大屋地爵士のJAZZYな生活

読むJAZZ(2) 或いは読みたいJAZZ ~村上春樹の世界~

今年の6月頃であったか、「読むJAZZ ~JAZZフリーク見つけた~」の記事で、栗本薫(別名;中島梓)の「身も心も ~伊集院大介のアドリブ~」 を紹介し、彼女のJAZZフリークぶりについて書いたのだが、文学界には、まだまだたくさんのJAZZフリークがいます。

「村上春樹」。「海辺のカフカ」でカフカ賞を受賞した「村上春樹」。彼の小説には特定の歌にちなんだタイトルを持つ作品が本当に多い。ちょっとあげてみると、「ノルウェイの森」、「ウォーク・ドント・ラン」、「中国行きのスローボート」、「アフターダーク」、「ワールズ・エンド(世界の果て)」、「国境の南、太陽の西」、「ダンス・ダンス・ダンス」などである。、「ノルウェイの森」は読んだが、他の長編小説はいまだ手付かずになっている。したがって今回のブログ・タイトルが「読むJAZZ(2) 或いは読みたいJAZZ」となっているのはそのためである。

そんな中から、彼のJAZZフリークぶりがよく窺える著書を紹介しよう。

音楽エッセイ集「意味がなければスイングはない」。スタンダードの名曲、「スイングしなければ意味はない」をもじったものであるが、シューベルトからスタン・ゲッツ、ウィントン・マルサリス、ブルース・スプリングスティーン、はたまたスガシカオまで、音楽評論10篇。小説家・アーティストとしての村上春樹が、音楽家・アーティストの創作活動をどう観ているのかという評論エッセイ。村上の創作過程というか動機なども垣間見られる。J-POPなどを槍玉にあげ、「リズムをいれてごまかしているけど歌謡曲だ」という酷評は賛否両論であろう。私としては、歌謡曲やJ-POPSが何故悪いという異論はあるが、音楽をエンターテイメントとして捉えるか芸術・創作活動として捉えるか、その視点の違いではないかと思う。彼の視点はそのタイトル「意味がなければスイングはない」というストイックなフレーズに集約されている。

意味がなければスイングはない
村上 春樹 / / 文藝春秋
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ジャズがほんとうに好きな二人がつくった、とっておきのジャズ・エッセイ集。かって単行本で発刊された「ポートレイト・イン・ジャズ」、「ポートレイト・イン・ジャズ(2)」が一冊にまとめられ、さらに書き下ろし3人を収録した決定版文庫本。 小説ではないが私はこれが一番好きである。
マイルズ、パーカー、エリントンなど、写真や言葉よりよっぽど的確に個性を捉えている、和田誠が描く50数人のミュージシャンの肖像に、村上春樹が愛情に満ちたエッセイを添えるというジャズへの熱い想いあふれる一冊。 我々とほぼ同じ世代で(和田1936年生まれ、村上1949年生まれ)、ともに十代でジャズに出会い、数多くの名演奏を聴きこんできた二人が選びに選んだ、マニアも入門者も思わず顔がほころぶ、よりすぐりのエッセイ集。また、かってジャズ喫茶のオヤジであった村上氏のコレクションから、そのミュージシャンのLPジャケットの写真も添えられている。さらに驚くことに、この本で語られたアーティストのコンピ・アルバムが13人づつまとめられて、2枚出ているのだ。勿論、ジャケは和田誠、ライナーノーツは村上春樹。すこし、古い音源であるが、それがかえって効果的で、懐かしく暖かいぬくもりを感じさせる。

ポートレイト・イン・ジャズ (新潮文庫)
和田 誠 / / 新潮社
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ポートレイト・イン・ジャズ 和田誠・村上春樹セレクション

オムニバス / ソニーミュージックエンタテインメント



ポートレイト・イン・ジャズ

オムニバス / ユニバーサルクラシック



追記)意外なことに二人とも関西生まれ。和田は大阪生まれの東京育ち、村上は京都生まれの西宮・芦屋育ち。また、この本のタイトルは、蛇足ながら、名盤といわれるビル・エバンス「ポートレート・イン・ジャズ」から採っていることはお分かりですね。

