大屋地爵士のJAZZYな生活

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蘇州刺繍展をみて  ~その指先はまさに神業~

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蒋雪英大师刺绣技能工作室HPより




昨日は妻のリクエストにより、ドライブがてらの「中国 蘇州刺繍展」見学。蘇州は、汕頭(スワトウ)などとならんで、昔から刺繍の有名なところで、国立の刺繍工芸専門学校があるという。
かって、仕事の関係でお付き合いのあった上海の中国企業の社長さんが、この中国刺繍の大変なコレクターであった。商談のあと、部屋の奥から何枚ものコレクションを取り出してきて、熱心に説明してくれたことを思い出す。当時は、興味を持つような余裕もなかったので、とくに大きな関心を持つことはなかったが、その刺繍の技巧の凄さ、高度さだけは強く印象に残っていた。現在も月1回程度、北京への出張があるが、北京空港のパスポート・コントロールからバゲッジ・クレイムへ降りていくエスカレータに面する壁のところにある中国名所を描いた巨大な刺繍図を眼にするたびにその社長さんことを思い出す。

「蒋雪英」女史。「中国工藝美術大師」、日本で言えば、「人間国宝」。 1975年に蘇州刺繍の技術を、日本の伝統呉服に初めて活用し、現在に至っている。これについては、かの作家「司馬遼太郎」も「呉服と蘇州の刺繍」という一文を寄せています。
「蒋雪英」女史は、1933年生まれの中国工藝美術大師で、中国刺繍界における最高技術者であり、中国で刺繍に携わる技術者約10000人の長として、技術指導を行い、現在も活躍しています。彼女は、度々来日し各地で展示会を開いていますが、今回も兵庫県で、作品展示会とお弟子さんによる刺繍の実演があり、クラフトや手工芸に関心がある妻のリクエストとなったわけです。

「蘇州刺繍」は現在でも、一人前と呼ばれるまでに、20年とも30年かかるともいわれている大変高度な刺繍技術です。特に最高峰の技術者になりますと、普通の刺繍糸を手でもみほぐし、最初に1/3に割り、1/6.1/12.1/24を更に割り1/48までに細くして刺繍していく技術を持っているそうです。超精密繊細な刺繍画になると、さらに1/64まで細くする事もあり、大人の髪の毛の1/10~1/15位の太さの、目にも見えないような糸を針に通し、何回も何回も縫い重ねることによって、色の濃淡、立体感が表現出来るのだそうです。図柄によっては、完成までに何年もかかるものもあるそうです。実際の刺繍作業を見ましたが、風景画の場合、小さな写真一枚から刺繍画を完成させます。特に設計図みたいな物がないことにもびっくりしました。高度な刺繍技術もさることながら、絵のデザイン・構想力、根気、集中力の持続など、どれをとっても気の遠くなるような話で、伝統工芸の持っている「技」の凄さが見ただけでつたわってきました。

洋の東西、日本・中国を問わず、何百年、千年という時の流れを潜りぬけてきた伝統工芸のもつ「凄み」や「重み」をあらためて感じた一日でした。

二胡、古箏、琵琶、竹笛、楊琴といった中国伝統楽器をあやつる十二人(現在は十三人)の若い女性たちのグループ「女子十二楽坊」。熱烈なファンがいる一方、あまり評価をしない人もいる。私もコンサートを聴いた事があるが、テクニックは凄いし、中国音楽は評価できるが、西洋音楽、日本音楽のカバー曲はいまいちであった。しかし、あの「Asian Beauties」の演奏を観ているだけ満足満足。

女子十二楽坊~Beautiful Energy~
女子十二楽坊 / / ミューチャー・コミュニケーションズ
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ちょっと前に読んだ本、野村進著 「千年、働いてきました -老舗企業大国ニッポン」。
携帯電話という最も進んだ新しい製品を支えているのは、創業百年以上の老舗企業の技術である。昨今の「会社は株主のもの」とかいう、まやかしのグローバル・スタンダードに真っ向から水をかける痛快な一冊。

千年、働いてきました―老舗企業大国ニッポン (角川oneテーマ21)

野村 進 / 角川書店


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by knakano0311 | 2007-09-28 17:40 | いもたこなんきん | Trackback | Comments(0)

読むJAZZ(2) 或いは読みたいJAZZ ~村上春樹の世界~

今年の6月頃であったか、「読むJAZZ ~JAZZフリーク見つけた~」の記事で、栗本薫(別名;中島梓)の「身も心も ~伊集院大介のアドリブ~」 を紹介し、彼女のJAZZフリークぶりについて書いたのだが、文学界には、まだまだたくさんのJAZZフリークがいます。

「村上春樹」。「海辺のカフカ」でカフカ賞を受賞した「村上春樹」。彼の小説には特定の歌にちなんだタイトルを持つ作品が本当に多い。ちょっとあげてみると、「ノルウェイの森」、「ウォーク・ドント・ラン」、「中国行きのスローボート」、「アフターダーク」、「ワールズ・エンド(世界の果て)」、「国境の南、太陽の西」、「ダンス・ダンス・ダンス」などである。、「ノルウェイの森」は読んだが、他の長編小説はいまだ手付かずになっている。したがって今回のブログ・タイトルが「読むJAZZ(2) 或いは読みたいJAZZ」となっているのはそのためである。

そんな中から、彼のJAZZフリークぶりがよく窺える著書を紹介しよう。

音楽エッセイ集「意味がなければスイングはない」。スタンダードの名曲、「スイングしなければ意味はない」をもじったものであるが、シューベルトからスタン・ゲッツ、ウィントン・マルサリス、ブルース・スプリングスティーン、はたまたスガシカオまで、音楽評論10篇。小説家・アーティストとしての村上春樹が、音楽家・アーティストの創作活動をどう観ているのかという評論エッセイ。村上の創作過程というか動機なども垣間見られる。J-POPなどを槍玉にあげ、「リズムをいれてごまかしているけど歌謡曲だ」という酷評は賛否両論であろう。私としては、歌謡曲やJ-POPSが何故悪いという異論はあるが、音楽をエンターテイメントとして捉えるか芸術・創作活動として捉えるか、その視点の違いではないかと思う。彼の視点はそのタイトル「意味がなければスイングはない」というストイックなフレーズに集約されている。

