大屋地爵士のJAZZYな生活

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傍らにある秋

定年退職してから後の生活習慣で大きく変わったことのひとつに、自然をすごく身近に感じ、楽しめるようになったことがあげられよう。時間だけはたっぷりある、日々の平凡な生活の中で、その傍らにある自然を楽しめることを素直に喜びたい。そんな「傍らにある秋」、五題を・・・。

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毎日のウォーキング・コースの途中にあるため池のほとりには、もう薄の穂がいっぱい。このため池には、「おしどり」のつがいが何組か住みついていて、そのためバード・ウォッチングを楽しむシニア世代を時々見かけることがある。それにしても、日本の池などは、どこの行政も責任リスクを恐れ、殆どの水辺に住民が立ち入れないよう鉄条網を張り巡らしてあるのは悲しい。
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たまに行く大型スーパーマーケットの近くの池には、「ばん」の親子や「かいつぶり」が住みついている。そして、ここにもちゃんと鳥達が生きているかどうかを、毎日見に来ることを生活の日課にしているシニアの方がいるのだ。この日も、その方は、ほとりには萩が咲き乱れる池の中を楽しそうに囀りながら遊ぶ「ばん」を、眼を細めて見守っていた。

ばん;番偏に鳥。ツル目の鳥で大きさは鳩くらい。水辺に住み、よく泳ぎ、笑い声に似た鳴声をだす。

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秋から冬にかけて、子供達に工作をしてもらうための材料採集に近所の林に出かけた。「夜叉ぶし」、「どんぐり」、「松ぼっくり」がたくさん採集できた。これで当分、材料は間に合いそうだ。

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里山の木立にかこまれたカフェのウッド・デッキで、憩いながらコーヒーを飲む。まだ午後、日差しも強い木陰であるが、戸外は少し肌寒く感じるくらい。里山では、もう秋の気配も深まってきたのだ。こんなゆっくりと流れる時間を味わえるようになったのも定年後の楽しみ方の一つ。


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我が家近辺のたんぼや畑の畦には、この時期、どこ行っても彼岸花(曼珠沙華)が、紅い妖艶な花をつけている。彼岸花の根には毒があるらしく、モグラや野鼠を寄せ付けないようにするために、かっては農夫達が畦に植えたらしい。それが増えて、今ではすっかり秋の風景を形づくっているのだ。


ささやかであるが、いまのところ穏やかな日々が送ることができていることに、感謝・・・。

「山も谷もすべて受け入れたうえで人生を「グッドライフ」と考えたい」という人生への想いを歌ったバラード「The Good Life」を思い浮かべる。「アン・バートン」が歌う珠玉の「The Good Life」は、アルバム「ブルー・バートン/Blue Burton」から。

ブルー・バートン
アン・バートン ジャック・スコルズ ルイス・ヴァン・ダイク ピエ・ノールディク ジョン・エンゲルス / ソニーミュージックエンタテインメント
ISBN : B00005G4A3
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by knakano0311 | 2009-09-29 09:12 | 地域の中で・・・ | Trackback | Comments(0)

60歳過ぎたら聴きたい歌(43) ~ ニューヨーク・シティ・セレナーデ ~

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鳩山新首相の訪米を報じるTV画面の背景にニューヨークの街並みが映し出されていた。私が、初めてニューヨークを訪れたのは、1990年の晩秋であった。ちょうどニューヨーク・シティ・マラソンが行われていて、もう陽もすっかり傾いたセントラル・パークに、トップとは遥かに遅れてしまったが、何時間もかけて走り抜けてきた市民ランナーたちが、笑顔で続々とゴールしてきたことを覚えている。そして、ブルックリンから観たマンハッタンの夜景。その息を呑むような美しさにはしばし呆然とした。そんなNYの印象をいつも想起させてくれる歌に「ニューヨーク・シティ・セレナーデ」がある。この歌は原題を「ARTHUR'S THEME (BEST THAT YOU CAN DO)」といい、初めて聴いたときも、歌の中で何度もでてくる「・・New York City・・」というフレーズが気になっていたが、邦題は知らないままとなっていた。あまり日本では話題にならなかったが、「ダドリー・ムーア」主演の映画「ミスター・アーサー/Arthur(1981年) 」の主題曲である。この映画には「ライザ・ミネリ」や「ジェラルディン・フィッツジェラルド」らも出演していて、ムーアは、その年のアカデミー賞主演男優賞にノミネートされたが、「黄昏」の「ヘンリー・フォンダ」に敗れた。しかし、主題歌「ARTHUR'S THEME」は、アカデミー歌曲賞を取ったのである。残念ながら、この映画はDVD化はされていないようで、私はいまだに観る機会を得ていない。クレジットでは4人の共作になっているが、作詞は「クリストファー・クロス/Christopher Cross」、作曲は「バート・バカラック/Burt Bachrach」。この歌は、間違いなくバカラックの後期の傑作といえるだろう。

その後、この歌の邦題が「ニューヨーク・シティ・セレナーデ」であるということを知って、がぜん私にとって、この歌は、何回か訪れたニューヨークの想い出を偲ぶ歌になるとともに、年甲斐もなく秋に聴きたくなるラブソングのひとつにもなっている。80年代のNYの気分がよく出ている歌の雰囲気にこれほどピッタリとはまる邦題も珍しい。「 ・・・ When you get caught  Between the moon and New York City  I know it's crazy but it's true ・・・ 」という、美しいしゃれたフレーズが、しばらくは耳について離れなかったくらい、よく聴いた歌である。


