(写真は「植木等」氏愛用のギター;Gibson ES-175 NETより拝借)
「スーダラ節」や映画「無責任男シリーズ」で知られる「植木等」氏が亡くなった。享年80歳。音楽青年で大学卒業後、1957年に「ハナ肇とクレージー・キャッツ」に参加。60年代の前半、TVのバラエティ番組「シャボン玉ホリデー」で爆発的な人気を得、映画「日本無責任時代」の大ヒットで一躍人気者に。最近は渋い演技をみせる脇役としても、その存在感が際立っていた。
植木の「およびでない」、谷の「ガチョ~~~~ン」などのJAZZ的センスに基づく、クレージー・キャッツの乾いたギャグは、当時漫才や落語の伝統的な笑いに飽きていた我々にとって、TV的であり、革命的であった。昭和30年代、あの映画「三丁目の夕日」で描かれた時代のキャラクター、「高度成長の明るさ」を形づくったグループであったともいえる。音楽、歌、ギャグ、TV、映画とまさしくマルチ・タレントというか、メディア・ミックスというか、今の芸能界を先取りしたようなグループであったが、その中心人物のひとりが「植木等」であった。
私はまだ学生であったので、当時のサラリーマンとしての実感はないのだが、植木演ずる無責任男「平均(たいら・ひとし)」は、高度成長時代幕開けに必死になって働いていた「サラリーマン」にとっての「坂の上の雲」あるいは「見果てぬ夢」みたいなものであったのかもしれない。
「酒は一滴も飲めないのに、かつらをかぶってカメラの前に立つと、人格が変わったように破廉恥な酔っ払いを演じきった。無責任男がうけたのも、根がまじめだから。(はかま満緒氏)」
「コミックバンドだからこそ、音楽の基本部分がしっかりしていなければならない」と彼が言っていたことを、何かで読んだ記憶があるが、トロンボーンの名手「谷啓」(ダニー・ケイのパロディ)と並んで、ギター部門でJAZZ雑誌「スイング・ジャーナル」のベストテンに選出されるほどのJAZZギターのプレイヤーだった。何かのTV番組で「谷啓」といっしょにJAZZを演奏していたことが記憶にある。コミックバンドどころか、高い音楽性と技量をもつバンドであったことが、以下のCDからも窺える。
結成50周年 クレイジーキャッツ コンプリートシングルス HONDARA盤
クレイジー・キャッツ / / 東芝EMI
ISBN : B0006M195W
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結成50周年 クレイジーキャッツ コンプリートシングルス HARAHORO盤
クレイジー・キャッツ / / 東芝EMI
ISBN : B0006M1966
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この系譜は、「いかりや長介とドリフターズ」に受け継がれていった。いかりや長介氏もはや逝去してしまったが、洋酒メーカーのCMでベースをソロで弾く彼の姿も忘れられない。
合掌・・・・・・・・・