中央高速長野道。塩尻ICを降りてすぐ、東山山麓線を松本へ向かうと、この時期、あたり一面の蕎麦畑に白い可憐な蕎麦の花がまるでじゅうたんのように咲き乱れている。このあたりから、松本の私の実家までは水田や林檎畑、葡萄畑などに混じって、多くの蕎麦畑が続いているのである。そう、もうしばらくすると、秋の訪れとともに、薫り豊かな新・蕎麦の季節、蕎麦好きが待ちに待った季節がやってくる。逆に言うと、この八月ごろが蕎麦粉が最もやせているので、それをおいしく食べさせるため、蕎麦屋ではいろいろな工夫をしているようだ。もっとも、南半球オーストラリアでは、春が蕎麦の収穫期のため、都会の蕎麦屋では、そこからそば粉を輸入しているところもあると聞く。
蕎麦は元来、土地の痩せているところ、寒冷地などで米が取れないから栽培された穀物である。火山灰に覆われた、木曽乗鞍、戸隠、寒冷地北海道、山形寒河江など名高い蕎麦どころは皆、そうである。
前にも書いたが、塩尻ICからも近い木曽路の端、洗馬(せば)近くの「山本宿」は、「蕎麦切り」発祥の地であるという。これは、江戸時代の粋人「太田蜀山人」の著書にそう書いてあるらしい。それまでの「蕎麦がき」、いわば「蕎麦団子」みたいな食べ方を、「蕎麦切り」、細く切って、「団子」から「麺」としての食べ方に変えた地であるそうだ。木曽・山本宿は「町おこし」の一環としてこのことをPRし、町民総出で町営の蕎麦処を運営しているほどである。
私は、おいしい蕎麦屋があると聞くと、かっては松本市内はいうに及ばず、松本平、安曇野、木曽あたりまでも駆け巡った蕎麦好きであったが、最近、松本市内を散策していると、そのたびに新しい蕎麦屋がオープンしているのでとても追いつかず、最近は、昔からの馴染んだ味の蕎麦屋に腰が落ち着いてしまっている。
蕎麦屋が少ない関西に住まうようになってからも、その癖は直らず、おいしい蕎麦屋を探してずいぶん彷徨ったものである。関西にも丹波、出石(いずし)地方など結構、いい蕎麦を産する土地も多く、すこしエリアを広げれば、出雲蕎麦は有名だし、徳島は吉野川の流域の池田でもうまい蕎麦を産することにびっくりしたことがある。「出石の皿蕎麦」で有名な出石は、信州・小諸か上田のお殿様が出石へお国替えになったとき、蕎麦職人を連れていったことからはじまったという。このように日本全国、それぞれの土地で様々な特色を持った「蕎麦」があり、それは長い歴史を積重ねた、まさにその土地の「食文化」になっているのは大変うれしい。最近は、休耕田を利用して、わが隣町でも蕎麦の栽培が盛んになり、「道の駅」などでも蕎麦を食べさせている。わが第2のふるさとにも「蕎麦」が根付いて特長のある食文化にまで育ってくれたらいいなあ。
松本市内では10月9日からの
「信州・松本そば祭り」 の開催を告げるポスターが目に付いた。新・蕎麦の季節が、いよいよ始まるのである。松本地方では、厳冬期に醸造された日本酒を熟成させ、夏を越えて味に丸みが帯びたころに出荷される酒を「ひやおろし」と呼ぶが、この「ひやおろし」を飲んだ後の「蕎麦」が堪えられないそうである。聞くからに旨そうではある。昔、酒好きの叔父や父親が飲んでいた「ひやおろし」の味を私は知らないが、蕎麦屋で飲むことは現役のときも好きであったし、仕上げは蕎麦と決めていた。また、なにか胃がもたれるときでも、蕎麦を食べると調子が戻ったものである。まちがいなく蕎麦は私の「ソウル・フード」である。
来年春からのNHKの朝の連続テレビ小説は、「おひさま」というタイトルだそうだ。蕎麦屋に嫁いだ太陽のように明るい女性が主人公で、戦前から戦後にかけての松本市や安曇野市が舞台であるという。きっと写真のような風景も出てくるのだろうか。今から楽しみである。
蕎麦屋のしきたり (生活人新書)
藤村 和夫 / 日本放送出版協会
「大変かもしれないが、自由に暮したい」といって、ヘルパーやデイ・サービスなどのサポートを受けながら、一人で田舎の自宅で暮らす選択をしている母親。近くに住んでいる妹には負担をかけているが、そんな母親のケアのために、今年は例年より多く帰省している。少子高齢化、核家族化時代の中で流されながら ・・・・ 。
母親の人生、私の人生。人生いろいろ ・・・・。台風一過。「Come Rain Or Come Shine/降っても晴れても」。「♪ 土砂降りでも、かんかん照りでも、きみが許せば、僕は君を愛し続ける ・・・♪」というスタンダード・ソング。この歌も名のあるJAZZアーティストなら殆どの人がカバーしているのではないだろうか。すこし知ったかぶりをして、JAZZ畑以外から選ぶとすれば、まずはブラック・コンテンポラリーの異才、そのとろけるようなファルセット・ヴォイスで、女性に人気がある「アーロン・ネヴィル/Aaron Neville」の「ネイチャー・ボーイ~ザ・スタンダード・アルバム」から。
ネイチャー・ボーイ~ザ・スタンダード・アルバム
Aaron Neville / ユニバーサル ミュージック クラシック
そして、ブルース界の大御所「B.B.キング/B.B.King」とロック界のカリスマ「エリック・クラプトン/Eric Clapton」のなんとも豪華なデュエット・アルバム「Riding With the King」から。
Riding With the King
B.B. King / Reprise / Wea
ダブル・カリスマ、「キング&クラプトン」による
「Come Rain Or Come Shine」。 酒場の女性あたりとしかデュエットしたことがない私、心通う男同士のデュエットもちょっと羨ましい。