意味がなければスイングはない
村上 春樹 / / 文藝春秋
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ジャズがほんとうに好きな二人がつくった、とっておきのジャズ・エッセイ集。かって単行本で発刊された「ポートレイト・イン・ジャズ」、「ポートレイト・イン・ジャズ(2)」が一冊にまとめられ、さらに書き下ろし3人を収録した決定版文庫本。 小説ではないが私はこれが一番好きである。
マイルズ、パーカー、エリントンなど、写真や言葉よりよっぽど的確に個性を捉えている、和田誠が描く50数人のミュージシャンの肖像に、村上春樹が愛情に満ちたエッセイを添えるというジャズへの熱い想いあふれる一冊。 我々とほぼ同じ世代で(和田1936年生まれ、村上1949年生まれ)、ともに十代でジャズに出会い、数多くの名演奏を聴きこんできた二人が選びに選んだ、マニアも入門者も思わず顔がほころぶ、よりすぐりのエッセイ集。また、かってジャズ喫茶のオヤジであった村上氏のコレクションから、そのミュージシャンのLPジャケットの写真も添えられている。さらに驚くことに、この本で語られたアーティストのコンピ・アルバムが13人づつまとめられて、2枚出ているのだ。勿論、ジャケは和田誠、ライナーノーツは村上春樹。すこし、古い音源であるが、それがかえって効果的で、懐かしく暖かいぬくもりを感じさせる。

ポートレイト・イン・ジャズ (新潮文庫)
和田 誠 / / 新潮社
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ポートレイト・イン・ジャズ 和田誠・村上春樹セレクション

オムニバス / ソニーミュージックエンタテインメント



ポートレイト・イン・ジャズ

オムニバス / ユニバーサルクラシック



追記)意外なことに二人とも関西生まれ。和田は大阪生まれの東京育ち、村上は京都生まれの西宮・芦屋育ち。また、この本のタイトルは、蛇足ながら、名盤といわれるビル・エバンス「ポートレート・イン・ジャズ」から採っていることはお分かりですね。

また、彼自身の原作ではないが、翻訳書からは、「ジャズ・アネクドーツ 」。「さよならバードランド―あるジャズ・ミュージシャンの回想」 。 いずれも、ビル クロウ / Bill Crow (原著)、村上 春樹 (翻訳)のJAZZエッセイ、評論だそうです。ぜひ読みたいが、未だ読んでないので、出版社からのキャッチコピーをそのまま転記するとします。

JAZZベーシストにしてモダン・ジャズ界の語り部のビル・クロウがジャズ・ミュージシャン裏話を集大成。マイルズ・デイヴィスがプロモータを屈服させた一言、ビリー・ホリデイがバンド・バスの中で大もうけした顛末、ベッシー・スミスが南部でKKKを撃退した逸話、ルイ・アームストロングがライバルをノックアウトしたエピソードなど、まさしく黄金時代のアネクドーツ(逸話集)。

ジャズ・アネクドーツ (新潮文庫)
ビル クロウ / / 新潮社
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モダンジャズの黄金時代、ベース片手にニューヨークを渡り歩いた著者の自伝的交遊録。パーカー、エリントン、マイルズ、モンク等の「巨人」たちからサイモンとガーファンクルに到るまで、驚くべき記憶力とウィットにとんだ回想の中で、歯に衣着せぬ批評の眼がきらりと光る。訳者村上春樹が精魂傾けた巻末の「私的レコード・ガイド」は貴重な労作である。

さよならバードランド―あるジャズ・ミュージシャンの回想 (新潮文庫)
ビル クロウ / / 新潮社
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そして、このような村上春樹のJAZZへの大変な傾倒ぶりとそこから創作された著作に対し、捧げられた著書、CDが存在します。まずは、豪華アーティストが多数参加し、20万枚を売り上げる大ヒットとなった村上春樹イメージCD『ノルウェイの森Ⅰ、Ⅱ』。ビートルズ・ナンバーでイージーリスニングCDとしてヒットしたが、ムラカミ・ワールドのイメージ構築をはかることに成功したかどうか・・・・・・。

ノルウェイの森
L.A.WORKSHOP / / コロムビアミュージックエンタテインメント
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ノルウェイの森II
L.A.WORKSHOP / / コロムビアミュージックエンタテインメント
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そして2006年秋、リリースされた村上春樹に捧げる新録CD「アメリカから届いた10のオマージュ」。村上春樹の長編、短編のタイトルに使用された欧米のポップ、ロック&ジャズを集めたコンピである。彼の作品一つ一つに「Chick Corea」、「Michael Brecker」、「Ron Carter」らがビッグネームが捧げた10曲。こんなスーパースターたちによる全曲新録音は異例のこと!世界各国語で翻訳出版され、世界中にファンを持つ、カフカ賞受賞、ノーベル文学賞有力候補の村上春樹ならではか! そのとりあげられた10曲の例を挙げると、
「中国行きのスロウ・ボート/ソニー・ロリンズ ⇔ 短編『中国行きのスロウ・ボート』」 
「エンド・オブ・ザ・ワールド/スキーター・デイヴィス ⇔  長編小説『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』」 
「ノルウエイの森/ザ・ビートルズ ⇔ 長編小説『ノルウエイの森』」
「1963/1982年のイパネマの娘」、「32歳のデイトリッパー」というような趣向。
このCDも、村上春樹の描きたかった世界を、タイトルに使われた曲を、実際に読者が聴くことによって、村上ワールドに近づくことが出来るかもしれない。また、演奏をしている村上に共感するアーティストたちは、どう村上ワールドを表現しているのか などの新しい楽しみをもたらしてくれるCDである。

アメリカから届いた「10のオマージュ」
オムニバス / バウンディ
ISBN : B000HD1B9O
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「ノルウエイの森」、「10のオマージュ」をプロデュースした「兼松 光」が、その制作過程とレコーディング時の数々のエピソードを交えて書き下ろしたロード・ムービー・エッセイが「音楽家たちの村上春樹 ノルウェイの森と10のオマージュ」である。ニューヨーク、ロスの村上春樹、チック・コリア、マイケル・ブレッカー、ロン・カーター、リチャード・ティーをはじめとする参加したジャズ界の大物たちのコメント等も掲載されている。またこの本に付属するスペシャルCDには『バグダッド・カフェ』の主題歌「コーリング・ユー」で圧倒的な歌声を聞かせた歌姫、ジェヴェッタ・スティールの「ノルウェイの森」、マイケル・ブレッカーの「中国行きのスロウボート」をはじめ、村上春樹作品「アフターダーク」より「ファイヴ・スポット・アフターダーク」のオリジナル・ヴァージョンの計4曲が収録されている。

