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大屋地爵士のJAZZYな生活

The Diva Has A Thousand Hands. ~唐招提寺・千手観音立像~

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(「第62回正倉院展」HPより)

今年は「平城京遷都1300年」の年である。いま、奈良ではそれを記念して、いろいろな行事やキャンペーンが大々的に行われている、NHK-TVでもいくつもの特別番組を組んでいるが、関西に住んでいる私は、殆ど毎日のように、それに関するPR番組やニュースにお目にかかる。秋の奈良へ行きたいとは思うのだが、あの大変な人出を想像すると、「奈良好き」の私もさすがに敬遠気味で、今年は奈良を訪ねるのは控えておこうかと思ってしまう。しかし、10月23日からは、定年後は毎年欠かさずに訪れている「正倉院展」が始まるので、正直言って、行こうかどうか迷っているのである。

西暦710年わが国の本格的首都が「奈良」の地に誕生した。「大宝律令」が制定され、律令を基本とする統一国家が成立、また最古の歴史書「古事記」、「日本書紀」などが編纂され、日本の国家としての基本的枠組みが確立した時期でもある。また、正倉院御物に見られるように、朝鮮半島、大陸との盛んな交流を通じ、ユーラシア各地から、技術、文化、文明がもたらされ、わが国の古来の文化と融合して、天平文化が花開いた時代でもあった。きっと我々が今想像する以上に、美しくて、華やかで、すばらしいものだったに違いない。

そんなことを思っていた先日、平城京遷都にあわせた企画だと思うが、NHK衛星放送の映画で、「井上靖」原作、母校の先輩「熊井啓」が監督、「中村嘉葎雄」主演の「天平の甍(いらか)」を観た。DVDではリリースされておらず、VHSのみだけなので、今回は貴重な放映である。

天平5年(733年)、遣唐使とともに日本仏教の確立のために中国に渡った四人の日本人青年僧の青春と、彼らが唐の高僧、「鑑真和上」に出会い、二十年の歳月をかけて渡日に成功するまでの苦難の道を描いた作品。4人の留学僧のなかでただ一人、「普照」は「鑑真和上」らとともに帰国、奈良の地を踏んだ。そして、天平宝浩三年(759年)、「鑑真和上」は西の京に「唐招提寺」を建立、全国から学従が集り、講律、受戒が行なわれたのだ。

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天平の甍 [VHS]

井上靖 / 東宝




かの国もこの時代は、世界の中心にふさわしく、仏法や儒教の下、礼も節も、そして法も律も重んじた大人の国であったのだが ・・・ 。

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「唐招提寺」といえば、平成10年(1998)に、金堂を含む「唐招提寺」の伽藍建築が「世界文化遺産」となったこをきっかけに始まった金堂の10年がかりの大修理も去年に終わり、伽藍全容が見られるようになったばかりである。「唐招提寺」の仏像といえば、国宝「鑑真和上坐像」とならび、眼に焼きついて離れないほど印象的な国宝「千手観音立像」が頭に浮かぶ。

像高5メートル36センチ。金堂の須弥壇に、本尊・盧舎那仏坐像、右に薬師如来立像、左に千手観音立像(いずれも国宝)が並んで安置されている。何が印象的かというと、仏像の両肩から脇にかけて、小さな手、小脇手と呼ぶが、びっしりと円形に広がっているのである。造立当時は実際に「千の手」を持っていたらしいが、現在では大脇手42本、小脇手911本の計953本で、残りは失われてしまっている。奈良時代、8世紀の木造で、こんなに無数の「手」があるにもかかわらず、少しも異様さを感じさせず、伸びやかな印象と、涼し気ではっきりとした顔立ちをもつ仏像である。見ただけではわかりにくいが、大手・小手の掌には、絵具で「眼」が描かれていたらしく、文字通り「千手千眼」を表わしたものであった。

