(写真は明月姫の墓所)
新年早々墓の写真で申し訳ありませんが、おいしいという評判の能勢の「豆腐屋」で豆腐を買い求める途中、さしかかった明月峠で車を止め、「明月姫(めいげつひめ)」の墓所に詣でた。この地方を治める「能勢家包(のせいえかね)」に嫁いだ美貌の「明月姫」。その美貌ぶりを聞きつけた「平清盛」が側室にと望んたが、拒絶できずに姫は泣く泣く能勢を去り、福原へ向かう途中、夫への操を守り、この明月峠で懐剣でのどを突き、自害したという哀しい伝説が伝えられている。(拙ブログ参照
「続・櫻ロードにはまだまだ ・・・」) 墓には今でも時折、野の花が供えられているという。
お気に入りのミステリー作家、「ジェフリー・ディーヴァー/Jeffery Deaver」のシリーズで、「人間嘘発見器」と異名をとる尋問の天才、「キャサリン・ダンス/Kathryn Dance」が主人公として活躍する「ロードサイド・クロス/Roadside Crosses」 (文春文庫)。その中から前回に続いて、「柳の下のなんとやら ・・・」になるかどうか、主人公「キャサリン・ダンス」お気に入りの音楽の紹介をしましょうか。いままでのディーヴァーの小説で、こんなにも主人公お気に入りの音楽を紹介した作品はちょっと記憶に残っていない。
ロードサイド・クロス 下 (文春文庫)
ジェフリー ディーヴァー / 文藝春秋
まずは、こんな一節から紹介しましょうか。『霧が次第に濃くなるなか、北米のパーカッション・グループ、ラキー・アンド・ザ・ケーヴマンを聴きながら、カーメルとパシフィックグローヴの境に広がる公有地を貫く閑散とした道路を走る。・・・ 』(池田真紀子訳)
「ラキー・アンド・ザ・ケーヴマン/Raquy and the Cavemen」。これも全く聞いたことのないグループ。ちょっと調べてみると、女性のパーカッショニストの「ラキー・ダンジガー?/Raquy Danziger」と「ザ・ケーヴマン/The Cavemen」と称する男性とのパーカッション・デュオらしい。中東音楽とロックのフュージョンといっっていいカテゴリーで、ニューヨーク、ブルックリンを本拠に活動しているらしいが、心地よい響きと驚異的なドラム・パフォーマンスが人気を呼んでいるという。YOUTUBEにアップされていた動画とアルバムを紹介しておきましょう。確かに、いかにもキャサリンが好きそうなアーティストではある。
Jordan
Raquy & Cavemen / Meef
「Raquy and the Cavemen-"Nubian" Live in Culturefest in WV」
Bewitched
Raquy & the Cavemen / CD Baby
「Raquy and the Cavemen - "Maksum Madness" in Vancouver」
そして、お次のくだりは、これ。『南米のフォルクローレ・グループ、ウルバンバをバックバンドに従えたホルヘ・クンボの愁いを帯びたケーナの音色が耳を優しくくすぐっている。聴いていると、ささくれだった神経が落ち着いていく。・・・』
「ホルヘ・クンボ/Jorge Cumbo」。彼も初めて聞くアーティストである。ケーナとボーカルを得意とするという。 1942年、アルゼンチン、ラプラタで生まれ、ラプラタ芸術学校で音楽を勉強した後、シンガーとケーナ奏者として活動を始める。1973年にはアメリカ・ツアーの機会に恵まれ、その時「ポール・サイモン/Paul Simon」とレコーディングを行い、彼のワールド・ツアーに参加したという。1976年アルゼンチンに帰国、「クンボバンド」結成。1999年には日本ツアーを行ったという。
もう一方の「ウルバンバ/Urubamba」との接点は見出すことができませんでしたが、「ウルバンバ」は、アンデス音楽、フォルクローレ・グループの「ロス・インカス/Los Incas」が「サイモン&ガーファンクル/Simon & Garfunkel」とともに活動していた期間だけ名乗っていたバンド名のようです。「ポール・サイモン」が1960年代、旅先のパリのあるコンサート会場で、当時パリで活動していた「ロス・インカス」と知り合ったそうです。この時、ポールのツアーに同行していた「ホルヘ・クンボ」と知りあったのではないでしょうか。その際、ポールが「ロス・インカス」から貰った彼らの音源に、あの「コンドルは飛んでいく/El Condar Pasa」も入っていて、後に世界的ヒットとなったというエピソードも調べる途中で知りました。(Wikipedia参照)
結局、「ホルヘ・クンボ&ウルバンバ」のアルバムも動画も見つけ出せなかったのですが、「ホルヘ・クンボ」のアルバムとYOUTUBEにアップされていた動画を紹介しておきます。フォルクローレといえば、「アタウアルパ・ユパンキ/Atahualpa Yupanqui」一筋と高校生のときから思っていましたが、亡きユパンキの遺鉢を継ぐアーティストかもしれないと感じた。
Canas Y Guitarras
Jorge Cumbo / Espa Music
ニューヨークへの旅といった意味でしょうか、「Vieja york」。マチュ・ピチュやリマ、ペルーの大自然にホルヘのケーナと声が響き、NYの風景とオーバーラップする。
「Vieja york ― Jorge Cumbo」
「ロス・インカス」が「ウルバンバ」名義で1972年に発表したのアルバム、「ウルバンバの魂(Urubamba)」から、「EL CORAZON DEL INCA(インカの魂)」。「ウルバンバ」とは、あのマチュ・ピチュに源を発し、ウルバンバ渓谷を下って流れる川の名前だという。
Urubamba
Urubamba / Sony Bmg Europe
「URUBAMBA - EL CORAZON DEL INCA」
とまあここまで紹介した段階で、「キャサリン・ダンス」(ジェフリー・ディーヴァー?)の音楽的嗜好が民族音楽的なものにあるということが、次第にわかってくるのであるが、その理由についても、作品の中で明らかにされている。いや、ストーリーと音楽と二度楽しめた作品である。