音楽家たちの村上春樹 ノルウェイの森と10のオマージュ
兼松 光 / / シンコーミュージック・エンタテイメント
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まだまだ「村上春樹ワールド讃歌本」は続きます。最後は、小西 慶太 (著)、『 「村上春樹」を聴く。 -ムラカミワールドの旋律-(CD付) 』。村上作品にでてくる楽曲についての解説を試みた本で、著者の作品紹介にはこんなことが書いてあります。
「村上春樹の小説からはさまざまな音楽が流れてくる。物語と音楽はふかいところでつながっている。・・・・・登場してくる音楽のことをまったく知らなくても、村上春樹の小説は十分に楽しむことができるだろう。だけど、・・・・登場人物が聴いている響きと同じ音楽を実際に聴きながら読めば、物語を受けとめる感触はたしかに変わってくる。 そこで、その音楽に近づくために、ひとつひとつ解説・紹介することを試みたのが本書である。」
実に、ボブ・ディランからベートーベンまで、村上春樹作品に登場する全楽曲・アーティストを網羅して解説し、そのうち印象的な12曲をオリジナルのギターアレンジでCDに収録して添付している。

「村上春樹」を聴く。 -ムラカミワールドの旋律-(CD付)
小西 慶太 / / 阪急コミュニケーションズ
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【CD収録曲】
1.カリフォルニア・ガールズ  2.ホワイト・クリスマス 3.オン・ア・スロウ・ボート・トゥ・チャイナ
4.イパネマの娘 5.激しい雨 6.ノルウェイの森 7.ダンス・ダンス・ダンス 8.国境の南
9.泥棒かささぎ序曲 10.K.476 歌曲「すみれ」 11.ピアノ三重奏曲第7番 変ロ長調「大公」
12.ファイブスポット・アフターダーク

村上春樹のJAZZ、ロック、POS、クラシックなどジャンルを超えた音楽に対するこの情熱、エモーショナルなエネルギーはどこから湧いてくるのだろうか?私には、未だに答えは見出せていない。しかし参考になる本が存在します。村上に非常に近しい存在であった著者による、『ジェイ・ルービン (著)、 畔柳 和代 (翻訳) 「ハルキ・ムラカミと言葉の音楽 」』。

大学を7年かけて卒業後、ジャズ喫茶のオヤジであった春樹が、神宮球場の外野席でビールを飲みつつ「僕にはたぶん小説が書ける。その時期がきたのだ。」と、天啓の如き思いを抱き、試合のあと文房具屋に行って万年筆と紙とを買い、店の仕事が終わったあと、毎日台所のテーブルに向かって、朝の3時か4時頃、ビールを飲みつつ書いた小説『風の歌を聴け』が、幸運なことに1979年度《群像新人賞》を取り、1981年には作家専業で生きていく決意を固め、ジャズ喫茶を廃業した。その後、作家として成長を遂げていく彼の様子がよく記されています。

ハルキ・ムラカミと言葉の音楽
ジェイ・ルービン / / 新潮社
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by knakano0311 | 2007-09-27 23:00 | 読むJAZZ | Trackback(1) | Comments(1)

その後の音楽のチカラ

今朝(9/24)、起きて何気なくつけた8時前のNHK総合TV。まえにこのブログでもとりあげた癌と戦いながらJAZZを歌い続ける姫路在住の女性JAZZシンガー「石野見幸」の特集をやっていた。(「続々々・音楽の「チカラ」 ~ 「いのち」を歌うJAZZシンガー ~」参照 )

頑張っていた。闘っていた。歌っていた。そして、なによりも周りの人に生きる勇気を与えていた。
もっと生きろ。そしてもっと歌え。まだ、音楽の「チカラ」を信じられる。


石野見幸、35歳。「いのち」のアルバム、「カレント」。「今」を生き抜いている証のアルバム。

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カレント
石野見幸 / / インディペンデントレーベル
ISBN : B000M7FROU
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by knakano0311 | 2007-09-24 11:05 | 音楽のチカラ | Trackback | Comments(0)

ザ・サムライ・チェリスト 「吉川よしひろ」

b0102572_2330176.jpg吉川よしひろオフィシャルサイトより




隣町の文化ホールから送られてきた一通のダイレクトメール。「吉川よしひろチェロ独奏パフォーマンス」の案内状。そこにはこんな一文がありました。

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山形県出身。ニューヨークを拠点に活躍する日本唯一のJAZZチェリスト・吉川(きっかわ)よしひろ。レコーダ内臓のブラックボックスを足で操作し、スタンディングでチェロを演奏。生演奏の即興録音と再生を繰り返しながら、さらに生音を重ねていく独奏的な奏法はまさにマジック!国際的なチェロ大会や、ウエスト・ニューヨークで行われた9.11追悼式典などで大絶賛を浴びる。独奏による重奏、躍動と静寂をテーマにジャズマインドあふれるハーモニーで聴衆を魅了し、国内外で高い評価を得る≪ザ・サムライ・チェリスト≫

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「JAZZチェリスト」、「ブラックボックス」、「独奏による重奏」、こんないささか不思議なキーワードに魅かれてコンサートに行ってきました。コンサートホールではなく、そこのロビーでのコンサート。それでも70人ぐらいの席は満席。演奏が始まって本当にびっくりした。彼はJAZZというジャンルを超える「チェロ・パフォーマー」というのが正しい評価であろう。「最上川舟歌」に始まり、オリジナル曲3曲のほか、「サティ/ジムノペディ」、「ピアゾラ/リベル・タンゴ」、「パッフェルベル/カノン」、「竹田の子守唄」、「ソニー・ロリンズ/DOXY」、「ロドリーゴ/アランフェス協奏曲」、アンコールは9.11追悼式典でも演奏したという「アメイジング・グレイス」、そして「千の風になって」、ラストの「サッチモ/What A Wonderful World」まで、一気通貫、休憩なしのあっという間のステージであった。

もともと人間の胴体サイズの共鳴箱を持つチェロ。そのためバイオリンやコントラバスより、人間の声に近い音域を持つ。そのチェロを立ったまま、足でブラック・ボックスを操り、弓だけでなく、フィンガー・ピッキングで、まるでギターのように、ベースのように弾きこなす。時には足首に巻きつけた鈴を響かせ、弓が空をきる時に発する音、胴を叩く音や自身の肉声までも演奏と一体化させる。そのパフォーマンスとブラック・ボックスが生む「独奏による重奏」が初めて聴く不思議な「音体験」と感動を創り出していた。

