書房新社)。「ジェイムズ・ギャビン/James Gavin」著、「鈴木玲子」訳で、2段組、504ページにものぼる大作である。原題は「Deep in a Dream The Long Night of Chet Baker」。この原題のように、ついに現実に目覚めることなく、悪夢の淵に沈んだまま、アムステルダムのホテルの窓から転落死したJAZZトランペッター「チェット・ベイカー」の伝記である。米・西海岸のジャズシーンに颯爽と現れ、アンニュイな雰囲気で人々を魅了した男。ドラッグにおぼれ孤独な死に至るまで、今まで語られてこなかった彼のすべてを語った決定版評伝である。
チェットの死後、製作公開された彼の生涯を描いたドキュメンタリー映画がある。チェットにほれ込んだファッション・カメラマンとしても有名な写真家「ブルース・ウェーバー」が私費を投じ、自ら監督・製作したドキュメンタリー映画、「LET'S GET LOST」 (1988年製作、89年公開)。この映画の関係者へのインタビューが、「終わりなき闇」でも頻繁に引用されているし、チェットに振り回された撮影の様子も描かれている。デビュー当時から最近までのベイカーの写真をモンタージュしながら、レコーディング・セッションする彼の姿を捉え、またインタビューによって彼の私生活にまで立ち入り、アーティストとして、また人間としてのチェット・ベイカーの姿を浮き彫りにしようとした。チェットがホテルの窓から落ちて死ぬ直前のツアーに同行したスタッフが撮った映像は、彼や友人のインタビューを交えながら鮮烈な世界を紡いでいく。
残念ながら、この映画、日本ではかってVHSのみがリリースされ、DVD化はされてない。従って、フィルムでも、VHS・DVDでも観ていないので、私にとっては垂涎の幻の映画となっています。ぜひDVD化が望まれるところ。
【 My Funny Valentine 】 Words and Music by R. Rodgers and L. Hart
「♪ My funny Valentine, 私のおかしなバレンタイン、
sweet comic Valentine 可愛くて面白いバレンタイン
You make me smile with my heart あなたといると心から笑顔になる
Your looks are laughable, ルックスは笑えるけど、
unphotographable 写真向きじゃない
Yet you're fav'rite work of art でもあなたは大好きな芸術作品なの
Is your figure less than Greek? ギリシャ彫刻には到底およばないし
Is your mouth a little weak? 口元もちょっとだらしないし
When you open it to speak, are you smart? 口を開くと、あまり賢そうとも思えない
But don't change a hair for me でも、髪の毛一本も変えないでね、私の為に
Not if you care for me もしわたしを大事に思っているならね
Stay little Valentine, stay! ずっとそのままでいてね、ずっと
Each day is Valentine's day そうしたら毎日がバレンタインデイになるから ♪」