冒頭の甘美このうえない曲は、「El Pueblo Unido Jamas Sera Vencido」。この曲はチリの圧政に対して抵抗したレジスタンスのリーダー「Sergio Ortega」によって1973年に書かれた歌。「The United People Will Never Be Defeated/団結した民衆は決して負けない」という英訳タイトルであることが記されている。もともとアメリカの黒人にルーツを持ち、抑圧と差別の歴史の中で市民権を得ていったJAZZを、ミラバッシは、あらためて近代世界史のなかで抑圧や暴力に対する抵抗・解放の普遍的なメッセージとして位置づけているように思えるのだ。その意図は、ダコタ・アパートの前で逝った「ジョン・レノン」の「Imagine」を取り上げていることでも読み取れる。
そしてラストの曲は「ポーリュシュカ・ポーレ」。ノンポリ学生であった私であるが、当時の学生運動に参加した友人やデモに参加した思い出が、かすかな傷みとともに甦る。
ベースの「Daniele Mencarelli」、ドラムの「Louis Moutin」をくわえてのピアノ・トリオのライブ・アルバム。いずれもオリジナルな曲であるが、ラストの曲は、やはりあの甘美極まりない「El Pueblo Unido Jamas Sera Vencido」。トリオになってもその情感豊かなピアノは変わらないミラバッシの屈指のピアノ・トリオ・ライブ。