人気ブログランキング | 話題のタグを見る

大屋地爵士のJAZZYな生活

広目天のまなざし  ~ 国宝 法隆寺金堂展 ~

広目天のまなざし  ~ 国宝 法隆寺金堂展 ~_b0102572_17203274.jpg(写真は法隆寺/広目天、国立博物館HPより)


国宝法隆寺金堂展が、奈良国立博物館でいよいよ始まりました。現存する世界最古の木造建築として知られている法隆寺金堂(こんどう)は、世界遺産にも登録され、その堂内に安置された諸尊像は、飛鳥時代を代表する遺産であり、日本の仏教文化の精華ともいうべき宝物です。

金堂の須弥壇(しゅみだん)が修理にあわせ、金堂内の諸尊像を広く一般に公開されることになった。なかでも須弥壇四隅に安置されて本尊守護の役割をになう木造四天王立像(国宝)が、四体そろって寺外で公開されるのは初めてのことです。また1949年の火災で金堂壁画が焼損したが、一部残った飛天図と、1960年代、安田靫彦、前田青邨、橋本明治、吉岡堅二、平山郁夫ら日本画の巨匠たちによって再現模写された壁画十二面が展示されている。

館内を観ながら、若い頃、「法隆寺は聖徳太子鎮魂の寺だ」という梅原猛氏の「隠された十字架-法隆寺論-」や、邪馬台国論から始まり、「倭国と日本国は別であり、「日出ずる国の天子より日没する国の・・・」という国書は聖徳太子にあらず」と九州王朝説を説く古田武彦氏に夢中になった日々が、ふと思い浮かんだりもした。

釈迦三尊像、百済観音像、玉虫厨子などは観たことがあったが、四天王像は初めてである。『日本書紀』にも記載のある作者、山口大口費(やまぐちのおおぐちのあたい)らによって造られたクスノキ材を用いた彫刻で、古代東アジア美術の様々な要素が凝縮した見事な彫像です。
意外と小振りで、イメージとしてはこれまた国宝でよく知られている東大寺戒壇堂の四天王の持つ荒々しさとはまったく違った印象で、中国風の顔立ちや朝鮮風の衣装に「凛とした静謐さ」を感じました。特に広目天やや愁いを帯びたような表情は中でも印象的でした。

広目天のまなざし  ~ 国宝 法隆寺金堂展 ~_b0102572_17513251.jpg
(写真は東大寺戒壇院の国宝広目天像)

仏教を護る護法神が、いわゆる天部で、中でも四天王は須弥山 (しゅみせん) の中腹に住して、頂上にある帝釈天 (たいしゃくてん) の喜見城を守る天部の四人の天王、すなわち仏国土の四方を守護する鎮護国家の武将たちで、東方を護るのが持国天、南方が増長天、西方は広目天、北方は多聞天 (毘沙門天)とされている。四天王はすべて甲冑で身を固め、岩の上に立つか、もしくは邪鬼を踏んで立ち、それぞれに剣や鉾、槍などの武器を持っている。ところが、西方守護の広目天だけは、武器は持たず、右手に筆、左手に巻物 (巻子) を持っている。智恵や技術が国を守るという現代にも活きる教えか・・・。

国立博物館を後にしてから、やはり東大寺・戒壇院戒壇堂の国宝四天王立像を観たくなり、そちらまで足を延ばすことに・・・。青々とした若草山を背景に、聳え立つ大仏殿の甍、広々とした境内、古い土塀の続く路地と馬酔木の香り・・・・。いつ来ても、伸びやかな気分にこの奈良はさせてくれる。

戒壇院の四天王立像。こちらは塑像。訪れる観光客もいなかった薄暗い堂内で、遙かなる未来の彼方を凝視するかのように、広目天は目を細め、厳しく眉を寄せて、静かに佇んでいた。



そして帰り道は、「ジョアン・ジルベルト/Amoroso(イマージュの部屋)」の上質で哀愁の漂う歌声のボサノバと、妻が立ち寄った喫茶店で、嬉々として求めた万華鏡(カレイド・スコープ)の、華麗で爽やかな鏡の創るイマージュが、蒸し暑い梅雨の気候を吹き飛ばしてくれた。

AMOROSO (イマージュの部屋)
ジョアン・ジルベルト / / ダブリューイーエー・ジャパン
ISBN : B0000563YQ
スコア選択:


「ジョアン・ジルベルト - エスターテ(夏のうた)」 AMOROSO (イマージュの部屋)より 

          
by knakano0311 | 2008-06-18 17:49 | 我が家の歳時記 | Comments(0)
<< JAZZ的トリビア(4) ~再... 我がミューズたちの新作 >>