『水羊羹を食べる時のミュージックは、ミリ―ヴァーノンの Spring Is Here が一番合うように思います。この人は、1950年代にたった一枚のレコードを残して、それ以来、生きているのか、死んでいるのか、まったく消息のわからない美人歌手ですが、冷たいような、甘いような、けだるいような、生ぬくいような歌は水羊羹にぴったりに思います。』 (向田邦子;「眠る盃」より)(再録)
そのアルバムは、「イントロデューシング/Introducing」。『水羊羹に合う』かどうかは別にしても、どの曲も、しっとりと、やや憂いを含んで、ムーディに、歌い上げている。「向田邦子」が、『水羊羹に一番あう』と評した「スプリング・イズ・ヒア/Spring Is Here(邦題;春が来たと云うけれど)」は、1938年、「リチャード・ロジャース/Richard Rodgers」、「ローレンツ・ハート/Lorenz Hart」のゴールデン・コンビの手になる、古い時代のミュージカルの曲。
【 Spring is here 】 by Richard Rodgers, Lorenz Hart
「♪ Sprinh is here 春が来たって
Why doesn't my heart go dancing でも、私の心が浮き浮きしないのはなぜ
Spring is here 春が来たって
Why isn't the waltz entrancing でも、ワルツを聴いても心が弾まないのはなぜ
No desire no ambition leads me 欲しいものもやりたいことも何もない
Maybe it's becaus nobody needs me 多分誰も私のことを必要としていないから
Spring is here 春が来たって
Why doesn't the breeze delight me でも、そよ風に私の心が浮き立たないのはなぜ
Stars appear 美しい星たちも
Why doesn't the night invite me でも、夜が私を誘わないのはなぜ
But maybe it's because nobody loves me 多分誰も私のことを愛していないから
Spring is here 春が来たって
Spring is here 春が来たって
Spring is here I hear 春が来たっていうけど ♪」