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大屋地爵士のJAZZYな生活

60歳過ぎたら聴きたい歌(17)  ~ The Dock Of The Bay ~

いやな恐ろしい事件が続いている。世界第2位の経済大国といわれるこの国で、どうしてこんなに若者や年寄りに希望が持てず、閉塞感や絶望感だけが、つのっていくのか? バブル後、経済自立国家を再建できず、実際はUSAスタンダードであるにもかかわらず、グローバルスタンダード化というアメリカの掛け声に、無批判に呼応してアメリカ化をすすめ、食料を始めとして戦略的自立の道を捨て、結局、オイル、食料、エネルギーなどで国の根幹の部分で投機的資本主義の脅威に今さらされようとしている。
中国、東南アジアの労働コストへの対抗や、景気の動向によって、レイオフ・雇用調整が簡単に出来るアメリカをうらやみ、規制緩和した派遣労働制度。瞬く間に非正規雇用が若者の常態となり、年収200万以下の労働者が1/3を超え、その結果、所得税収減、消費・購買力の低下、益々の少子化、高齢化、行政サービス低下という悪循環へと進んでいる現実。金だけを基準にした「勝ち組、負け組」という、こんな醜悪な日本語があったのかとも思える言葉で、あたかもすべてを自己責任の結果のように、2極2分化を推進してはばからない一部の経営者達。そしてこんな国づくりを許してしまった我々団塊の世代。「やがては廻る因果の何とやら・・」で、やがて不景気から、回復不可能な構造的経済小国へつきすすんでいくという恐ろしい予感。

と、まあ、久し振りに愚痴ってみましたが、そんな今の閉塞日本であえぐ若者を象徴するかのような暗い孤独感に満ちた歌がある。その歌は「(Sittin' On The Dock Of The Bay」。

この歌が流行ったのは、1968年、大学4年生の年であった。モータウン・サウンズとよばれるデトロイトから拡がったソウルミュージックがJAZZ以外の黒人音楽として市民権を獲得した時期でもあった。(このへんのいきさつは映画「Dream Girls」によく描かれている。) 歌ったのは、ジョージア州出身で、激情を込めた独特の歌唱法で、ソウル音楽に多大な影響を及ぼした歌手、「オーティス・レディング/Otis Redding」。
1967年12月10日、オーティス、スタッフらの乗った自家用飛行機が墜落し、帰らぬ人となった。享年26歳。そして、彼の死の3日前に録音された『ドック・オブ・ザ・ベイ』は、ビルボード誌で、1968年3月16日に週間ランキング第1位を獲得し、オーティスにとって唯一のビルボード誌週間ランキング第1位の曲となった。

おりしも、米国はベトナム戦争真っ最中。1967年には最大で50万人を超えるアメリカ兵がベトナムに投入されたが、アメリカ軍にとって戦況の好転は全く見られなかった。その上にアメリカ政府は、莫大な戦費調達と戦場における士気の低下、国内外の組織的・非組織的な反戦運動と、テレビや新聞、雑誌などの各種メディアによる反戦的な報道に苦しむことになった時期。1967年4月にはニューヨークで大規模な反戦デモ行進があり、10月21日に首都ワシントンで最大規模の反戦大会が催された。さらに翌年1968年1月にはテト攻勢によって反戦運動は大きく盛り上がった。若者達が徴兵され、ベトナム戦地に送られ次々と命を失っていた時代であった。その後、アメリカの若者を既存体制・文化から反発させる風潮が次々に作られた。ベトナム反戦運動はこれら若者の心を捉え、ヒッピーやフラワー・チルドレンなどと共にブームとして一層盛り上っていくこととなる。(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』参照)
そんなアメリカの社会状況を背景に、この歌はヒットした。

ヒットした当時は、私は、哀愁を帯びたスローなテンポの曲にそれまでのR&Bとは違和感を感じながらも、特に歌の意味も考えないまま流して聴いていたと思う。最近、妻が毎日のように聴いている「いもたこなんきんアルバム」、「小野リサ/Soul & Bossa」の中に入っていたので、あらためて歌詞を読んでみた。そこには、サンフランシスコ湾の明るい日差しと対照的に、そこにたたずむ若者の心の闇を歌う世界が拡がっていた。


妻はもちろん「いもたこアルバム」、「小野リサ/Soul&Bossa」がお気に入り。

Soul&Bossa

小野リサ / avex io(ADI)(M)



私はオリジナルのオーティス・レディングのアルバム、「リスペクト ~ヴェリー・ベスト・オブ・オーティス・レディング」。1967年不慮の飛行機事故で他界するまで、実質6年の間に後世まで「King Of Soul」として数多くの名唱を残した、ソウル/R&B界のKING、「オーティス・レディング」が残した数々の名唱から選りすぐったベスト・アルバム。

リスペクト ~ヴェリー・ベスト・オブ・オーティス・レディング
オーティス・レディング / / イーストウエスト・ジャパン
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「(Sittin' On) The Dock Of The Bay」  Steve Cropper作詞 Otis Redding作曲

「♪ 朝日を浴びながら埠頭に座っている
    このまま日暮れまでずっと座っているだろう
     船が港に入り、そして出て行く
      それを繰り返し眺めながら
        埠頭に座ってあてもなくときを過ごす
   
    故郷のジョージアを後にして、サンフランシスコを目指した
     だけど生きがいや進みたい道なんか見つからなかった
      入り江の埠頭に座って潮の満ち引きを眺めてすごし
       埠頭に座ってあてもなく時を過ごす

    何も変わらないし、すべては同じまま
     人がくれたいろいろなアドバイスなんて、私にはきっとできっこない
      だから私は何も変わらないままだろう

    埠頭に座ってゆっくりと休息をとって
     この孤独が私から去ってくれるように願っているだけ
      二千マイルもの流浪の果てのこの地を我が家にしたかった
    
    入り江の埠頭に座って潮の満ち引きを眺めてすごし
      埠頭に座ってあてもなく時を過ごす                  ♪」

   
年を重ねた今だからこそ、深く心に響く歌がある・・・・。

「Otis Redding - Sitting on the dock of the bay」

          
by knakano0311 | 2008-06-26 17:02 | 60歳過ぎたら聴きたい歌 | Comments(0)
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