【 ARTHUR'S THEME (BEST THAT YOU CAN DO) 】
        作詞;Burt Bachrach&Carole Bayer Sager&Christopher Cross&Peter Allen 
        作曲;Burt Bachrach&Carole Bayer Sager&Christopher Cross&Peter Allen

「♪ Once in your life you will find her
   Someone that turns your heart around
   And next thing you know
   You're closing down the town
   Wake up and it's still with you
   Even though you left her way cross town
  Wonderin' to yourself
  Hey what have I found

  When you get caught
  Between the moon and New York City
  I know it's crazy but it's true
   Between the moon and New York City
   I know it's crazy but it's true
   The best that you can do
  The best that you can do
   Is fall in love

      ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  ♪」

【 ニューヨーク・シティ・セレナーデ 】 訳;山本さゆり

「♪ 人生に一度だけ、理想の彼女に出逢うもの
   そう、君の心をときめかせる誰かに・・・
   するととたんに君は
   何も手につかなくなってしまうのさ
   目覚めてもまだそのときめきが続いている
   そう、彼女を街のずっと向こうに置いてきたとしても
   そして自分自身に問いかけるのさ
   一体僕は何を見つけてしまったんだ・・・とね

   月とニューヨーク・シティの間に
   はさまって捕まったら
   そう、ちょっとクレイジーだけど、本当なんだ
   そう、月とニューヨーク・シティの間に
   はさまって捕まったら   
   一番いいのは
   君にできる最善のことは
   恋に落ちることさ

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ♪」

オリジナルの歌い手は、「クリストファー・クロス/Christopher Cross」、彼のベストアルバムから。

ヴェリー・ベスト・オブ・クリストファー・クロス(スーパー・ファンタスティック・ベスト2009)

クリストファー・クロス / ワーナーミュージック・ジャパン


この「ARTHUR'S THEME =NYCセレナーデ」を知ったのは、水野マリ・古澤大・杉山洋介の3人組ユニット「パリス・マッチ/paris match」の4枚目のアルバム「QUATTRO」である。前作「TypeⅢ」もそうであったが、ジャズのエッセンスを絶妙にブレンドしたおしゃれで心地よいサウンドが全編に溢れる。

QUATTRO

paris match 古澤大 杉山洋介 Satoshi Sano Shiro Sasaki Pamela Driggs パメラ・ドリッグス OSAMU KOIKEビクターエンタテインメント



ヴィジュアル的にはイマイチのですが、クリストファー・クロスがうたう「NYCセレナーデ」のYOUTUBE画像。
「Christopher Cross - Best That You Can Do (Arthur's Theme)」

          
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by knakano0311 | 2009-09-27 14:49 | 60歳過ぎたら聴きたい歌 | Trackback | Comments(0)

我が家の「生き物係」は・・・

何気なく観たNHK-TV「みんなの歌」。「いきものがかり」という、いささか奇妙な名前を持つユニットが歌う「YELL(エール)」という歌が流れていた。メンバーの一人が、小学校の頃、「生き物係」だったらしく、それをユニットの名前にしたという女性一人、男性二人のユニット。若い人達に相当人気があるらしい。

「♪ ・・・ サヨナラは悲しい言葉じゃない  それぞれの夢へと僕らを繋ぐ  エール ・・・ ♪」(作詞・作曲;水野良樹(いきものがかり))という、60歳を超えた私には、ちょっと照れくさく思えるが、その歌詞が心に残った。今は、本当に子供達が希望や夢を持ててる時代をめざしてきただろうか?大人たちが感じているこの国の閉塞感や行き詰まりを、こどもたちにそのまんま転化してきたのではないだろうか? そんな思いがこの歌を聴きながら湧いてきた。この歌は、そんな環境にありながら、だんだん大人へと近づいていく子供達に、勇気を届ける歌の様な気がする。平成21年度NHK学校音楽コンクール中学校の部の課題曲にもなっているという。最近の課題曲には、かっての様なクラシック系ではなく、アンジェラ・アキ、安岡優(ゴスペラーズ)などの若手のPOPSアーティストや、石田衣良、重松清、俵万智など新しい感性をもつ人気作家を起用していることも注目されるのだ。

わたしたち夫婦は、地域の子供達に学校では教えなくなった「遊び」を教えて、世代間の交流を図るという地域活動をお手伝いしているが、そんなささやかで地道な活動が少しでも、子供達の夢や希望を育むことにつながれば大変嬉しい。「YELL」を聴きながら、最近の若い音楽家への関心と興味もすこしわいてきた。
そして、定年後、リセットして、もう一度ささやかな夢を追いかける自分自身と退職世代の皆さんへのエールと、この歌を受け止めておこうか・・・。

YELL/じょいふる

いきものがかり / ERJ


「いきものがかり」の歌う 「YELL」のYOUTUBE画像 はこちら。

ところで、我が家には「ちゃちゃ」という、御年16歳の大変な「ばあさん柴犬」がいる。この地に引越して来たとき、三男が「絶対自分で世話をするから犬を飼いたい」という約束で、飼いだした犬である。しかし、飼いはじめてからすぐに、その約束はどこかへ行ってしまった。変わった犬で、好奇心が犬一倍強いのだが、大変な臆病ものでどこか抜けている。つい先日も、散歩の途中、蔓(かずら)の茂る山の草むらに何かを追いかけて入り込んだはいいが、足を蔓に絡め取られて身動きできずに、へたりこんだまま、私に救出されるという情けない始末。
完全リタイアになったこの4月からはこの犬の毎日の散歩と、庭の草木の水遣り、現役時代に手抜きしていた埋め合わせ?の妻の遊び相手と運転手は私の担当となった。
そう、私はもうりっぱな我が家の「いきものがかり」なのです・・・。

