大屋地爵士のJAZZYな生活

その後の小説「阪急電車」

b0102572_1656220.jpg

・・・・・・・・ 
電車が武庫川に架かった鉄橋を渡る。 
「あ?」 
思わず声が漏れた。鉄橋を渡り終える寸前の川の中洲に、
『生』
その一字が決して小さくはない中州の面積をほとんど使い切るほどの大きさで書かれて - というか積まれていたのである。つまり、石を積んでその文字を立体的に造型してあるのだ。
バランスといい大きさといい、見事なまでのオブジェとなっている。 ・・・・
                                   有川浩「阪急電車」(幻灯舎文庫)より        


以前このブログで書いた宝塚市在住の女性作家、「有川浩(ありかわ ひろ)」さんのベストセラー小説、「阪急電車」の冒頭場面の一節である。「生」と描かれた武庫川の中洲の不思議な石積みのオブジェ ・・・。これは実際にあったアートを有川さんが小説で取り上げたのだ。そのオブジェは「生(せい)」と名づけられたアートで、宝塚在住の現代美術家、「大野良平」さんが、2005年1月に、阪急今津線、宝塚駅と宝塚南口駅の間にある武庫川の中州に石を並べて作った作品だそうだ。縦約20m、横約10m。当時、いたずらなのかメッセージなのかと乗客の間で話題となったらしい。

b0102572_16531738.jpg

2005年1月といえば、あの大震災から丸10年たった年である。大野さんはオブジェ「生」に震災への鎮魂の思いこめた。しかし川の増水によって、2006年の秋頃に、自然消滅してしまったという。そして、「なぞのオブジェ」として一部の人の記憶にだけ残ったのだった。

それから5年後、小説「阪急電車」が60万部超のベストセラーとなり、あのオブジェが再び話題になった。そして来年、映画化されるにあたり、撮影のため、宝塚市の許可や、宝塚大学の学生たちの協力も得て、大野さん自身の手によって、この27日から復活の制作が始まり、再び武庫川中州に蘇ったそうである。うん、早速見に行かなくては ・・・ 。

この映画、監督は「三宅喜重」、出演は「中谷美紀」と「戸田恵梨香」らだそうで、2011年初夏全国公開の予定だそうです。これもぜひ見に行かねば ・・・・ 。


b0102572_17393112.jpg
(写真;ダイヤモンドクロス;今津線宝塚行の列車が神戸線を横切る Wikipediaより)

そして、阪急今津線が神戸線へと連結しているのが、小説で折り返しの章となっている「西宮北口」。多分、鉄道ファンなら、誰でも知っている「ダイヤモンド・クロス」があった駅である。震災の年、2005年に西宮北口が高架駅となる前は、神戸本線と今津線が直角に交わる平面交差をしていた。1926年の今津線延伸当時は、立体交差が技術的に難しかったこともあって、平面交差を採用したらしく、路面電車同士の平面交差は珍しくはなかったが、高速走行の路線同士が平面交差するものは、これが日本唯一であったのである。「鉄男」ではないわたしも初めて阪急神戸線に乗って目にしたときは、びっくりしたものである。そして今年12月5日に開通する今津線高架化の計画の際に、神戸線との高架同士による立体交差という新しいクロスも当初考えられ、鉄道ファンも期待されたが、費用などの点で、結局実現できなかったようである。残念ながら「ダイヤモンド・クロス」はもう見ることができないのである。

この駅の前には、かって阪急ブレーブスのホームグランド「西宮球場」やアメリカン・フットボールのメッカ、「西宮球技場」があったが、震災後の復旧、再開発、そして2年ほど前に、その跡地に巨大なショッピング・モールが建てられ、すっかり変容してしまった。これも時代の流れか ・・・ 。

「最終列車に乗ろうか乗るまいか」と迷う、切ない思いのサンバの名曲がある。私が注目する若手成長株「グレース・マーヤ 」のアルバム「イパネマの娘」で知った「11時の夜汽車/Trem Das Onze」という曲である。オリジナルは、サンパウロのサンバ唄い「アドニラン・バルボーザ/Adoniran Barbosa」の1964年の作品。

イパネマの娘

グレース・マーヤ / Village Records(SME)(M)



「♪ あっ、もうこんな時間だ、行かなくちゃ
    好きな君にこんなこというのも残念だけど、もう行かなくちゃ
      俺、ジャサナンに住んでいるんだ
        もしあの11時の最終列車に乗り遅れたら
          あとは明日の朝までもう無いんだ   ♪」

私も日々の通勤にお世話になった阪急電車。何回も最終電車を逃したり、寝過ごしたり ・・・。サラリーマンなら誰しもある経験も。さて、小粋な爺さんのサンバでも聴いてみますか? 「Adoniran Barbosa - O trem das onze (11時の夜汽車)」

          
 
 
[PR]
by knakano0311 | 2010-12-01 10:37 | 地域の中で・・・ | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://oyajijazz.exblog.jp/tb/14495687
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
<< 炭焼き準備始まる ストーブを囲んで ・・・ >>