「竹田の子守唄」。日本民謡ではあるが、中央アジアのシルクロードの街にたたずんでいるかのようなエキゾティックな感覚。曲の最後の電子エフェクトによる消え入るような音は、キャラバンが砂漠のはるか彼方に消えていくよう感傷をもたらす。彼の演奏の最大の特長は、再生と多重録音が可能なハード・ディスクであるブラック・ボックスを操ることによって創り出される「重奏効果」。例えば「アランフェス協奏曲」では最初に、アルペジオから演奏されるが、それをHDレコーダに録音することによってテンポ、コード進行が決まる。それを再生し、そのアルペジオにかぶせて、あの有名なテーマが通奏され、またHDレコーダに録音される。そして再び再生された「アルペジオ+通奏テーマ」のうえで、今度は自在なアドリブが展開される。ここに「独奏による重奏」ライブが展開される。重奏による効果は「万華鏡」を思わせるくらい、音空間の広がりときらめきを爆発的に助長し、一気にラストの静寂へ突入する。70人ほどの聴衆であったが、全員がその圧倒的な演奏に感動していたと思う。

「吉川よしひろ -Life in NewYork- リベルタンゴ」

         


そして、すべての演目が終わったあと、彼は生まれつき片耳が聞こえない「聴覚障害者」であることを明かし、そのハンディキャップと、クオリティとともに、常にアーティストとしてのオリジナリティを要求するニューヨークの音楽界と観客の厳しさが、マイクを装着したチェロとHDレコーダによる多重演奏という独創的なアイデアを生み出したと語る。

これこそ独創、感動を生む比類なきパフォーマンス。また一人のアーティストに出会えたことに感謝・・・・。



注)AmazonなどにはCD情報が一切ないが、当日会場で買ったCD「Moon」は大阪のJAZZインディレーベル「おーらいレコード」発売であった。


ムーン

吉川よしひろ / 有限会社おーらい



見上げてごらん夜の星を

THE CELLO ACOUSTICS / 力塾



「Concierto de Aranjuez - The Cello Acoustics」

          
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by knakano0311 | 2007-09-22 23:20 | おやじのジャズ | Trackback | Comments(0)

いよっ!待ってました  ~ミューズの新作上期総決算(2)~  

ミューズの新作上期総決算の第2弾、今回は若手注目ミューズ編です。

「ソフィー・ミルマン」。ロシア生まれのカナダ出身。昨年第一作、「ソフィー・ミルマン」が日本でリリースされたときは、今後大器を予感させる凄い女性ボーカルの誕生として一躍注目された。つい最近まで学生で、23歳だったとは思えないハスキーでボリューム感あふれる歌いっぷりと美貌。今回の第2作は前回に比べ衝撃度は低いかもしれないが、それは静かなラブ・バラード系の曲が中心だからでしょう。、「ライク・サムワン・イン・ラヴ」、「メイク・サムワン・ハッピー」では、恋したいと思わずにいられない気分や恋する幸せがその歌唱力から十分感じられるし、軽快でよくスイングする「春のごとく」は第一作に漲っていたが歌のうまさが本物であったことを証明している。同じカナダ出身の「ダイアナ・クラール」とよく比較されるが、注目度No1、間違いなくトップクラスの女性JAZZボーカルである。

メイク・サムワン・ハッピー

ソフィー・ミルマン / Viictor Entertainment,Inc.(V)(M)



「リャンビコ」。タンザニア人の父親とドイツ人の母親の間に生まれた美貌の新人女性歌手。野生の豹を思わせるような眼。こんな新人が職場に配属されたらどうしようなどとばかげた第一印象を持ちましたが(Cool Biz 定年考(2)参照)、新作のアルバム・ジャケットを見る限り、その野性的な美貌と眼光の鋭さにはさらに磨きがかかっている。内容はその野性的な風貌とは裏腹に、極めて都会的なセンス、スモーキー声質に彩られている。ヨーロッパで唯一JAZZ不作国と思っていたドイツから、かくも都会的で官能的な女性ボーカルが出てくるとは驚き。スキャットをまじえたオーソドックスなスタンダードとボサ・ノヴァ、それにコンテンポラリー感覚のオリジナルも交えた魅力の一枚。

Love and Then

Lyambiko / Sony / BMG Import





「エミリー・クレア・バーロウ」。ダイアナ・クラール、ソフィー・ミルマンなどに続くカナダ出身のJAZZボーカル。何故カナダはかくも魅力ある女性ボーカルを輩出し続けるのか?そんな疑問はさておき、日本デビュー盤「Like a Lover」のライナーで絶賛されていた「キュートな歌声で高速のスキャットなどしっかり歌ってみせる、確かなテクニックに魅了させられる美人JAZZシンガー」というコピーはその通りであった。新作も前作同様期待通り、アップ・テンポなスタンダード・ソングや夏の終わりに聴きたいバラード、洒落たボサノバなど聴き応え十分なアルバムに仕上がっています。そして、フランス語で唄うシャンソンも、今回は可憐に唄う「セ・シ・ボン」など。

ザ・ヴェリー・ソート・オブ・ユー

エミリー・クレア・バーロウ / ビクターエンタテインメント





そして、「平賀マリカ」。初めて聴いた第2作「フェイス」について、かって、こんなことを書いた。(「三人の素敵な新人」参照) 「ちょっと驚いた。POP-JAZZとでも言ったらいいのか。確かにスタンダード集なんであるが、POPSみたいな感じに聴こえる。彼女の個性なのか、アレンジの妙なのか、こんな感じは初めてで、フレッシュである」と・・・。今回は、「デヴィッド・マシューズの全曲アレンジ」、「マンハッタン・ジャズ・クインテットのサポート」、「バート・バカラック特集」というびっくりするような、夢のキーワードである。新人第3作にしてこの快挙。内容もキーワードに決して負けてはいない、のびがあり、艶のある抜群の歌唱力。 最高のバカラック集のひとつといっていい。私の症候群曲のひとつ「恋の面影/The Look Of Love」と「アーサーのテーマ」も抜群のアレンジ、歌唱力でちゃんと収録されている。

クロース・トゥ・バカラック

平賀マリカ / ピーエスシー



ノラ・ジョーンズにはじまる「癒し系」の女性ボーカルもいいが、今回紹介したようなキレのいい、心浮き立つJAZZらしいJAZZボーカルもいいなあ。
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by knakano0311 | 2007-09-21 16:00 | ミューズたちの歌声 | Trackback | Comments(0)

いよっ!待ってました  ~ミューズの新作上期総決算(1)~  

b0102572_1722992.jpgわが町の山裾、ダム湖のほとりのダリヤ園。約150種2000株のダリアが華麗さを競う。




私には「わが心のミューズ」と呼べる女性ボーカリストが4人います。(参照;我が心のミューズたち(1)(2)(3)、Jazzyな「艶女~アデージョ」 その2など) 「ジャネット・サイデル」、「ステイシー・ケント」、「ダイアナ・クラール」、「カサンドラ・ウィルソン」です。5人目は日本人枠として残してあります。「伊藤君子」が最有力候補ですが、未だ未定です。
【注) 4人目は当初「ブロッサム・ディアリー」であったが変更。】