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by knakano0311 | 2009-09-24 10:51 | 音楽的生活 | Trackback | Comments(0)

エディ・ヒギンズ氏逝く・・・

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今日CDショップへよったら、こんな訃報が貼ってあった。思わず絶句・・・。

『ヴィーナス・レコードへの数多くの吹き込みで幅広い音楽愛好家に人気のジャズ・ピアニスト「エディ・ヒギンズ」氏 (1932~ ) が2009年8月31日にフロリダ州フォート・ローダーデールにあるホリー・クロス病院で癌により死去されました。享年77歳でした。』

エディ・ヒギンズ。彼のピアノからJAZZの世界、ピアノトリオに導かれた人は多いと思うし、私もコンボ一辺倒から、JAZZピアノの世界に誘われた一人である。甘すぎるという批判もあるが、彼は、年をとって渋みも加わり、その甘さ加減が私にとってはたまらないものになってきた。ヒギンズ節に安心して身を任せられる。だからずいぶんと聴いたし、相当数の彼のアルバムも持っている。
「ビル・エバンス」などとは違って、JAZZ界に偉大な足跡を残したピアニストというわけではないが、「ヒギンズ節」とよばれる肩の凝らないロマンティシズム、リリシズムに彩られた優しい音色、聴くとなぜかほっとして、嬉しくなるピアノであったと思う。わたしは大好きであった・・・・。

私が最後に聴いたアルバムは、これが遺作になったかもしれない、ヒギンズにしては珍しい最新のオリジナル曲集「ポートレイト・オブ・ラブ」。

ポートレイト・オブ・ラブ

エディ・ヒギンズ・トリオ / ヴィーナスレコード


そして私をジャズ・ピアノの世界へ誘ってくれた最初に聴いたアルバムは、タイトルもその名の通り、スタンダード集「Bewitched/魅惑のとりこ」。

魅惑のとりこ
エディ・ヒギンズ・トリオ / / ヴィーナス・レコード
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甘いといわれるかもしれませんが、エバンスとは違った表情 ・・・。 「Eddie Higgins Trio - You Mast Believe In Spring」

         

ありがとう、エディ・ヒギンズ。  合掌・・・・・。
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by knakano0311 | 2009-09-23 17:14 | 訃報を聞いて | Trackback | Comments(0)

萩の寺、秋櫻の寺、古都の初秋を歩く (2)

(承前)
さて、新薬師寺を後に、小道の静かなカフェで昼食をとり、再び奈良公園を起点に国道369号を北へ30分ほど歩く。この国道は、京と奈良、柳生とをむすぶ古くからの街道で、いまだに歴史を感じさせる古い町並みが所々に残っている。「うだつ」があがり、どっしりとした格子構えの家屋、店舗、どこか懐かしい風景。帰り道には、そんな町並みにある伝統の和菓子屋に立ち寄り、奈良の名物、吉野葛を使った絶品のわらび餅と栗菓子をみやげに求めた。試食にと出されたわらび餅のぷりぷりとした舌触りとほのかな梅味のお茶が、すこし疲れた体には心地よかった。

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堂々たる東大寺の国宝転害門(てがいもん)を右に見て、しばらくするとゆるやかな上り坂、奈良坂(ならさか)に差し掛かる。振り返ると、東大寺大仏殿の大屋根の鴟尾(しび)が、金色に輝いている。京からこの奈良坂を超えてきた旅人は、輝く大屋根を見てさぞかし感激したろうと思われる。坂の途中、誰が名づけたのか、どういういわれがあるのかも分からないが、室町時代後期、永正六年(1509年)建立の銘がある「夕日地蔵」と名づけられたお地蔵さんがぽつんと立っていた。傍らに建てられた「会津八一」の歌碑が印象的。

                    「奈良坂の  石の仏の  おとがひに 
                         小雨ながるる  春は来にけり」 (会津八一)

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そのほか、この街道筋には、赤レンガ造りで、美しいロマネスク調の門を持つ奈良少年刑務所や水道設備の跡などレトロな建物がある。この刑務所は、いまでも現役であるが、1908年(明治41年)に建設された建物で、ジャズピアニストの山下洋輔氏の祖父「山下啓次郎」という方が設計を担当したという。一瞬、ここが刑務所であることを忘れてしまいそうになるほど、煉瓦の模様が美しく、明治時代の建物の魅力が存分に感じられる。こんな発見もあるからウォーキングは楽しい。

ここまでくると、「コスモス(秋櫻)の寺」と呼ばれる般若寺はもうすぐ其処。鎌倉時代に建立されたといわれる国宝の楼門が見えてくる。般若寺は、古代朝鮮から仏教を伝えた慧潅(えかん)が、飛鳥時代(7世紀)に開いた寺。この寺が平城京の鬼門に位置するため、聖武天皇が「大般若経」というお経を納めたことがその名の由来という。吉川英治の小説「宮本武蔵」のなかで、武蔵が槍の宝蔵院と闘った「般若坂の決闘」というのは、このあたりに題材をとったのかもしれない。
境内は、本堂や重要文化財の十三重石宝塔を取り囲むようにコスモスが咲き乱れ、涼やかな風の中に身をおいて眺めていると、まるで別世界のような時間と空間。歩きにやや足が疲れていた妻が「きてよかった・・・」とつぶやいた。

