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読むJAZZ(6) ~ ジャズ・ピアニストのハードボイルド ~
寡作であるが良質のハードボイルドを書く作家がいる。「原尞(はら りょう)」。1988年デビュー作の「そして夜は甦る」から2004年最新作「愚か者死すべし」まで、1冊の短編集を除くと、約20年間で長編4作という寡作ぶり。かって彼はフリー・ジャズのプロのピアニストであったことは彼のファンなれば誰でも知っていることであろう。

昭和21年(1946)12月佐賀県鳥栖市生まれ、61歳。九州大学文学部を卒業し上京、レコード会社に就職するも2ヶ月で辞める。学生時代に独学で学んだJAZZピアノへの情熱が再燃してプロのJAZZピアニストに。その傍ら映画やTVドラマの脚本家を目指すが、映像化はされなかった。「それならば小説を書いて映画化を」と小説家を志す。40歳のころ母親の看病のため帰郷し、その後故郷鳥栖市に定住し、42歳で遅まきの小説家デビューを果たす。2作目「私が殺した少女」は直木賞を受賞した。現在執筆の合間には、鳥栖でお兄さんが経営するJAZZ喫茶で今もピアノを弾いているとのことである。

以上の彼の経歴は、文庫本の経歴紹介や「私が殺した少女」巻末の「あとがきに代えて ある男の身許調査」で知ることが出来る。


昭和21年生まれだから私と同じ年の生まれである。小説では殆ど語られていないJAZZへの思いを能弁に吐露した彼の自伝的エッセイ「ミステリオーソ」を読むと、音楽、ミステリー、映画に没頭した彼の等身大の青春は、私の青春にもダブって見えてくる。「バド・パウエル」、「セロニアス・モンク」、「マイルズ・デイヴィス」、「ジョン・コルトレーン」、「ケニー・バレル」など往年のJAZZプレイヤーたち、「太陽がいっぱい」、「用心棒」、「死刑台のエレベーター」、「サムライ」、「七人の侍」、「カサブランカ」、「ジャン・ギャバン」、「ハンフリー・ボガード」、などの名画・名優たち、「山本周五郎」、「ジョルジュ・シムノン」「レイモンド・チャンドラー」、「セバスチャン・ジャプリゾ」など手ダレの物書きたち・・・・。まさに私の青春そのものといえるキーワード。こんなキーワードが満載の本書を読み終わった後は、CDやDVDでもう一度あの青春を確認したくなった。 

ミステリオーソ (ハヤカワ文庫JA)
原 〓@4AD4@ / / 早川書房
ISBN : 4150307938
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「レイモンド・チャンドラー」に心酔している原氏は自著のシリーズ4作で見事に探偵「沢崎」を造形した。やや乾いた文体と沢崎から発せられる皮肉の利いたせりふ。沢崎の人物像や周辺、彼の生い立ちなどについては、ほとんど語られてはいないが、むしろ映画的ともいえるシーンの描写や沢崎のせりふから、かえって沢崎の人物像、キャラクターの陰影が浮き出てくると思える。
極めて映画的と思える情景描写と沢崎のキャラによって、日本のハードボイルド界に独自のポジションを築いたシリーズからファルコン賞、直木賞を受賞した「私が殺した少女」。

私が殺した少女 (ハヤカワ文庫JA)
原 りょう / / 早川書房
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「さらば愛しき女よ」、「長いお別れ」、「大いなる眠り」というチャンドラーの代表作を併せて第三作「さらば長き眠り」のタイトルにしたことに、彼のチャンドラーへの心酔、傾倒ぶりは窺える。
また、シリーズ作品中には、JAZZが絡む背景や小道具、せりふなどはあまり出てこないのだが、自身をモデルにしたと思われるレコード会社社員崩れの作中人物江原に言わす次の言葉に、JAZZへの思いもわずかに窺える。「鍵盤の右から左まで両手の指をただ転がしているだけじゃ、いったいどれがあんたの聴かせたい“歌”なのかわからんよ。もっと音を少なくして弾けないものかね。」

さらば長き眠り (ハヤカワ文庫JA)
原 りょう / / 早川書房
ISBN : 4150306540
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「鳥類学者のファンタジア」の主人公、ビ・バッパー「フォギー」もそうであったが、原氏の敬愛するJAZZピアニストは「バド・パウエル」である。モダン・ジャズの語法をピアノで表現した天才、ビ・バップの創始者の一人にして、バップ・ピアノの最高峰と称される「バド・パウエル」。
なぜか日本でのみ人気の高かったといわれる、代表作「クレオパトラの夢」が収録されている「ザ・シーン・チェンジズ」がベストか。聴けば、やはり青春時代のあの時と同じように「クレオパトラの夢」に魅かれ、心浮き立つ自分がいる。


ザ・シーン・チェンジズ+1
バド・パウエル / / EMIミュージック・ジャパン
ISBN : B000XAMEVA
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by knakano0311 | 2008-05-22 15:53 | 読むJAZZ | Trackback | Comments(0)
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