何と嬉しいことに、そのうちの3人までが、この上期にNew Albumをリリースしました。

まずは「ジャネット・サイデル」。オーストラリアをベースに活動。聴く人すべてをハッピーにさせる歌い方で、日本でもファンが多い。その彼女が、ファンのリクエストに応えて、次々と唄いまくるという伝説のステージ、2003年アデレイド・キャバレー・フェスティバルのライブ・ステージのCD化が実現しました。よく知られたスタンダード・チューンから隠れた名曲までをジャネットのヴォーカルとピアノ・トリオの絶妙のアンサンブルで聴かせるファン必聴のライヴ・アルバム。彼女の父親、母親のリクエストにも応えるという場面もあり、多様なリクエストに応えるのが結構苦労だったらしいが、楽しかったと彼女はいう。楽しいステージの雰囲気が伝わってくる、多分日本盤では初めてのライブ・アルバム。

プリーズ・リクエスト

ジャネット・サイデル / fab.



ボーイッシュな美形「ステイシー・ケント」。英国をベースに活躍し、ここ10年間にインディー・レーベル「Candid」から、コンスタントに6枚のアルバムを発表した彼女がついに、メジャー・レーベル「Blue Note」へ移籍し、デビュー・アルバムを発売した。この間、2001年英国ジャズ大賞、2002年BBCJAZZボーカル大賞を続けて受賞し、実力、人気とも充実している最高のときを迎えている。ブルーノートに移籍してのデビュー作である本アルバムは、音楽だけでなく、人生のパートナーであるSAX奏者ジム・トリンソン(そのおしどりぶりは、拙稿「熟年離婚あるいは婦唱夫随 (2)」参照)によるプロデュースと全編のアレンジである。なお今回初めて、タイトル曲「市街電車で朝食を」を含むオリジナル曲を4曲歌っています。しかも、作曲はジム、その作詞は夫妻の友人で日系英国人作家の「カズオ・イシグロ」氏とのこと。等身大の女性のロマンティックな想いを鮮やかに切り取ってみせる詩、歌唱力。スタンダードあり、ボサノバあり、ブルースあり、オリジナルありで、JAZZボーカルというジャンルだけでは収まりきらない、新しい世界へ一歩踏み出そうという彼女の意気込みが十分感じられるし、またその試みは十分成功していると思う。都会的で、素直で、軽やかで、透明感あふれる彼女の歌声には相変わらず魅了されてしまう。そして、「ノラ・ジョーンズ」の成功に続く、新しい女性ボーカルの旗手に育てようという、ブルーノート側の思いも十分感じられる。アルバム・ラストはサッチモのヒット曲「What a wonderful world 」。すがすがしく、いとしさに満ちた彼女の世界感に染められた佳唱。

市街電車で朝食を
ステイシー・ケント / / EMIミュージック・ジャパン
ISBN : B000TLYFO2
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「ダイアナ・クラール」。いまさら付け加えることがないほどの実力、人気NO.1のJAZZボーカリスト。新作アルバムは、新録音ではなく、デビュー12 年目に贈る初のベスト・アルバム。過去に発表された8 枚のオリジナル・アルバムからセレクトされた12 の名曲+ボーナス・トラック(未発表音源)3曲を追加した全15 曲でアルバムを構成。さらに、嬉しいことに、9曲の映像のボーナスDVDがついているのだ。彼女の12年間の足跡が窺えるが、あらためて、その歌唱力、個性は抜群に魅力的と感じる。とくにスロー・ボッサで優雅に官能的に唄う「S'Wondeful」、「I've Got You Under My Skin」、「Let's Face The Music & Dance」はいつ聴いても脳髄を心地よく刺激する。
「エルビス・コステロ」と結婚して、双子を出産、子育てのため一時活動を休止していた彼女だが、本アルバムは、いよいよ活動再開の予告編と思われる。(ライナーによると6月から9月下旬までの全米ツアーが始動したとのこと)

ザ・ヴェリー・ベスト・オブ・ダイアナ・クラール(初回限定盤)(DVD付)
ダイアナ・クラール / / UNIVERSAL CLASSICS(P)(M)
ISBN : B000TLYED4
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「シモーネ」。前2作ともそのコケティッシュなジャケットは「秘密の花園」入りをしましたが、今回のジャケットは残念!普通。(「秘密の花園」参照)
オーストリア出身、2000年以降ニューヨークを中心に活動している新進女性ジャズ歌手。これ81年9月生まれというから、26歳と、年齢的にはまだ若いけれど、その歌声は非常に落ち着いていて、大人の色気を感じさせる。今回のアルバムもピアノトリオをバックにスタンダード、ボサノバ、バカラックナンバーを唄う。特に、この人の「スローバラード」は凄い。年からは想像できないような色気が漂う。まさにおやじJAZZファン必携のシモーネ。

恋のチャンス

シモーネ / ヴィーナスレコード



奥さんの「いもたこなんきん」シンガー「小野リサ」。avexへの移籍第一作がリリース。おととしはラテン三部作、去年はカントリー&ウェスタンに取り組んだ「Jambalaya-Bossa Americana」。そして今年、ソウル・ミュージック、R&B名曲のボサノヴァ・アレンジ・カバー・アルバム「Soul&Bossa」。ブラジル・サンパウロ生まれ。幼少時代をブラジルで過ごし、15歳からギターを弾きながら歌い始める。 1989年日本でデビュー。ナチュラルな歌声、チャーミングな笑顔で瞬く間にボサノヴァを日本中に広める。ボサノヴァの神様アントニオ・カルロス・ジョビン等の著名なアーティストとの共演や、ニューヨークやブラジル、アジアなどで海外公演を行い成功を収める。1999年アルバム「ドリーム」が20万枚を越えるヒットを記録。 以降、ボサノヴァで日本におけるボサノヴァの第一人者としての地位を不動のものとしている。
「(Sittin'On)The Dock Of The Bay」、「You've Got A Friend」、「I Can't Stop Loving You」、「Unchain My Heart」などおなじみの曲が「リサ風Bossa」で・・・。

もうチケットを買ってある11月のコンサートが、本当に楽しみである。

Soul&Bossa

小野リサ / avex io(ADI)(M)



2007年はボサノヴァの神様アントニオ・カルロス・ジョビンの生誕80周年。
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by knakano0311 | 2007-09-20 17:35 | ミューズたちの歌声 | Trackback | Comments(0)

