大屋地爵士のJAZZYな生活

読むJAZZ(12) ~村上春樹の音楽観~

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芦屋市で中学・高校時代を過ごした作家の「村上春樹」氏に関する知識を試す「村上春樹 芦屋大検定」なる検定が、同市で初めて行われたというニュース。「我こそハルキスト」と自負する200人を超えるファンが集まったという。私はファンという自覚はほとんどないのだが、著作のいくつかを読んでいるので、新聞に載っていたいくつかの問題を試してみたが、まったく歯が立たなかった。たとえばこんな問題。

第5問 デビュー作「風の歌を聴け」が映画化されたとき、「ジェイムズ・バー」の撮影に使われたバーが神戸・三宮にある。このバーの名前は?   
(A) レフトアローン  (B) プレイバッハ  (C) ハーフタイム  (D) メートル・ド・テル

答えは(C)であるのだが、私は、かってこの本は読んだことがあるにもかかわらず、まったくわからなかったのだ。まっ、そんな程度なのである。

「村上春樹」は、1949年1月12日生まれのほぼ同世代。京都府京都市伏見区に生まれ、兵庫県西宮市・芦屋市に育つ。早稲田大学在学中の1974年、国分寺に開いた、以前飼っていた猫の名前に由来するジャズ喫茶「ピーター・キャット」の経営を経て、1979年「風の歌を聴け」で「群像新人文学賞」を受賞しデビュー。昨年映画化もされた1987年発表の「ノルウェイの森」は上下430万部を売るベストセラーとなった。2009年に発売された「1Q84-BOOK1」、「同-BOOK2」、2010年に発売された「同-BOOK3」も国内外で記録的なベストセラーをつづけ、ノーベル文学賞に最も近い日本人作家といわれていることはご承知のとおり。

最初に読んだのは「ノルウェイの森」。そこから私が関心を持ったのは、村上の作品にはJAZZやPOPSなど一定の音楽性があったからである。そして、短編集、翻訳集、エッセイなどを中心に読むようになっていった。(参考拙ブログ「読むJAZZ(2) 或いは読みたいJAZZ ~村上春樹の世界~」) 

再びこの「読むJAZZ」で取り上げるのは、まず「雑文集」。インタビュー、受賞の挨拶、海外版への序文、音楽論、書評、人物論、結婚式の祝電など、1979‐2010年の初収録エッセイから、未発表超短編小説まで、著者自身がセレクトした69篇の「雑文集」である。その中の 「音楽について」の章、「余白のある音楽は聞き飽きない」では、同世代の洋楽ファンとおなじような、少年期、青年期の音楽遍歴が語られている。そして最後には、こんな音楽観で締めくくられているのである。

「僕にとって音楽というものの最大のすばらしさは何か?それは、いいものと悪いものの差がはっきりとわかる、というところじゃないかな。 ・・・・・ ただの個人的な基準に過ぎないわけだけど、その差がわかるのとわからないのとでは、人生の質みたいなのは大きく違ってきますよね。価値判断の絶え間ない堆積が僕らの人生をつくっていく。それは人によって絵画であったり、ワインであったり、料理であったりするわけだけど、僕の場合は音楽です。それだけに本当にいい音楽に巡り合ったときの喜びというのは、文句なく素晴らしいです。極端な話、生きていてよかったなあと思います。」

村上春樹 雑文集

村上春樹 / 新潮社



そしてもう一冊は、「村上ソングズ」。厖大なレコード・コレクションから、ビーチボーイズ、ドアーズ、H.メリル、T.モンク、B.ホリデイ、S.クロウ、スプリングスティーンほか、ジャズ、スタンダード、ロックの多彩なアーティストをピックアップ、訳詞とエッセイで紹介するジャズ、スタンダード、ロックの名曲集である。私にとって、初めて知る曲もいくつもあった。「読むJAZZから聴くJAZZ」への橋渡しをしてくれた楽しい本である。

村上ソングズ (村上春樹翻訳ライブラリー)

村上 春樹 / 中央公論新社



その中から曲をひとつだけ選んでみましょうか。「この家は今は空っぽだ/This House Is Empty Now」。  「バート・バカラック/Burt Bacharach」と「エルヴィス・コステロ/Elvis Costello」の共作になる歌である。村上はこんな風に評し、こんな風に訳している。

「現代のスタンダード・ソングと呼んで差し支えないほどの、美しい奥行きを持った曲だ。バカラックのたどってきた人生の年輪のようなものが、しみじみとメロディの中に漂っている。」

「♪  ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 
   そう、この家は今は空っぽだ。
   君をここにとどめておくための
   言葉はもうどこにもない。
   君なしでどのように生きていけばいいのか?
            ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・      ♪」 (村上春樹訳)

この曲が収録されている私のお気に入りのアルバムは、二人が共演したオリジナル・アルバム、「Painted from Memory」。村上がイチオシしているのは、ストックホルム生まれのスウェーデン人で、有名なメゾ・ソプラノのオペラ歌手「アンネ・ゾフィー・フォン・オッター/Anne Sofie von Otter」が、コステロとのプロデュースで実現した名盤「For the Stars」。

Painted from Memory

Elvis Costello with Burt Bacharach Mercury



For the Stars

Elvis Costello / Deutsche Grammophon



ここではバカラックとのライブを聴いてみましょうか。 Elvis Costello feat Burt Bacharach - This House Is Empty Now 

          
 
 
 
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by knakano0311 | 2011-02-23 09:22 | 読むJAZZ | Trackback | Comments(0)
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