1908年、アルゼンチン、ブエノス・アイレス州の田舎町生まれ。子供の頃家にあった一本のギターにとりこになった彼に、父親はギターを習わせてくれたという。しかし、父を早くに亡くした彼は独力で歩み始め、農夫、肉体労働者から新聞記者、学校の先生、時にはギタリスト、旅芸人といういろいろな仕事を経験した。そして、アルゼンチン全土をくまなく放浪した彼の体なかに、各地の人と暮らした生活に根ざすフォルクローレが、音楽地図として蓄えられていった。1929年、「インディオの小径/Caminito del indio」でデビューし、次第にギタリスト&歌手として頭角を現していくが、1950年代には、その活動が反政府的と目されて、フランスへの亡命を余儀なくされたこともある。私が彼を知ったのはその頃であろうか。「歩く大地」と呼ばれたユパンキ、1992年、84歳でこの世を去った。
代表作が「ツクマンの月/Luna tucumana」。「ツクマン」とは、アルゼンチンの地方都市、「サン・ミゲル・デ・ツクマン/San Miguel de Tucumán」のことである。
【 ツクマンの月 】 作詞・作曲 アクワルパ・ユパンキ
「♪ ・・・・・・・・・・・・・・・・
Perdido en las cerrazones お前が雲にすっぽり隠れてしまったら
quién sabe, vidita, por dónde andaré ? 私は道に迷ってしまう
Mas cuando salga la luna もし月が出たら
cantaré, cantaré, 私は歌うとしようか
a mi Tucumán querido, 愛するツクマンに届けと
cantaré, cantaré, cantaré. 私は歌う、私は歌う、私は歌うのだ
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En algo nos parecemos お前と私はどこか似ている
luna de la soledad, 一人ぽっちの孤独の月よ
yo voy andando y cantando 私は歌いながら人生を歩んでゆく
que es mi modo de alumbrar これが私の光りかたなのだ ♪」