デジタル・デバイドをぶっ飛ばせ  ~マーケッターとしてのシニア考(6)~

今日は「敬老の日」。私は、お祝いをされる年にはまだしばらくありますが、報道によると、65歳以上のお年寄り、高齢者は2744万人で過去最高、総人口に対して21.8%だそうです。このように高齢化社会が急速にすすむ一方、IT化もまたすさまじい勢いですすんでいて、高齢化社会とIT化社会のギャップ、すなわち「デジタル・デバイド」が気になっていました。つい最近のIT関連の展示会へいっても、技術者出身の私ですら、使われている言葉の半分(ほとんどが横文字)程度しか理解できず、その進展のスピードに驚いています。
「デジタル・デバイド」。この言葉に相当する日本語、訳語が思い浮かばないので、そのまま使いますが、意味は「パソコンなどのIT機器、デジタル機器を使いこなせる能力のある・なしの差によって生ずる格差」ということのようです。社会の急速なIT化、デジタル化の流れのなかで、高齢者・シニアの皆さんがどんどん取り残されていっているのでは、と危惧していましたが、どうもそれは杞憂のようです。NHKのニュースによれば、高齢者の373万人の人がインターネットや電子メールを利用しているという調査結果がでているそうです。新しいことに、頑張ってチャレンジしているお年寄りの姿勢が窺えて嬉しいじゃないですか。また、別の統計では、「団塊の世代」の男性の75%はパソコンを使えるそうです。勿論、使いにくさ、l理解しにくさなどシニアにとっての多くの問題はありますが、今後も、IT機器をつかえるシニアが増えていくことを考えれば、シニアの皆さんにおける「デジタルデバイド」はやはり杞憂と考えてもよさそうです。

2006年時点で868万人がブログ登録をし(総務省報道資料)、mixiなどSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)にも700万人超が加入している(同資料)といいます。またブログの閲覧者は4000万人超とも言われています。
こうなってくると、この5000万人規模のブロガー、閲覧者群は、あらゆる業界にとって、巨大なマーケティング対象層として、極めて魅力的に見えていることは間違いないでしょう。
ヤフー、エキサイト、グーグルなどを始めとする、沢山のポータルサイトが、企業の広告宣伝と引き換えに、無料のブログサービスを提供して、ブロガーの取り込み合戦を図っていますし、少し検索してみれば分かるように、日経、朝日、読売などの新聞社や出版社などメディアがシニア、団塊世代向けの専用クラブ・サイトを開設しています。最近TVコマーシャルの最後に「検索キーワード」がでる画面が非常に多くなったのはこのことを意識してでしょう。もうTVコマーシャルとNETコマーシャルのシェアは多分逆転しているかも知れません。

では、私も含めて新米のシニア・ブロガー、NET利用者はどうしたらいいのでしょうか?私は、「NETが提供してくれるサービスを、徹底的に利用し尽くせばいい」と考えています。
何か知りたいこと、調べたいことがあればNETを利用しますし、ほとんどがNETから情報を得られます。たとえば、海外旅行を計画しているとして、観光地、名所の情報、フライト、ホテル、列車、美術館、オペラなどの予約など大抵のことは事前に日本で出来ると思います。また、ブログのテーマやJAZZに関する調べや、映画上映情報、海外サイトの翻訳、手に入りにくいCD、書籍の注文もNETを利用しています。今後も、NET利用者に対し、サービス提供側がより良い、より使いやすいサービス提供競争をしてくれるはずです。臆せずに使ってみることから始めることをぜひオススメします。

一方、なんでもそうですが、「人間の幸せ」のためあるはずのテクノロジー、システムは影の部分を持っています。ウィルス、ウィニー、大量に送りつけられてくる迷惑メールなど、ネットワークによるコミュニケーション社会は、大きな問題点や脆弱性をかかえています。
特に、「匿名性」という特徴を利用した情報発信側の悪意や「2ちゃんねる」などの掲示板、社会問題化している「匿名性」なるがゆえに、エスカレートしていく中高校生の携帯メールによるいじめの問題、成りすまし犯罪、闇サイトなどなど。
中国のように政府が有害と考えるサイトの政府による検閲、アクセス遮断(中国でアクセスしてみたらすぐに分かることですが)などの措置は当然容認できないところですが、しからば、NETコミュニケーション社会の健全な発展はその社会の構成要因である情報発信者、情報受信者(閲覧者)の姿勢にゆだねるしかないであろうか? としたら、法整備ももちろんのこと、悪意の連鎖に巻き込まれないためにも、中等学校教育の中でパソコンの使い方や専門技術だけでなく、発信者・受信者として情報を扱うことへの教育も必要ではないでしょうか。それこそが真の「デジタル・デバイド」解消かもしれません。

便利になったけど今ひとつ、人間が見えない社会。生きた人間に面と向かう生のコミュニケーションが苦手で、機械を通じたコミュニケーションが主流になっていく時代。音楽の分野では、ノラ・ジョーンズ以降、「人のぬくもり」をテーマにしたような人間回帰のアルバムが目立つ。
ベテランJAZZシンガー、2児の母親となった「アン・サリー」、「鈴木重子」も「人間回帰」の方向を、強く意識して目指したアルバム作りが感じられる。最近リリースされたNEWアルバムに、特にその傾向が窺える。

こころうた

アン・サリー / VIDEOARTS MUSIC( C)(M)



LOVE

鈴木重子 / BMG JAPAN


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by knakano0311 | 2007-09-17 17:55 | マーケッターとしてのシニアから | Trackback | Comments(1)

中国JAZZY紀行(2)  ~ ちょこっとコスモポリタンに ~

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ウルムチ・新疆民俗音楽レストランにて




北京はいまや本当に国際都市。世界中だけでなく、広大な中国各地の料理や音楽が楽しめる。これも出張の余禄というか楽しみです。今回訪れたレストランのひとつは、写真にあるウルムチ・新疆民俗音楽レストラン「阿凡提」。
阿凡提(アバンティ)とはかの地の英雄だそうで、トルコ、カザフスタンあたりを思わせるような民族衣装と顔立ちの中国人が、いろいろなショーを見せてくれる。蛇皮の太鼓や4味線が奏でる音楽が異国情緒をかきたてる。客席は欧米人のツアー客で満員で、彼らは本当に楽しんでいる。いつも思うのだが、こういうところで日本人をまず見た事がない。多分、日本人だけの仲間で、日本料理屋か、日本語が通づるスナックあたりで楽しんでいるのでしょう。