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さて、再び国道369号を奈良公園へと歩いて引き返し、興福寺の五重塔、猿沢の池の脇を過ぎ、これもまた「萩の寺」と呼ばれ、奈良町のど真ん中にある「元興寺」へと向かった。「元興寺」は、「行基葺きの屋根」とよばれる奈良時代以前の丸瓦が、国宝の極楽堂や禅室に残っている世界遺産の寺。欽明十三年(552年)或いは宣化三年(538年)にわが国に仏教が伝えられて、正式にわが国最初の寺の建設が飛鳥の地に起工されたのが祟峻元年(588年)のこと。法興寺(=飛鳥寺)である。その後和銅三年(710年)奈良に都が移されると、この寺も新京に移されて、寺名も法興寺から元興寺に改められた。当時は、東大寺に次ぐ位置づけの広大な敷地と伽藍を持つ大寺院であったが、いまは極楽堂、禅室などわずかな伽藍しか残っていない。

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元興寺は、江戸・明治・昭和前期の町屋が立ち並ぶ伝統建築群地域である奈良町のど真ん中にある。しかし、中へ入るとここも時間が静止したような別世界。「萩の寺」の名に違わず、国宝の極楽堂の周り一面にそよぐ萩の花。2500余基にもおよぶ浮図(ふと)と呼ばれる付近に点在していた野仏、石塔・石仏を供養のために集めた浮図田(ふとでん)。時はお彼岸、萩のほか、色鮮やかに咲き乱れる桔梗、彼岸花の中で、石の仏達は、静かで安らかな時を迎えているようにも思えた。

この元興寺で、この日、休みも含めて、ゆっくりと5時間くらいかけた古都ウォーキングは終了。例によってドライブのお供は、今回は若手JAZZシンガーでラテンを歌わせたら右に出るものがいない「MAYA」の新作。本人も「ラテンアルバムを出さなければ死ねないな、みたいな。正直思っていましたから。」と語るほどの力の入れよう。期待を裏切らないできばえで、そのラテン・テイストに鷲掴みされてしまう。

マルチニークの女

MAYA / ディウレコード



「MAYA - ベサメ ムーチョ ( 『マルチニークの女』より)」

          

【追記 2009.9.25.】
本日のNHKスタジオパークに山下洋輔氏が出演。祖父である山下啓次郎のことについて語っていた。2008年9月13日に奈良少年刑務所内の講堂において、建築100周年を記念して、「山下洋輔ソロ・コンサート」を行ったと語り、その模様の映像が流れていた。偶然とはいえ、なんと言うタイミングのよさか・・・。
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by knakano0311 | 2009-09-23 09:39 | おやじの遠足・街歩き | Trackback | Comments(0)

萩の寺、秋櫻の寺、古都の初秋を歩く (1)

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快晴、九月、爽やかな風、季節の花は萩とコスモス。となれば、今日の「おやじの遠足」は即、決まり、古都奈良の花の寺めぐりへ。まずは「萩の寺」として名高い天平の古刹、新薬師寺を訪れようと思い、車を奈良公園において、春日大社の南、春日山の西に位置する高畑(たかばたけ)地区に向けてウォーキング開始。春に生まれた子鹿がもうすっかり大きくなって親子連れで草を食べる姿がそこかしこに。20分ほど歩いて風情のある東屋が浮かぶ鷺池をぬけるともうそこは高畑地区。土塀の続く小路を少し入ったところに今年オープンしたばかりの「志賀直哉旧宅」がある。この家は昭和3年に志賀直哉が自ら設計し、京都の大工に建築させ、ここで彼が小説「暗夜行路」を完結し幾多の作品を書いた。当時この地域には「武者小路実篤」、「中村義夫」ら文人・画家たちが多く住んでいて、志賀邸は彼らが多く集うサロンになっていたという。そのことは、洋風のサンルーム、娯楽室、食堂など当時としては大変モダンであったと思われる部屋に見てとれる。さわやかな風が吹き抜ける二階の書斎、その静寂な空間であの「暗夜行路」が執筆されたのだ。

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(写真左;風が吹き抜ける二階書斎 写真右;大きなサンルーム)


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旧宅を出て、春日山を間近にみながら、緑豊かな小道を歩く。春日大社へと続く森には、南京櫨(なんきんはぜ)がもう大きな実をつけ、葉も少し色づきだしていた。秋がもうすぐそこまで来ているのだ。妻が「こんなところに住んでみたいわね」とつぶやいたが、私が住んでいるところも閑静かと言えば、そうに違いないが、明らかにここは空気や気配が違う。自然の豊かさか、千年を超える歴史の積み重ねか、或いは風水的な地勢がこの地区に醸し出す雰囲気なのかもしれない。そして歩みは自然に新薬師寺へとたどり着く。

新薬師寺。聖武天皇の眼病平癒祈願のため、光明皇后によって天平19年(747年)建立された寺。新薬師寺という名前は「新しい薬師寺」ではなく、「霊験新たかな薬師如来さまを祀ったお寺」という意味で、西ノ京の薬師寺とは全く無関係である。そして天平時代建立の国宝の本堂には、堂々たる体躯と大きく見開いた切れ長の特長的な眼を持つ国宝薬師如来坐像、それを取り囲むように国宝十二神将立像が安置されている。

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(写真;伐折羅(ばさら)大将;奈良・新薬師寺-十二神将、魅惑の仏像9、毎日新聞社発行 著者/撮影:小川光三)

