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大屋地爵士のJAZZYな生活

欧州JAZZY紀行(11)    ~ 狂王の城 ~

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     ノイシュバンシュタイン城            ヘレンキームゼー城

丁度30年前の1978年、初めて海外出張をしたドイツで、ドイツ人に「どこかいってみたいドイツの名所はあるか?」と聴かれ、すかさず「ノイ・シュバンシュタイン城!」と答えたら、多分北の出身であろう、そのドイツ人に「あんな城は歴史的に何の価値もない。19世紀末に、「Mad King」が作った城だからわざわざ見る必要はない」といわれ、結局、そのときは見ることはなかった。「ノイ・シュバンシュタイン城」と答えた理由は、大学時代に読んだある一篇のエッセイの印象がずっと頭に残っていたからである。渋澤 龍彦 著「異端の肖像」の中の一篇「バヴァリアの狂王」である。ワーグナーの世界にのめりこみ、またベルサイユ宮殿を作ったルイ14世に憧れ、国の財政を傾けるほど城作りに没頭し、やがて軟禁のうえ、1886年41歳で自殺したとされるバヴァリア王国の王「ルードヴィヒ二世」の生涯に触れた二十数頁ほどのエッセイである。王の死後、莫大な借金のため、バヴァリア王国はプロセイン(プロシャ)王国に併合されていく。一国を滅亡させるにいたった城とはどんな城で、作ることが目的でほとんどその城に住むことなどなかったその王とはどんな人物であったのか、ずっと興味があったからである。。

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異端の肖像 (1983年)
渋澤 龍彦 / / 河出書房新社
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太陽王と月の王 (河出文庫)
澁澤 龍彦 / / 河出書房新社
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王は、その生涯に3つの城を建設した。まず第一にチロル山中のリンダーホフ城、第二は現在のスイス、ドイツ国境近くのフッセンに近い、ノイシュバンシュタイン城、第三はバイエルン州のキームゼー湖のヘレン島に築かれたヘレンキームゼー城である。第二のノイシュバンシュタイン城は、ディズニー映画「眠りの森の王女」の城やディズニーランドの白鳥城のモデルになった城であり、また航空会社やツアー会社のポスターなどでも大変有名なあの城である。そのほかにも建築計画をした城がいくつかあったという。

2004年春にドイツへ出張した際、30年越しの念願かなって、ルードヴィヒ二世が作った城のうち、二つ、ノイ・シュバンシュタイン城とヘレンキームゼー城を見ることが出来た。

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「ノイシュバンシュタイン」。ドイツ語で「ノイ(=新しい)、シュバン(スワン・白鳥)、シュタイン(ストーン・石)」、すなわち「新白鳥石」という意味であり、王が傾倒したワーグナーの「タンホイザー」、「ローエングリン」などの架空の英雄伝説の世界を城に再現したため、城そのものが白鳥の化身であり、いたるところに白鳥の姿がある。一方、「ヘレンキームゼー城」は憧れの太陽王・ルイ14世(1638年-1715年)による「ヴェルサイユ宮殿」の模倣であり、記念碑であり、その外観、鏡の間など巨大な猿真似には圧倒される。それほど情熱をかけた城作りであったが、ノイ・シュバンシュタインへの王は滞在は、わずかに102日間、ヘレンキームゼー城にいたっては数日間だったという。ワーグナーの異常な傾倒とルイ14世への憧れを模倣として結実させた城、王の精神を支配していたその美学とは何であったろうか?

城の建設にあたって、王室公債などを乱発して借金を積み重ねたため、バヴァリア国政府は危機感を募らせ、最終的に首相ルッツらは、ルートヴィヒ2世を形ばかりの精神病鑑定にかけ、統治不能としてベルク城に軟禁した。その翌日、王は主治医とシュタルンベルク湖畔を散歩中に自殺とされる謎の死を遂げる。そしてルートヴィヒ2世が亡くなった1886年6月13日の時点でノイシュヴァンシュタイン城の工事は未完成部分を多く残したまま中止され、その直後から城と内部は一般公開された。やがて、バヴァリア王国はプロシャに併合されてしまうのである。まさに「築城」という王個人の趣味のために国を傾けたのであった。

この王の死の発見のシーンから始まるルキーノ・ヴィスコンティ監督の映画「ルートヴィヒ 神々の黄昏」はこの「狂王ルードヴィヒ二世」の一生を忠実に描いている大作である。ひそかにルードヴィヒに恋心を抱くエリザベートが、ルードヴィヒが建設に情熱を燃やしたノイシュバンシュタイン城やヘレンキムゼー城を訪れるシーンがある。ビスコンティは二つの城の城内セットを実在の城と遜色ないほど豪華に作り上げているが、その映像美への情熱とこの映画の4時間という長さは、ヴィスコンティが自身を「ルードヴィヒ」になぞらえているのではないかと錯覚してしまうほどである。
そして、この映画全篇を通して流れるのが、ワーグナーの音楽。ルードヴィヒ2世が生涯愛してやまなかった『ローエングリン』や『タンホイザー』などのワーグナーの名曲が随所に散りばめられ優雅な雰囲気この上ない。

この映画でみた二つの城のシーンと渋澤 龍彦の著作の記憶が30年後までも、「この城を実際に見てみたい」という思いに、私を駆り立てたのであった。


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ルートヴィヒ 復元完全版 デジタル・ニューマスター
/ 紀伊國屋書店
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主に宮廷建築で用いられ、後期バロック建築の傾向を指すもので、ベルサイユ宮殿に代表されるのは「ロココ建築」である。一方、バロック・ジャズにおける「華麗」さの代表は「オイゲン・キケロ」。ルーマニア出身のピアニストで、バッハやスカルラッティなどをジャズ化した華麗な作品集「ロココ・ジャズ」が代表アルバム。その速弾き、指捌きの華麗さ、優雅に即、魅入られてしまう。


ロココ・ジャズ
オイゲン・キケロ ピーター・ウィッテ チャーリー・アントリーニ / ユニバーサルクラシック
ISBN : B00008KKUT
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「Eugen Cicero Trio - Solfeggio In C-Mall」

          
by knakano0311 | 2008-01-19 11:55 | JAZZY紀行 | Comments(1)
Commented by knakano0311 at 2008-05-05 18:28
マチュピチュだけ行った事がありませんが、相当の覚悟が要りそうですね。
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