翌日は、中国風あり、タイ風あり、アメリカ風ありのどちらかといえば、無国籍のショーをやっている海鮮レストラン「南洋海鮮花園 大宅門」。ここの料理の売り物は、巨大な生簀に泳いでいる様々な魚、甲殻類、貝などを指定の料理法で料理して持ってきてくれます。また、ショーの目玉は、一瞬の間にまったく違う顔になる京劇伝統の「百面相早変わり」と、女性数名の「千手観音舞踊」。かってTVでは観ていましたが、「百面相早変わり」を初めて間近に見ましたが、どういう仕掛けになっているのか、「凄い」の一言でした。

また北京を訪れるといつも行くJAZZクラブ、「北京CD爵士倶楽部」。この日のライブ出演は、欧米人3人と中国人一人のカルテットで、途中から欧米人女性ボーカルが加わるという編成。バンドのレベルは、ばらばらでまとまりのないバンド、はっきりいえば下手であったが、ここも土曜の夜とあって、立ち見が出るほどの満員のお客さん。しかし、日本人らしきお客さんは、やはり見かけませんでした。ここに来ていつも思うのですが、日本では、JAZZは「おじさんの音楽」ですが、ここ北京では間違いなく、若者の音楽です。

こんなふうに、私の北京の夜は過ぎていくのですが、もし読者の皆さんが北京を訪問することがあれば、日本料理屋や高級中国レストランだけでなく、ちょこっと勇気を出して、このようなレストラン、クラブを訪れることをオススメします。安いし(100~150元/人くらいか)、ちょこっとコスモポリタンになった気分を味わえますよ。

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例によって、みやげのCD。今回は「ノラ・ジョーンズ/Norah Jones」の「not too late 中国版スペシャル・エディション」で25元(約380円)。日本版仕様のCD+DVDではなく、過去のヒットアルバム、「Come Away with Me」、「Feels Like Home」、「Not Too Late」から合計43曲、2枚組CDに収めた、いわばベスト盤というより総集盤。
「ノラ・ジョーンズ」。世界的に大ヒット、日本でも、若い女性層までJAZZファンを拡げ、すっかりおなじみの人となった。デビュー作、「Come Away with Me」では、キャロル・キングやジョニ・ミッチェルに通じるシンガー・ソングライター的な一面と、カントリー&ジャズのムードが絶妙に混じった独特のけだるいムード、味わいを醸し出した。
この絶妙な味わいによる癒しの世界が、世界中で受け、そのあともポスト「ノラ・ジョーンズ」的癒し系シンガーが続出している。なお余談ながら、ノラ・ジョーンズは、ビートルズも大きな影響を受けた、有名なインドのシタール奏者、ラヴィ・シャンカールの娘である。

Not Too Late (Dig)

Norah Jones / Blue Note Records



「Norah Jones - Not Too Late」

          
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by knakano0311 | 2007-09-14 08:51 | JAZZY紀行 | Trackback | Comments(0)

中国JAZZY紀行(1)   ~ ちょこっと仕事で ~

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完成間近 全貌を現した「鳥の巣」こと、オリンピック・メインスタジアム
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故宮(紫禁城)


オリンピックまで333日(9月10日)の北京でこのブログを書いています。定年後、「ちょこっと仕事」をモットーに、「半労半遊」の生活をしていますが、その「半労」の部分、中国での「省エネルギー事業」のお手伝をしているのですが、その関係で中国によく来ますし、ここ数年間中国のいろいろの人(そのごく一部ですが)に接しています。オリンピックが近づいてきたためか中国に関するいろいろな報道がなされています。しかし、なんとなく違和感を覚えるのです。2005年のときの、反日デモのときもそうでした。デモ当日は上海にいましたが、あのデモは、明らかに管理されて起こされたデモといってもいいデモでしたが、帰国すると、中国全土が反日で燃え上がっているかのような報道。TVの特性でもあるのですが、「木を見て森を見ず」というか、「TVのフレーム内の映像がすべてを代表してしまう」というか、そんな違和感を覚えました。その後も中国についてのいろいろ報道されていますが、「群盲象をなでる」の感を禁じ得ません。もちろんこの私のブログ記事もその範疇であることは十分承知しています。
偽もの・コピー問題、環境問題、食品問題、エネルギー問題、バブル、反日教育問題、マナー問題、少子高齢化・・・・・・などなど。多分報道されていることは、一面的には本当でしょう。ただし、それをみて、すべて中国人の国民性や特質と決め付けてしまうことは少し危険だと思います。「コピー問題」をとって、一例を挙げてみましょう。確かにコピーは悪いし、知財権に対する中国人の意識はまったく希薄、日本・欧米の企業は、コピー商品により多大な損害を受け、対策に頭を痛めています。その一方、大使館が集まっている地域に程近いところに、北京に詳しい人なら誰でも知っている、秀○市場という服飾商品を中心とする大きなマーケットがあります。ここには、中国製品は当然売っているのですが、バッグ、靴、時計、衣類・・・・など、欧米ブランド商品のコピーを堂々と売っていることでも有名な市場です。値引き交渉次第では1/10、1/20の安さで買えるとあって駐在員、日本人・欧米人観光客で大変賑わっています。しかし、その値段でも一般の中国人には二の足を踏む値段なのです。すなわち、服飾品に限っていえば、ブランド品のコピー商品のニーズを創り出しているのは欧米人・日本人です。それが世界中にばら撒かれているのでしょう、日本でも、ヨーロッパでも売っています。
陳腐かもしれませんが、先ほどのような問題について、中国を理解するうえで、国の大きさ、広さ、人口の多いさという基本的な問題と、文化大革命後の人材不足、急速な経済成長発展と資本主義経済の未熟さのアンバランス、などを総合的に視野に入れておく必要があります。

また、中国で会う企業関係者の若さにびっくりした方も多いのではないかと思います。私の経験ですが、国家指導者=50歳代、企業トップ=40歳代、企業の実質リーダー=30歳代、実務者=30~20歳代 という実感です。これも文化大革命後の人材枯渇を急速に補填していった結果だということを聴いたことがあります。私にも、顔が童顔のため、10代にしか見えない女性が、ある組織のNo2で、博士の肩書きを持っていたので大変びっくりした経験があります。
また、最近は背広・ネクタイ姿も見かけますが、企業トップから一般社員までセーター、ジャンパー、ポロシャツといった服装が一般的で、びっくりします。これも人民服の名残で、服装によって貴賎、上下が出ないようにしている知恵だと聴いたことがあります。

よくも悪くも、中国抜きにして世界も日本の経済も成り立たない時代になったし、中国もいま以上に国力をあげようとするなら、世界と調和していかなくてはならないことは中国が一番よく知っています。

