百花繚乱、数ある癒し系、あるいは「Jazzy,Not Jazz」系シンガーの中にあって、私のイチオシかもしれないシンガーは、「インガー・マリエ(・グンデルセン)/Inger Marie Gundersen」。オーガニック系の美女シンガーが多い中で、彼女達とは一線を画し、アンニュイで少しダーク、大人のムードを湛え、いぶし銀のように一際光っている。2004年のJAZZシーンに彗星のごとくデビューした時から、ずっと気になっている歌手である。1959年生まれというから、45歳のデビュー、相当な遅咲きである。今年になってリリースされた最新作を含めても、アルバムはまだ4枚という寡作なシンガーでもある。
デビュー作「Make This Moment 」(2004)、セカンド・アルバム「By Myself 」(2006)、第三作「My heart would have a reason 」(2009)、そして今年1月にリリースされた最新作が、「For You」。
三作目のライナーノーツにのっていた彼女の座右の銘は、「Less is more ・・・」。歌においても人生においても、「歌いすぎない」、「音を溢れすぎさせない」、「飾り過ぎない」・・・。音の空白や無音の瞬間を大事にする、そんな彼女の歌唱スタイルが成熟した女性を感じさせる。
「キャロル・キング/Carole King」の大ヒット曲「Will You Still Love Me Tomorrow」を始め、「Fool On The Hill/Nature Boy」などのポップスや、ジャズのスタンダードを中心にジャンルを越えて、多くの人々の心をつかんだデビュー・アルバムは、「Make This Moment」。
前作同様、「ジョージ・ハリソン/George Harrison」の名曲「Something」をはじめ、「スティング/Sting」、「ジョニー・ナッシュ/Johnny Nash」など多様なアーティストのヒット曲をカバーしている。さらに、「ロバータ・フラック/Roberta Flack」の「The first time ever I saw your face」も。相変わらずのアンニュイな雰囲気の中にも美しさと上品さが漂う。