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大屋地爵士のJAZZYな生活

昭和へのオマージュ ~続・シネマへの郷愁~

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(よく行くミニシアターがある大阪梅田スカイビル地下の昭和レトロスポット;滝見小路)



前回「シネマへの郷愁」で、シネマ・コンプレックス(複数のスクリーンを持つ映画館)によるシネマの復権は喜ばしいと書いたが、必ずしも手放しでは喜べない情況のようである。統計によるとシネコンの誕生以来、映画館は増え続けており、2007年での全国のスクリーン数は、前年より159スクリーン増え、過去最多の3,221スクリーンになったそうだ。ここまではいいのだが、気がかりな点もいくつかある。一方入場者数は減少傾向で、前年比約139万人減の約1億6319人に留まっているという。また、シネコン建設によって、スクリーンは増えるが、それによって多様な映画が観られるとは限らない。シネコンで上映される映画は採算性が最も重視されるため、宣伝に金をかけた話題作やハリウッド大作などに偏りがちで、しかも客の入りが悪ければ、短期間で上映が打ち切られる。国際文化交流推進協議会(東京都)の調べによると、ある県で公開された映画作品数はその年に公開された映画数の3割にも満たなかったという。つまり、7割は見たくても見られないのだ。その傾向は大都市以外では特に顕著であろう。昨年の我がベスト10(「我がシネマな一年 ~今年私が観てよかったと思う映画~」参照)でも、半分はシネコン以外の単館系ミニシアターで観た映画であった。シネコンで上映される映画が名画とは限らないのである。邦画、ハリウッド映画にかぎらず、多様、多彩な映画が観られる環境が整って欲しいが、採算を考えると都会以外の映画館では難しく、音楽と同様、「DVD」や「映画配信」などによってしか達成されないのではないかと思う。そうなると、映画館での、あのドキドキ感は間違いなく犠牲になってしまうが・・・・。

さて、私のふるさと「松本」はかって「映画の街」と呼ばれたらしい。高校時代人口は10万そこそこの街であったが、映画館は6館あり、その中の1館は当時の地方都市では珍しい洋画専門館であった。この洋画館が私の映画熱に火をつけた。また、当時人気絶頂の吉永小百合主演の「青い山脈」のロケーションが我が母校周辺であり、見に行ったことも懐かしい思い出。母校の卒業生に映画監督も多く、旧制中学卒業では「小林悟」、「熊井啓」、新制高校になってからは、「小沢茂弘」、「三村晴彦」、「降旗康男」などが名を連ねる。また、「山崎貴」も実家付近松本出身の気鋭の若手監督である。

その山崎貴監督の「ALWAYS 三丁目の夕日」以降、「バブルへGO! タイムマシンはドラム式!」、「フラガール」、「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」、「地下鉄(メトロ)に乗って」など、昭和への回帰あるいはオマージュがテーマの作品がつづいている。明日への希望がまったく持てない今の日本の現実にあって、「明日はもっとよくなる」と希望を持ちえたあの昭和の時代への郷愁がこれらの映画への共感を呼ぶのであろうか。

ALWAYS 三丁目の夕日 通常版
吉岡秀隆 / / バップ
ISBN : B000EPE77S
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音楽でも昭和への郷愁、回帰が話題となっている。「深夜放送」。これは我々団塊世代には受験勉強と表裏一体となった「昭和の思い出・体験」のひとつである。受験勉強の傍らラジオから流れてくる音楽にどれほど心を奪われたことだろうか。最近、大人気の五木寛之氏のNHKラジオ番組「ラジオ深夜便」で語られた五木氏の人生と昭和歌謡曲史をめぐるトークと歌に加筆した初めての自伝本とCDが最近相次いで発刊された。

敗戦下の昭和20年。母を失い、弟妹を背負い、着の身着のまま朝鮮から日本に引き揚げてきた14才の五木少年。希望のない少年の日々。軍用毛布一枚で上京し、早稲田大学に合格するも、授業料を滞納し、売血で食いつなぐ赤貧の日々。石原慎太郎・裕次郎兄弟を豊かさの象徴として割り切れない思いで見ながらも、五木はストリップ評論や、業界紙などマスコミ底辺の仕事を得てゆくようになり、やがてレコード会社専属の作詞家へとのしあがっていく。「さらばモスクワ愚連隊」、「艶歌」、「海峡物語」、「狼たちの伝説」など歌や音楽を物語の背景にもつ小説も多い五木寛之氏が、懐かしい流行歌を語り尽くした完全版自分史である。 

わが人生の歌がたり―昭和の哀歓
五木 寛之 / / 角川書店
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わが人生の歌がたり昭和の青春
五木 寛之 / / 角川書店
ISBN : 4048839942
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このCDはその単行本で紹介されている五木氏の思い出に強く残っている昭和の歌を集めたものです。あまり懐古趣味に浸るのは好きではないがこのCDに収められた曲たちは、昭和の歌謡曲スタンダードと呼んでいいように思う。

別れのブルース / 青江三奈、からたちの花 / 倍賞千恵子、小雨の丘/ 高峰三枝子、影を慕いて/五木ひろし、蘇州夜曲/ 山口淑子(李香蘭) 、誰か故郷を想わざる/ 冠二郎、サーカスの歌/舟木一夫 など19曲を収録した第一巻。

五木寛之・監修・選曲・ナレーション わが人生の歌がたり 第1巻
オムニバス / / Columbia Music Entertainment,inc.( C)(M)
ISBN : B0013E13DK
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哀愁列車/ 三橋美智也、喜びも悲しみも幾年月/ 若山彰 、西銀座駅前/ フランク永井、南国土佐を後にして/ ペギー葉山、東京ナイトクラブ / フランク永井と松尾和子、黒い花びら / 水原弘、誰よりも君を愛す/ 松尾和子、和田弘とマヒナ・スターズ、アカシアの雨がやむとき / 西田佐知子、硝子のジョニー / アイ・ジョージ など18曲を収録した第二巻。

五木寛之・監修・選曲・ナレーション わが人生の歌がたり 第2巻
オムニバス / / Columbia Music Entertainment,inc.( C)(M)
ISBN : B0013E13DU
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「歌は世につれ、世は歌につれ・・・」
by knakano0311 | 2008-05-17 18:49 | シネマな生活 | Comments(0)
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