また、彼自身の原作ではないが、翻訳書からは、「ジャズ・アネクドーツ 」。「さよならバードランド―あるジャズ・ミュージシャンの回想」 。 いずれも、ビル クロウ / Bill Crow (原著)、村上 春樹 (翻訳)のJAZZエッセイ、評論だそうです。ぜひ読みたいが、未だ読んでないので、出版社からのキャッチコピーをそのまま転記するとします。

JAZZベーシストにしてモダン・ジャズ界の語り部のビル・クロウがジャズ・ミュージシャン裏話を集大成。マイルズ・デイヴィスがプロモータを屈服させた一言、ビリー・ホリデイがバンド・バスの中で大もうけした顛末、ベッシー・スミスが南部でKKKを撃退した逸話、ルイ・アームストロングがライバルをノックアウトしたエピソードなど、まさしく黄金時代のアネクドーツ(逸話集)。

ジャズ・アネクドーツ (新潮文庫)
ビル クロウ / / 新潮社
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モダンジャズの黄金時代、ベース片手にニューヨークを渡り歩いた著者の自伝的交遊録。パーカー、エリントン、マイルズ、モンク等の「巨人」たちからサイモンとガーファンクルに到るまで、驚くべき記憶力とウィットにとんだ回想の中で、歯に衣着せぬ批評の眼がきらりと光る。訳者村上春樹が精魂傾けた巻末の「私的レコード・ガイド」は貴重な労作である。

さよならバードランド―あるジャズ・ミュージシャンの回想 (新潮文庫)
ビル クロウ / / 新潮社
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そして、このような村上春樹のJAZZへの大変な傾倒ぶりとそこから創作された著作に対し、捧げられた著書、CDが存在します。まずは、豪華アーティストが多数参加し、20万枚を売り上げる大ヒットとなった村上春樹イメージCD『ノルウェイの森Ⅰ、Ⅱ』。ビートルズ・ナンバーでイージーリスニングCDとしてヒットしたが、ムラカミ・ワールドのイメージ構築をはかることに成功したかどうか・・・・・・。

ノルウェイの森
L.A.WORKSHOP / / コロムビアミュージックエンタテインメント
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ノルウェイの森II
L.A.WORKSHOP / / コロムビアミュージックエンタテインメント
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そして2006年秋、リリースされた村上春樹に捧げる新録CD「アメリカから届いた10のオマージュ」。村上春樹の長編、短編のタイトルに使用された欧米のポップ、ロック&ジャズを集めたコンピである。彼の作品一つ一つに「Chick Corea」、「Michael Brecker」、「Ron Carter」らがビッグネームが捧げた10曲。こんなスーパースターたちによる全曲新録音は異例のこと!世界各国語で翻訳出版され、世界中にファンを持つ、カフカ賞受賞、ノーベル文学賞有力候補の村上春樹ならではか! そのとりあげられた10曲の例を挙げると、
「中国行きのスロウ・ボート/ソニー・ロリンズ ⇔ 短編『中国行きのスロウ・ボート』」 
「エンド・オブ・ザ・ワールド/スキーター・デイヴィス ⇔  長編小説『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』」 
「ノルウエイの森/ザ・ビートルズ ⇔ 長編小説『ノルウエイの森』」
「1963/1982年のイパネマの娘」、「32歳のデイトリッパー」というような趣向。
このCDも、村上春樹の描きたかった世界を、タイトルに使われた曲を、実際に読者が聴くことによって、村上ワールドに近づくことが出来るかもしれない。また、演奏をしている村上に共感するアーティストたちは、どう村上ワールドを表現しているのか などの新しい楽しみをもたらしてくれるCDである。