塑像なるがゆえに、その筋肉や表情が見事なまでの迫力で迫ってくる十二神将像は教科書などでおなじみのあの像である。まさに天平仏教彫刻の精髄。本堂の東窓は最近新しい試みとしてステンドグラスをはめ込んであるが、東側からの瑠璃光が淡く十二神将を照らし、華麗にして荘厳な内陣が演出され、この試みは成功しているように思える。初めて知ったのだが、この十二神将は干支の仏でもあり、戌年である私の守り神は「伐折羅(ばさら)大将」、寅年である妻の守り神は「真達羅(しんだら)大将」であった。

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そしてなにより新薬師寺は、「萩の寺」として有名。南門から本堂へ向かう参道脇や本堂周辺一帯に萩の花が咲く。私たちが訪れたときは、まだ3~5分咲き位であったが、初秋の陽を浴び、ゆったりと静寂に包まれた境内を散策する贅沢を味わえた。10月には尺八とJAZZピアノがコラボする観月会も行われるようであるが、最近音楽などのパフォーマンス・ライブをするお寺が大はやりである。お寺も、お寺の新しい形を模索したり、新しい世代を対象とした色々な新企画を打ち出さないと、お客さんを呼べない時代なのかも・・・。

半島からの渡来人の知識や智恵、技術によって作られた天平の都。「ナラ」という言葉は古代朝鮮語で「都」という意味だそうである。来年遷都1300年を迎えるこの古都は、いつ来ても私の心を伸びやかに、そして穏やかにしてくれる。

(続く)
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by knakano0311 | 2009-09-21 13:39 | おやじの遠足・街歩き | Trackback | Comments(0)

60歳過ぎたら聴きたい歌(42) ~SHE~

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秋の気配が近づくと、年甲斐もなくベタなラブソングが聴きたくなる。たしか妻とヨーロッパへ向かう機内で観た映画で使われていた曲。映画を観ていて「ああ、なんていい歌なんだ」といたく感動した記憶がある。その映画は「ジュリア・ロバーツ&ヒュー・グラント」主演の「ノッティングヒルの恋人」(1999年公開)。オープニングとエンディングで使われていた曲を帰国してから早速調べてみたら、これがなんと「エルヴィス・コステロ」が歌う「She」であった。あのシニカルな詩人でロックからJAZZまで幅広く才能を発揮する才人、そしてわがミューズ「ダイアナ・クラール」と結婚してしまった憎っくき「エルヴィス・コステロ」であったのだ。しかし、この曲は才人コステロの手になるものでなく、シャンソンの大御所「シャルル・アズナブール」が作曲し、日本でも、初演以来何度も公演を重ねている超ロングランミュージカル 「レ・ミゼラブル」の作詞をしている「ハーバート・クレッツマー」の作詞であることが分かった。しかも映画のオープニングで歌っているのは、「シャルル・アズナブール」その人であったのだ。

「ノッティングヒルの恋人(原題;Notting Hill)」。有名ハリウッド女優と平凡な男の恋の行方を、ユーモアたっぷりに描く。華やかなハリウッド女優を演じるロバーツと、どこか頼りない青年に扮したグラントがハマリ役。ウェストロンドンにある平凡な街“ノッティングヒル”。そこで小さな本屋を経営するウィリアムの店に、ある日偶然ハリウッドスターのアナ・スコットが訪れる。互いに運命を感じた2人は、やがて恋に落ちるが……。

ノッティングヒルの恋人 [DVD]

トレヴァー・ジョーンズ / 松竹


この「She」、洋楽版ド演歌と言ってもいいくらい、私にはたまらないほどベタな甘い歌詞が綴ってある。だから結婚式にもよく使われるといわれるほど甘い甘い名曲です。ビターでまずい拙訳など必要もないのですが、まあ参考までに・・。

『 She 』  作詞;Herbert Kretzmer 作曲;Charles Aznavour

「♪ She may be the face I can't forget
   The trace of pleasure or regret
   May be my treasure or the price I have to pay
   She may be the song the summer sings
   May be the chill the autumn brings
   May be a hundred different things
   Within the measure of a day

   She may be the beauty or the beast
   May be the famine or the feast
   May turn each day into a heaven or a hell
   She may be the mirror of my dream
   The smile reflected in a stream
   She may not be what she may seem inside her shell

       ・・・・・・・・・・・

   She may be the reason I survive
   The Why and when for I'm alive
   The one I'll care for through the rough in many years
   Me,I'll take her laughter and her tears
   And make them all my souvenirs
   For where she goes I've got to be
   The meaning of my life is she,she,she     ♪」

「♪ きっと忘れないだろう彼女の表情
   彼女は愛の喜び、それとも後悔の軌跡
   彼女は僕の宝物、それとも代償
   彼女は夏が奏でる詩
   彼女は秋が運んでくる涼やかな風
   彼女は一日のなかで起こるたくさんの出来事

   彼女は美女、それとも野獣
   彼女は餓え、それともご馳走
   彼女によって毎日毎日が天国にも地獄にもなるんだ
   彼女は僕の夢を映す鏡
   彼女は小川のせせらぎに映った微笑
   でもひょっとしたら彼女は見かけとは本当は違うかもしれない

     ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

   彼女は僕が辛くても負けずに生きている理由
   彼女はなぜ、そして今僕が生きている理由そのもの
   これまで何年もの間様々な起伏を乗りこえて彼女を見守ってきた
   僕は彼女を時には笑わせ、時には泣かせ
   それが今はたくさんの思い出になっている
   たとえ彼女がどこへ行こうと僕はついていこう
   僕の人生の意味は、彼女、そう彼女だから   ♪」

この曲は、映画の主題歌のため、コステロの独立したアルバムではなくベスト盤、あるいはラブソングのコンピ盤などにのみ収録されている。深みのある声、流麗なストリングス、これぞ泣かせ節・・・。コステロにこんな一面があるとは知りませんでしたね。アンディ・ウォーホル風のPOPなCDジャケット、これはいい。

ベスト・オブ・エルヴィス・コステロ

エルヴィス・コステロ / マーキュリー・ミュージックエンタテインメント


そして、最近の来日がもう最後であろうといわれているオリジナルの作曲者、大御所「シャルル・アズナブール」のこの歌も、いくつかのベスト盤に収録されている。こちらのほうは、邦題は「忘れじのおもかげ」となっている。

「Elvis Costello - She」

          

グレイテスト・ヒッツ・フォー・ジャパン

シャルル・アズナブール / EMIミュージック・ジャパン


フリューゲル・ホーンの若手の名手でありながら、その甘い声とマスクで女性に人気があるという「TOKU」。なんのCMだったか忘れたが、TVCFでもこの曲が使われていたとおもう。

ラヴ・アゲイン

TOKU / SMJ(SME)(M)


ピアノソロで美しいメロディを紡ぎだすのは神戸出身の「小曽根真」。ピアノによる「She」もロマンチックで流麗でうっとりするほど美しい。「伊藤君子」をプロデュースしたり、自ら率いるJAZZオーケストラ「No Name Horse」などで最近の彼の活躍が著しい。ソロからオーケストラまで最近の活躍を集めたバラード・ベストアルバムから。

バラード

小曽根真 / ユニバーサル ミュージック クラシック


これからは結婚式シーズン。もし誰か大切な人にラブソングをプレゼントしたいなら、この「She」なんか最適ですね。コステロが歌う「She」をふくむラブソングがいっぱいのお薦めCDは、ずばり「I Love You」。

I Love You

オムニバス / ワーナーミュージック・ジャパン


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by knakano0311 | 2009-09-19 09:20 | 60歳過ぎたら聴きたい歌 | Trackback | Comments(0)

キタイ?ギタイ?△×◆

妻の運転免許更新のため、隣町伊丹市の免許更新センターへ送っていった。伊丹のスーパーマーケットにはしょっちゅう買い物に行っているのに、なぜか伊丹は「街ブラ」をすることがなかった街である。ちょうどいい機会なので、街歩きも兼ね、タウン情報誌でちょっと気になっていた展覧会を観てきました。

JR伊丹駅前には、謀反を起し織田信長によって10ヶ月もの長い戦いの末、滅ぼされた戦国大名荒木村重の居城、有岡城がある。ポルトガル人宣教師のルイス・フロイスが「甚だ壮大にして見事なる城」と書き残すほどの名城であったが、荒木氏が滅んだ後は廃城となり、朽ち果てていた。近年その址のほんの一部が発掘され、公園に整備され、わずかに往時を偲ばせている。

b0102572_1014830.jpgb0102572_10153185.jpgそして、かっての伊丹郷は、灘、西宮と並んで古くからの酒どころ。現在では、「白雪」、「老松」などのブランドにその名をとどめるが、かっては36ほどの酒蔵が軒を連ねていたそうである。そんな隆盛を偲ばせるのが、国の重要文化財「旧岡田家住宅」。なんと延宝2年(1674年)築の町屋である。
b0102572_10233740.jpg住宅から店舗に改装され、北に酒蔵が増築されたのは正徳5年(1715年)、築年代が確実な現存する酒蔵としては日本最古である。住宅、釜場・洗い場、旧店舗の部分が見事に保存されており、古民家、古建築のもつどっしりとした風格、雰囲気が今なお息づいている。縁側には月見のためのススキと餅が供えられ、また建物内のあちこちには、竹の虫カゴやツボに入ったスズムシなど、秋の虫の音色が楽しめる粋な仕掛けが置かれていた。


b0102572_1035597.jpg「旧岡田家住宅」に隣接する伊丹市立美術館では、「キタイギタイ ヒビのコヅエ展 ~生きもののかたち 服のかたち~」という少し奇妙なタイトルの展覧会が開催中。現代コスチューム・アーティストとしてテレビや舞台など幅広く活躍する 「ひびのこづえ(1958-)」さんが、この夏、「虫」をテーマに新たな表現世界を展開するという企画。最初は何の展覧会だろうと思っていたが、はいってみてびっくり。身にまとうと、まるで自然の一部となったような感じのコスチューム、一見奇抜で色とりどりな虫たちのような生きもののかたちを想起させるようなコスチュームが所狭しと並んでいる。素材も自然素材というより、ポリウレタン、プラスティック・テープ、針金などむしろ人工素材。それがデザインやフォルムによって、環境にとけこむ線や色、かたち、質感を表現し、まったく元の素材を感じさせないような作品に変貌しているのだ。

b0102572_1332810.jpg(伊丹市立美術館HPより)