それにしても、故宮(紫禁城)を観るたびに思うのですが、この国を治めるのに、漢民族を城外に追い出し、あれだけの巨大空間、人力、財力、時間、技術を費やした建物によって、守るべき「国」、「権力」とは一体何であったのかと思う。少なくとも国民ではなかったことは確かである。そして今、あの「鳥の巣」は現代の紫禁城たりえるのだろうか?
初の紫禁城の内部ロケにより、清朝の崩壊前夜を描いた名作、ベルナルド・ベルトルッチ監督「ラストエンペラー」によって紫禁城の生活を知ることが出来る。中国清朝最後の皇帝であり、その後満州国皇帝として時の侵略国・日本の傀儡ともなった溥儀の数奇な運命を描いた超大作。音楽はアカデミー賞受賞の教授こと、坂本龍一。

ラストエンペラー
/ 松竹ホームビデオ
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20世紀前半、中国の清王朝から中華民国へと移り行く時代の流れの中で育った宋家の三姉妹、靄齢、慶齢、美齢。長女、靄齢は財閥の御曹司・孔祥熙へ、次女、慶齢は後の国家主席・孫文へ、そして三女、美齢は国民党の指導者・蒋介石のもとへそれぞれ嫁いでいく。そして孫文の死後、夫の革命の遺志を継ぐ次女は三女と対立するようになり、姉妹のきずなに溝が生じていく……。
女性監督メイベル・チャン監督が、辛亥革命から新中国成立までの激動40年間。近代中国史の中で力強く生き続けた実在の三姉妹の愛と葛藤を捉えた感動の大河ドラマである。音楽は、喜多郎。

宋家の三姉妹
/ ポニーキャニオン
ISBN : B0000A4HTL
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所詮、人類の歴史は、我々の先祖であるかもしれない「北京原人」の時代から、同じことの繰り返しで、変わらないのかもしれない。ベーシストであるチャーリー・ミンガスの56年発表の代表作で、ジャズの名盤。タイトル曲でもある1曲目の直立猿人が、「ヒト」への進化から滅亡までを4パートに分けて描いた組曲になっている。聴いたのは大学時代。その強烈な音楽にただただ圧倒された記憶。

直立猿人
チャールズ・ミンガス / / イーストウエスト・ジャパン
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by knakano0311 | 2007-09-13 16:00 | JAZZY紀行 | Trackback(1) | Comments(0)

読む「流行り歌」  ~年甲斐もなく恋唄綴りに・・・・・~

「島村洋子」の恋愛小説が好きである。彼女の著書には、せつなかった別離、苦しかった逢瀬を、オールディーズにのせた連作小説「マイルストーン めざめるまでに」や、「The dock of the bay」「上を向いて歩こう」など、あらゆるジャンルの26曲の歌にのせて、想いを綴る、エッセイ集 「もう一度、聴かせて」など音楽に関連した著作が多く、等身大の現代女性の恋や性愛を描く。そのなかで、かってヒットしたなつかしのラヴ・バラードをタイトルにした短編集、「あんたのバラード」が、私は好きである。「あんたのバラード(世良公則&ツイスト)」、「哀しい色やね(上田正樹)」、「星屑のステージ(チェッカーズ)」、「帰れない二人(井上陽水)」、「少しは私に愛を下さい(小椋佳)」「アイ・ラヴ・ユー,OK(矢沢永吉)」など、懐かしのラヴバラードにのせて贈る、哀しくせつない8編の物語である。

我々の世代には、懐かしい「流行り歌」が各編のタイトルになっていて、またその歌の歌詞までついている。主人公の女たちは、生活や男たちに、傷ついていたり、疲れたり、諦めていたりしているが、心の奥に自分なりのソウル・バラード、「恋唄」をもっていて、それが読者、特に女性の読者の共感を呼ぶのだろう。いや私のようなオヤジでも十分に共感できますよ。ストーリーは解説すると野暮になりますので、しませんが、多分、読み終わったら、すぐに「TSUTAYA」にいきたくなりますよ。いや、カラオケかな ・・・。

あんたのバラード
島村 洋子 / / 光文社
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「世良公則 - あんたのバラード」

          


わが奥さんの「いもたこなんきん」アルバムでもある、女性シンガーの名曲ばかりを取り上げた、「ボーカリスト1,2」に続く徳永英明の最新作「ボーカリスト3」。46歳の徳永英明のカバーアルバムが、オリコンチャートの1位を飾ったのもびっくり。 かっての演歌は隅に追いやられ、CDショップは若者の音楽、いわゆるJ-POPやヒップホップ系の音楽があふれ、中高年が聴く音楽はなくなり、結果的に音楽業界の衰退にも繋がった情況のなかで、熟年アーティストの活躍、とくに徳永英明、桑田圭祐、小田和正らの活躍は喜ばしい。

徳永英明。「ボーカリスト1,2」もそうだったが、かすれた高音で、女性歌手以上に想いあふれる「女心」をバラードに、歌いこめられる歌手。カバー曲を唄うことについて、「100%の徳永色は出さない。歌わせてもらっているという意識でうたっている」と彼は言う。だからオリジナルの恋唄のコンセプトや雰囲気、情念はそのままに、彼の思いをそれにかぶせた歌い方になっているのであろう。しかし男性歌手という分、どこかからっとしているし、一種突き放した感じもする。新アルバムも、「恋におちて」、「PRIDE」、「桃色吐息」、「まちぶせ」、「わかれうた」、「迷い道」など我々世代が感情移入できそうな名曲ばかり。

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VOCALIST3
徳永英明 / / UNIVERSAL SIGMA(P)(M)
ISBN : B000RY433E
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「中島みゆき」を歌わせたらこの人以外にはいないという歌手がいる。「研ナオコ」である。彼女のオリジナルの歌かと思わせるくらい、自分の歌に見事に消化してしまっている。いずれもカバー集「中島みゆきを唄う」、「恋愛論」。「徳永英明」と同じ気分や空気を感じさせるが、彼女が女性歌手である分、徳永と違って幾分湿った空気が漂う。が、彼女の声質(風貌もあるかな?)が、湿らさせすぎない適度な湿度にとどめている点が見事。「時代」「わかれうた」「かもめはかもめ」を徳永と聞き比べて見るのも面白い。
「恋愛論」は、セルフカバーを含む、研ナオコの「昭和の恋歌綴り」。なんと言ってもアルバム名がいいし、ジャケットもいい。

中島みゆきを唄う
研ナオコ / ポニーキャニオン
ISBN : B00005FQ0S
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恋愛論
研ナオコ / ポニーキャニオン
ISBN : B00005FQ0R
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こんなCDを聴きながら夜更けに読む、「島村洋子」の「あんたのバラード」がいい。
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by knakano0311 | 2007-09-06 18:31 | おやじのジャズ | Trackback(2) | Comments(0)