人気ブログランキング | 話題のタグを見る

大屋地爵士のJAZZYな生活

虫愛でる爺は  ~遠い昔の記憶から~

虫愛でる爺は  ~遠い昔の記憶から~_b0102572_15352082.jpg

 遊びの山のワークショップ。前肢を失くしながらも、網戸にしっかりしがみついているのは、バッタ目キリギリス科の「ウマオイ(馬追)」。「ハヤシノウマオイ(林の馬追)」、「ハタケノウマオイ(畑の馬追)」と二種類あるようだが、いずれも、鳴き声が、馬子が馬を追う声のように聞こえることから名づけられたという。この「ウマオイ」、その命を終える時が来たようだ。

 子供の頃は、家の近くのどこでも見かけた虫。「ウマオイ」という名より、その鳴き声に由来して、「スィッチョ」という名で呼んでいた。けっこう肉食系の虫なので、虫かごにいれ、他の小昆虫を食べる様や、同じかごの中で、共食いする様を観察するという残酷な遊びも子供の頃はしていた。虫愛でる爺の遠い昔の記憶から ・・・。

虫愛でる爺は  ~遠い昔の記憶から~_b0102572_16294991.jpg

 さて、「スィッチョ」を見て、思い出したのは、「こおろぎのサンバ」。そして、晩秋の夜更けに聴きたくなるのは、男の哀歌、フォルクローレ。南アメリカの音楽を代表する音楽、フォルクローレの最高の巨匠と讃えられ、「歩く大地」と呼ばれたのは、「アタウアルパ・ユパンキ/Atahualpa Yupanqui」。

 牛車、月、こおろぎ、雨、種蒔き、子守唄、風、祈り、夜、光、雪、太陽・・・・・。生活の全てが歌の対象となるフォルクローレの世界。スペイン語など全くわからないのに、そんな世界を代表する「アタウアルパ・ユパンキ」のラテンの哀愁に心奪われたのは、自作のラジオ受信機で聴く音楽に目覚めた中学生の時であった。

 1908年、アルゼンチン、ブエノス・アイレス州の田舎町生まれ。子供の頃家にあった一本のギターにとりこになった彼に、父親はギターを習わせてくれたという。しかし、父を早くに亡くした彼は独力で歩み始め、農夫、肉体労働者から新聞記者、学校の先生、時にはギタリスト、旅芸人といういろいろな仕事を経験した。そして、アルゼンチン全土をくまなく放浪した彼の体なかに、各地の人と暮らした生活に根ざすフォルクローレが、音楽地図として蓄えられていった。1929年、「インディオの小径/Caminito del indio」でデビューし、次第にギタリスト&歌手として頭角を現していくが、1950年代には、その活動が反政府的と目されて、フランスへの亡命を余儀なくされたこともある。私が彼を知ったのはその頃であろうか。「歩く大地」と呼ばれたユパンキ、1992年、84歳でこの世を去った。

 たった一枚持っているベスト・アルバム。その中で歌われる歌の題名や歌詞を見ると、古き日本、日本の民謡に通づるような懐かしさを覚えてしまう。何枚もアルバムが出ているが、この一枚で十分にアルゼンチンの草原に吹きわたる風や、牛を追うインディオの姿が脳裏に鮮やかに浮かび、インディオの魂が聴こえてくる。

ベスト・ナウ

アクワルパ・ユパンキ / EMIミュージック・ジャパン



 「アタウアルパ・ユパンキ」、まずギター演奏で「こおろぎのサンバ/Zamba Del Grillo」から。

「Atahualpa Yupanqui - Zamba Del Grillo」

          

 代表作が「ツクマンの月/Luna tucumana」。「ツクマン」とは、アルゼンチンの地方都市、「サン・ミゲル・デ・ツクマン/San Miguel de Tucumán」のことである。

【 ツクマンの月 】   作詞・作曲 アクワルパ・ユパンキ

「♪ ・・・・・・・・・・・・・・・・

   Perdido en las cerrazones      お前が雲にすっぽり隠れてしまったら
   quién sabe, vidita, por dónde andaré ?  私は道に迷ってしまう
   Mas cuando salga la luna     もし月が出たら
   cantaré, cantaré,          私は歌うとしようか
   a mi Tucumán querido,      愛するツクマンに届けと
   cantaré, cantaré, cantaré.    私は歌う、私は歌う、私は歌うのだ

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

   En algo nos parecemos      お前と私はどこか似ている
   luna de la soledad,          一人ぽっちの孤独の月よ
   yo voy andando y cantando     私は歌いながら人生を歩んでゆく
   que es mi modo de alumbrar     これが私の光りかたなのだ   ♪」

「Atahualpa yupanqui ― Luna tucumana」

          

 これも、代表曲のひとつ、「私は光になりたい/Quiero Ser Luz」。若くして世を去った音楽家の遺作のサンバをユパンキが世に出したという。

「 ♪ 午後の半ばを過ぎると   私には死がやってくる
    私は影になりたくない   私は光になりたい
    そして、そのままとどまりたい  ・・・・・・・・ ♪」

           (「私は光になりたい」 ダニエル・レゲーラ作詞作曲 訳者不詳)


「Atahualpa Yupanqui ー quiero ser luz」


          
  


  
by knakano0311 | 2017-11-24 09:52 | サウダージ | Comments(0)
<< Black Friday  ~... 古い革ジャンパーを着て >>