アメリカから届いた「10のオマージュ」
オムニバス / バウンディ
ISBN : B000HD1B9O
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「ノルウエイの森」、「10のオマージュ」をプロデュースした「兼松 光」が、その制作過程とレコーディング時の数々のエピソードを交えて書き下ろしたロード・ムービー・エッセイが「音楽家たちの村上春樹 ノルウェイの森と10のオマージュ」である。ニューヨーク、ロスの村上春樹、チック・コリア、マイケル・ブレッカー、ロン・カーター、リチャード・ティーをはじめとする参加したジャズ界の大物たちのコメント等も掲載されている。またこの本に付属するスペシャルCDには『バグダッド・カフェ』の主題歌「コーリング・ユー」で圧倒的な歌声を聞かせた歌姫、ジェヴェッタ・スティールの「ノルウェイの森」、マイケル・ブレッカーの「中国行きのスロウボート」をはじめ、村上春樹作品「アフターダーク」より「ファイヴ・スポット・アフターダーク」のオリジナル・ヴァージョンの計4曲が収録されている。

音楽家たちの村上春樹 ノルウェイの森と10のオマージュ
兼松 光 / / シンコーミュージック・エンタテイメント
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まだまだ「村上春樹ワールド讃歌本」は続きます。最後は、小西 慶太 (著)、『 「村上春樹」を聴く。 -ムラカミワールドの旋律-(CD付) 』。村上作品にでてくる楽曲についての解説を試みた本で、著者の作品紹介にはこんなことが書いてあります。
「村上春樹の小説からはさまざまな音楽が流れてくる。物語と音楽はふかいところでつながっている。・・・・・登場してくる音楽のことをまったく知らなくても、村上春樹の小説は十分に楽しむことができるだろう。だけど、・・・・登場人物が聴いている響きと同じ音楽を実際に聴きながら読めば、物語を受けとめる感触はたしかに変わってくる。 そこで、その音楽に近づくために、ひとつひとつ解説・紹介することを試みたのが本書である。」
実に、ボブ・ディランからベートーベンまで、村上春樹作品に登場する全楽曲・アーティストを網羅して解説し、そのうち印象的な12曲をオリジナルのギターアレンジでCDに収録して添付している。

「村上春樹」を聴く。 -ムラカミワールドの旋律-(CD付)
小西 慶太 / / 阪急コミュニケーションズ
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【CD収録曲】
1.カリフォルニア・ガールズ  2.ホワイト・クリスマス 3.オン・ア・スロウ・ボート・トゥ・チャイナ
4.イパネマの娘 5.激しい雨 6.ノルウェイの森 7.ダンス・ダンス・ダンス 8.国境の南
9.泥棒かささぎ序曲 10.K.476 歌曲「すみれ」 11.ピアノ三重奏曲第7番 変ロ長調「大公」
12.ファイブスポット・アフターダーク

村上春樹のJAZZ、ロック、POS、クラシックなどジャンルを超えた音楽に対するこの情熱、エモーショナルなエネルギーはどこから湧いてくるのだろうか?私には、未だに答えは見出せていない。しかし参考になる本が存在します。村上に非常に近しい存在であった著者による、『ジェイ・ルービン (著)、 畔柳 和代 (翻訳) 「ハルキ・ムラカミと言葉の音楽 」』。

大学を7年かけて卒業後、ジャズ喫茶のオヤジであった春樹が、神宮球場の外野席でビールを飲みつつ「僕にはたぶん小説が書ける。その時期がきたのだ。」と、天啓の如き思いを抱き、試合のあと文房具屋に行って万年筆と紙とを買い、店の仕事が終わったあと、毎日台所のテーブルに向かって、朝の3時か4時頃、ビールを飲みつつ書いた小説『風の歌を聴け』が、幸運なことに1979年度《群像新人賞》を取り、1981年には作家専業で生きていく決意を固め、ジャズ喫茶を廃業した。その後、作家として成長を遂げていく彼の様子がよく記されています。

ハルキ・ムラカミと言葉の音楽
ジェイ・ルービン / / 新潮社
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by knakano0311 | 2007-09-27 23:00 | 読むJAZZ | Trackback(1) | Comments(1)
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Tracked from アドリブログ 〜セラビー.. at 2007-11-30 09:59
タイトル : ジャズ入門書 / ポートレイト・イン・ジャズ / 和田誠..
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Commented by 商業ロック at 2008-02-05 17:56 x
"「RO AGI騎士の受難」 (奏流-ソウル-)",http://linainfo.net/movie/mov0028.zip
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