まるで、POPでカラフルな楽しい異次元の世界に迷い込んだようだ。だまし絵展もそうであったが、子供達の歓声もまったく気にならない。子供達が、彼女の指導によって、色々の素材で作ったユーモラスでカラフルな「虫」達も展示されている。さらに、「ひびのこづえ」氏が日々の暮らしのなかで「あったらいいな」と思ってデザインした家具(バスタブやソファーまでも)・カーテン・服・バッグ・日常の品々も展示し、殆どの展示品が購入することができる。「ひびのこづえ」の世界は、わが故郷・松本の出身で世界的なアーティスト「草間弥生」の世界や、ガウディの聖ファミリア教会(バルセロナ)の空間を連想させるものであった。そして、会場の一部でもある日本で現存する最古の酒蔵、「旧岡田家住宅」では、野田秀樹作・演出、松たか子・宮沢りえ主演の演劇「パイパー」で使用された、「ひびのこづえ」デザインによる極めてシュールな衣装が展示され、古民家と不思議に調和する空間を形作っていた。

「ひびのこづえ」の展示世界、「キタイギタイ」は、「キタイ・ギタイ= 奇態・擬態」或いは、「着たい擬態」であり、「生きもののかたち 服のかたち」は、「いきもの、きもの」の「ことば遊び」であったかと気がついた・・・。

一般的に言って、「音楽」なども非日常的空間で意識や感覚を遊ばせるという要素が強いのだが、時々何かを寓した「シュール」な歌に出会うことがある。そんな歌の一つは「paris match」の歌う「cream」。

「♪ 今宵も 私孤独りでハイウェイを湖のほとり向かう
    群がる鳥振払いたくてあなたはピアノを弾いている
      ・・・・・・・・ 
      せめて密やかなクリーム  恋のフィルムを乱して  
       銀の煙につつみ込まれ  
        離れていくなら  そのピアノだけは  
         このがらんどうの部屋で  今 壊して ♪」    (作詞;古澤大 作曲;杉山洋介)

このほか、「cerulean blue」など寓意に満ちた曲ばかり収録されたアルバムは「type Ⅲ」。ときどき私はこのアルバムを聴いては非現実の世界に遊ぶ・・・。

typeIII

paris matchビクターエンタテインメント



「paris match - cream」

          
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by knakano0311 | 2009-09-17 09:33 | おやじの遠足・街歩き | Trackback | Comments(0)

60歳過ぎたら聴きたい歌(41) ~ I'm A Fool To Want You ~

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もう遥かな昔になるが、二十代の頃、初めて深く心が傷ついたとき、一晩中、同じ歌を何回も聴いていた記憶がある。なんの歌だったかは、もう記憶の底に沈んでしまって、もはや思い出せないのですが・・。貧乏だったが、まだ青くて若くて多感で、夢や野心があって、傷つけることも、傷つくことも恐れていなかったが、あの時の、ただただ切なかった自分を、想いだして懐かしむために、今でもときどき秋の夜更けなどに聴く歌がある。その歌は、「チェット・ベイカー/Chet Baker」が歌う「I'm a fool to want you」。

この歌は、ジョエル・S・ヘロンが作曲し、ジャック・ウルフとフランク・シナトラが作詞したもので、1951年に「フランク・シナトラ」が歌って発表され、ヒットしたスタンダード曲。

【 I'm a fool to want you 】 作詞;Jack Wolf & Frank Sinatra 作曲;Joel Herron

「♪ I'm a fool to want you
   I'm a fool to want you
   To want a love that can't be true
   A love that's there for others too

   I'm a fool to hold you
   Such a fool to hold you
   To seek a kiss not mine alone
   To share a kiss the devil has known

   Time and time again I said I'd leave you
   Time and time again I went away
   Then would come the time when I would need you
   And once again these words I'd have to say

   I'm a fool to want you
   Pity me, I need you
   I know it's wrong
   It must be wrong
   But right or wrong
   I can't get along
   Without you    ♪」

「♪ こんなに君を恋焦がれるなんて愚かな僕
   そう、君を求める愚か者さ
   決して実を結ぶことがない恋を求めるなんて
   他のだれかを愛しているかも知れない君に恋するなんて   

   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

   こんなに君を恋焦がれるなんて愚かな僕
   こんなに君を必要とする僕を哀れんでくれよ
   間違っているのはわかっているさ、きっと間違っているに違いないよ
   しかし、正しいにせよ、間違っているにせよ
   僕は君なしでは生きていけないんだ・・・    ♪」

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あの傷ついた二十代のとき、この歌を知っていれば、きっと一晩中、聴きつづけていたに違いない。トランペッターにして恋唄唄い、「チェット・ベイカー」の「Love song」というアルバムに収録されている「I'm a fool to want you」。ホテルの窓から転落して死ぬ2年前の1986年、アムステルダムでの録音である。生涯麻薬と酒から脱却することができなかった破滅的白人JAZZマンの代表格みたいな男だが、その声のもつ毒に痺れ、その毒が今でも後遺症のように私には残っているようだ。だから、いまだにこの歌は私を泣かす。辺見庸は、月刊「プレイボーイ」誌2008年8月号でチェットの歌う、「I'm a fool to want you」についてこんな風に語っている。

「老残のチェットが血涙をしぼるようにうたい、吹くとき、もらい泣きをしない者がいるとしたら、たしかに人非人にちがいない。・・・・ここに疲れや苦渋があっても、感傷はない。更正の意欲も生きなおす気もない。だからたとえようもなく切なく、深いのである。そのようにうたい、吹くようになるまで、チェットは五十数年を要し、そのように聴けるようになるまで、私は私でほぼ六十年の徒労を必要としたということだ。・・・・ 徹底した落伍者の眼の色と声質は、たいがいはほとんど耐えがたいほど下卑ているけれど、しかし、成功者や更正者たちのそれにくらべて、はるかに深い奥行きがあり、ときに神性さえおびるということなのだ。」

ラヴ・ソング

チェット・ベイカー / BMG JAPAN



もう晩年のチェット。1987年というから死の1年前。老残と鬼気と神聖とが表裏一体になって迫る ・・・・。
「Chet Baker - I'm a Fool to Want You (Paris,November,1987)」  Film:"Chet's Romance" by Bertrand Fèvre.