この仏像の「千眼」の話を聴いた時、すぐ想起されたのは、JAZZのスタンダード、「夜は千の眼を持つ」であった。1948年映画、「The Night Has A Thousand Eyes」の主題歌として書かれたというが、実際には、映画の中では、まったく使われなかったらしい。私が持っているCDの中では、「ティティアン・ヨースト/Tizian Jost/The Night Has A Thousand Eyes」、「ポール・デスモンド/Paul Desmond/Bossa Antigua」、エディ・ヒギンズ/Eddie Higgins/Don't Smoke In Bed」、「ヨーロピアン・ジャズ・トリオ/Europian Jazz Trio/The Windmill Of Your Mind」などのカバーがあるが、「ジョン・コルトレーン/John Caltrane」の特異なジャケットが印象的なアルバム「コルトレーンズ・サウンド/Caltrane's Sound」が一番有名か。

コルトレーン・サウンド(夜は千の眼を持つ)(+2)

ジョン・コルトレーン / Warner Music Japan =music=



「コルトレーン・サウンド」から「夜は千の眼を持つ」。 そのダイナミックなサックスの咆哮 ・・・。
John Coltrane;Sax (Tenor)、Steve Davis;Bass、Elvin Jones;Drums、McCoy Tyner;Piano

          

この曲、作曲者は「ジェリー・ブレイニン/Jerry Brainin」であるが、映画の主題歌として作られたのであるから、当然詩がついている。「バディ・バーニアー/Buddy Bernier」による詩、コルトレーンの咆哮からは想像できないような、なかなか繊細で、ミステリアスで、美しい歌詞である。

【 The Night Has A Thousand Eyes 夜は千の眼を持つ 】
                           作詞;Buddy Bernier  作曲;Jerry Brainin

「 ♪ Don't whisper things to me you don't mean  心にもない言葉を囁くのはもうやめて
   For words deep down inside can be seen by the night
                        夜は心の奥深くに隠した言葉まで見抜いてしまうから
   The night has a thousand eyes    夜は千の目を持っているから
   And it knows a truthful heart from one that lies
                         誠実な心と嘘をつく心を見分けることができるのです

    Tho' romance may have called in the past   あなたも過去に恋はあったのでしょう
    My love for you will be everlasting and bright  でもあなたへの愛は永遠
    As bright as the starlit skies               星空の輝きのように
    And this wond'rous night that has a thousand eyes
                              この千の目を持つ不思議な夜のように

             ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・            ♪」

この歌を歌っている歌手は少ないが、ヴォーカルで聴くなら「カーメン・マクレエ/Carmen McRae」(1920年4月 - 1994年11月)の「セカンド・トゥ・ノン/Second To None」が一番いいといわれています。しかし、残念ながら、まだ聴いたことがありません。そのうちに ・・・ 。

セカンド・トゥ・ノン

カーメン・マクレエ / ソニーレコード



また、私は「千手観音」と聞くと、どうしても「カサンドラ・ウィルソン/Cassandra Wilson」を想起してしまいます。いくつもの違ったジャンルの曲を取り込んで、自分の世界の色の曲に変えてしまう独特の魔術的歌唱の魅力が、まるで「千の手」を持っているように思えるからで、私は勝手に「The Diva With A Thousand Hands」と名づけていますが ・・・。その彼女の面目躍如たるアルバムは、「クローサー・トゥ・ユー~ザ・ベスト・ポップ・ヒッツ・コレクション/Closer To You」。過去にレコーディングされた彼女のアルバムの中から、ポップ・ヒットのカバー曲だけを集めたベスト・アルバム。「U2」、「シンディー・ローパー/Cyndi Lauper」、「スティング/Sting」、「モンキーズ/The Monkees」、そして「Harvest Moon」は「ニール・ヤング/Neil Young」のカバー ・・・ 。

クローサー・トゥ・ユー~ザ・ベスト・ポップ・ヒッツ・コレクション

カサンドラ・ウィルソン / ユーメックス



ロック・シンガー、「スティング/Sting」でヒットした「フラジャイル/Fragile」を。あまりにも美しいメロディを持つ曲なので、恋の歌かと思うかもしれませんが、反戦歌です。

           
 
 
 
by knakano0311 | 2010-10-22 00:06 | 音楽的生活 | Comments(0)
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