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大屋地爵士のJAZZYな生活

マーケッターとしてのシニア考(9)    ~ ヒット曲の定義 ~ 

少し古くて恐縮だが、朝日新聞の記事によると、音楽産業界で最も重要な指標である、「ベストセラー」、「ヒット曲」という定義がどうも揺らいできているらしい。昨年のヒット曲といえば「千の風になって」を思い浮かべる人が多いはず。事実シングルCDでは唯一のミリオンセラー。でも、もう一つのミリオンシングルがあったのをご存じですか。携帯電話向けに音楽配信された新人バンドGReeeeNの「愛唄(あいうた)」だそうだ。この歌を知っている団塊の世代、中高年層はほとんどいないといっていいだろう。事実、私もグループ名も曲名も今もってまったく知りません。

さらに、記事を引用すれば、この「愛唄」は04年に始まった音楽配信サービス「着うたフル」で初めて100万回のダウンロードを記録したそうだ。「着うたフル」というのは、曲の一部である「着うた」に対し、「フル」は一曲丸ごとの完全版である。「千の風」はオリコンのシングルCDチャートこそ年間1位だが、「着うたフル」では配信されていない。一方、「愛唄」はCDチャートでは、24位である。さらに、宇多田ヒカルの「Flavor Of Life」という曲は、CD2位、フル3位である。しかも、このCDは、昨年のゴールドディスク大賞で年間1位シングルに選ばれた。
こうなってくると大きな疑問が湧いてくる。「千の風になって」、「愛唄」、「Flavor Of Life」のうちで、どれが昨年最大のヒット曲なのか?

オリコンの社長小池氏は「もちろん千の風です」と答えは明快だ。「何故千の風か?」、小池氏の見解はこうである。「本当に好きなアーティストの音は手元に形として持っておきたいもの。シングルヒットはアルバム購入の道筋をつけ、ひいてはアーティストへの忠誠度を高める役目を果たしてきた。配信はまだ宣伝道具の域を出ていないのではないか・・・。」

だが、一方でこんなデータもある。日本レコード協会によると、昨年のCDシングル生産金額は前年比92%の469億円、一方で配信シングル(パソコン含む)は右肩上がりの383億円。1000円を超えるCDに対し、フルは1曲300~400円ほど。枚数にあたるダウンロード数ではすでに勝っており、金額も08年に逆転するかもしれない。シングル曲の流通手段として、配信がCDに肩を並べる存在になったといえる。

さらにこんな例はどう考えたらいいのだろうか? 昨年、洋楽で人気曲となったR&B歌手「ニーヨ」の「ビコーズ・オブ・ユー」は「着うたフル」で約20万ダウンロードされたにもかかわらず、シングルチャートに名前が出てこない。理由は、CDを出していないからだ。CDを出していない、配信だけの歌手が現実に存在するのだ。

携帯電話の技術革新により、音楽配信は急成長した。電車の中でも、i-Podのような音楽端末でなく携帯電話でダウンロードした配信音楽を聞いている若者が急速に増えたような気がする。洋楽のCD一枚2500~3000円であることを考えると、年金生活者である私自身も、そう頻繁に買う訳にも行かなくなってきたことも事実で、音楽サイトで試聴した上で、気に入った曲のみを買うというPCでの音楽購入(配信)も最近多くなってきている。この場合150~200円/曲なので、CD購入に比べ、かなり安上がりである。勿論、愛用のi-podにダウンロードも出来、CDへバックアップすることも出来ます。

このようにCD、配信など流通の多様化、多極化がさらに進めば、ヒット曲、ベストセラーの定義は曖昧となり、ぼやけてくるであろう。今後の配信とヒット曲の行方について、音楽ジャーナリストの津田大介氏は「“携帯で音楽を聴く”という行為がはやっているだけで、音楽文化を豊かにはしていない。 80年代まで所有するものだった音楽は、90年代以降、消費財の一面を強めていった。配信でそんな音楽の“聴き捨て文化”が加速している気がする。時代のヒットとはランキングといったデータではなく、むしろ音楽体験の記憶から語り継がれていくものではないか」 と危惧している。

さすれば、数百枚のCDを抱え、収納場所の問題から「i-pod」をメインのハードとして選択し、「所有する音楽」から離れられずにウロウロし、JAZZをBGMとしながら、自分の生活や過去の人生と照らし合わせている、この私のブログの存在意義も多少あるのかなあと意を強くする。

いわゆる時代を映す「ヒット曲集」から「R35」。「SAY YES」、「TRUE LOVE」など、90年代前半のトレンディ・ドラマを飾った美しいラヴ・バラード集。私より大分若い世代層を対象にしています。「バブル期の思い出のヒットアルバム」といってしまえば、みもふたもありませんが・・・・。最近、新聞の広告なんかに「もう一度妻を口説こうか」とかいうこのCDのコピーがでていますが、そういわれても私は戸惑うばかりですが・・・。

R35 Sweet J-Ballads

オムニバス / ワーナーミュージック・ジャパン



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【追記】

本5月21日(水)「Prisoner Of Love」をDVD付CDシングルとしてリリースした宇多田ヒカル。すでにドラマ『ラスト・フレンズ』主題歌としてアルバム収録曲ながらデジタル配信でも爆発的にヒットを続けてきたこの曲が早くも累計150万ダウンロードを突破したことが明らかになった
by knakano0311 | 2008-04-29 23:44 | マーケッターとしてのシニアから | Comments(0)
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