          

この「I'm a fool to want you」を聴いたら「鳥肌もの」という、もう一枚のアルバムがある。「ビリー・ホリディ」。アルバムは「レディ・イン・サテン」。このアルバムも、亡くなる前年の1958年の録音。体はぼろぼろで、声は衰え痛々しいほどだが、気力をふり絞って歌う。これはもう執念としかいいようがない。死を目前した超新星のような一瞬の輝きか残照か。しかし、「恋は愚かというけれど」という邦題では、この歌の持つ深いせつなさや哀しみは表わせない。

レディ・イン・サテン+4

ビリー・ホリデイ / ソニーレコード



「Billie Holiday- I'm a fool to want you」

          
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by knakano0311 | 2009-09-15 09:37 | 60歳過ぎたら聴きたい歌 | Trackback | Comments(0)

JAZZ的トリビア(9) ~ 総理大臣は何を歌ったか ~

次期総理の座を確実にしている民主党代表・鳩山由紀夫氏。その夫人「幸(みゆき)」さんは元タカラジェンヌであり、夫婦でオペラなどに参加し、歌っている映像がTVで紹介されているが、幸さんの歌唱力は結構たいしたものであることが、映像からわかるし、そして由紀夫氏も音楽好きらしいこともうかがえる。ある記事からの転載ですが、由紀夫氏に関する音楽的トリビアを一つ紹介しましょう。

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鳩山代表が約20年前に“歌手デビュー”していたレコードがヤフーネットオークションに登場。4日に入札開始価格1000円で出品され、6日夜、3万5012円で落札された。
曲名は「Take HEART 翔びたて平和の鳩よ」。北海道室蘭市の歯科医、浅沼晃明さん(65)が作詞作曲し、1988年に限定約100枚を自費で制作。後援会関係者に寄贈した。

当時、趣味で音楽活動をする一方、鳩山代表の後援会にも所属。87年夏ごろ、衆院議員になって間もない鳩山代表から「“鳩山音頭”を作ろうと思っている」と相談を受けた。名門の出で、都会的な雰囲気を兼ね備えるだけに、音頭は似合わないと思い「イメージソングの方がいい」と提案した。曲はグループサウンズ風で、誰もが歌えるよう比較的狭い音域に仕上げた。レコーディングではすぐにOK。「だいぶ歌い込んでいるようでした」と振り返る。

「HEART」は「鳩」をかけた。曲名は訳すと「勇気づける」。浅沼さんは「この歌にスポットが当たる日が来るとは」と感慨深げ。「歌詞に込めた、みんなを幸せに導くという思いをぜひ実現してほしい」と願っている。
「09月07日付けのスポニチから」

3万5千円で落札するとは、物好きな御仁もいるものです。それはさておき、一国の総理大臣が音楽が好きであるということは大変いいことです。小泉元総理のプレスリー好きは有名、福田元総理はクラシック好き、安倍元総理は、ザ・ワイルドワンズの「思い出の渚」が好きなんてどこかで見た記憶があるが、さて麻生総理(現時点では)はというと残念ながら聴こえてきませんな。細田幹事長がピアノを弾いている映像を見た記憶もあるが・・・・。さて、時の人「鳩山」氏は氏のHPによると、クラシック音楽鑑賞となっている。やはり華麗なる一族、あの音羽御殿にはやはりクラシックがお似合いか。クリントン米国元大統領はSAXを演奏するし、ローリング・ストーンズのNYチャリティ公演をプロモートするほどのファンらしい。政治家とて人間、当然好きな音楽やアーティストはあるでしょう。JAZZ好きの日本の政治家もいるとは思いますが、さて・・・。

私が注目しているのは、むしろファースト・レディの方である。オバマ大統領夫人「ミシェル」さんはシカゴ出身であるからして、JAZZ、ブルースへの理解や関心が深いと思われるし、サルコジ仏大統領夫人の「カーラ・ブルーニ」さんは、イタリア出身、スーパーモデルを経て、人気シンガーソングライターとなった人。エリック・クラプトンやミック・ジャガーなどと浮名を流したともいわれるファーストレディ。わたしもファンでCDを持っているし、このブログでもとりあげたこともあるほど。(「異世界から舞い降りたミューズ(2)天のあたえた二物」、「おいおい、何してくれるんや!~今週の芸能ニュースから~」参照)
そして、鳩山由紀夫夫人「幸」さんは、かってタカラジェンヌというプロのミュージカル女優。TVでプロフィールを拝見する限り、かなり天衣無縫、自由闊達ながら芯が通った女性のようで、これならば世界のファースト・レディに十分対抗できる魅力的なキャラ。これは楽しみな展開になってきたぞ・・・。

では、フランス大統領令夫人のアルバムを謹んで・・・。

ケルカン・マ・ディ ~ 風のうわさ
カーラ・ブルーニ / V2レコーズジャパン/コロムビアミュージックエンタテインメント
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by knakano0311 | 2009-09-12 13:45 | JAZZ的トリビア | Trackback | Comments(0)