ノーベル平和賞を授与するのは、スウェーデンではなく、ノルウェー。ということで、ノルウェーのご贔屓ピアニスト、「トルド・グスタフセン/Tord Gustavsen」のカルテットの演奏する「Eg Veit I Himmerik Ei Borg」を。「天にある砦を知っている」という意味のトラディショナル聖歌で、ノルウェーではよく知られている曲だという。アルバム、「Extended Circle」(2014)から。
今宵の曲。存分に「フェイク」を味わいましょうか。さて、こんなアルバムがあります。2005年に夭折したサンパウロのシンガー・ソングライター、「ホドリーゴ・ホドリゲス/Rodrigo Rodrigues」が遺した、アコースティック・ギターで弾語られる美しくも哀しいスタンダード・カヴァー集、「フェイク・スタンダード/Fake Standards」(2007)。そこから、スタンダードを2曲。「Get Along Without You Very Well」、「Cry Me a River」。
【 I Get Along Without You Very Well 】 by Hoagy Carmichael , Jane (Brown) Thompson
「♪ I get along without you very well, あなたなしでもうまくやっているよ Of course I do, もちろんうまくね Except when soft rains fall でもダメね、優しい雨が降って And drip from leaves, then I recall 木の葉から滴がこぼれると貴方を思い出すの The thrill of being sheltered in your arms. 貴方の腕に抱かれた時のあのときめきを Of course, I do. そうだけど、もちろんうまくやっているわ But I get along without you very well. 一人でもね
ということで、欧州ジャズ・ピアニスト・オン・パレードによる「欧州Jazzy城紀行」。まずは、「スウェーデンの城/Chateau en Suede」。「ヨーロピアン・ジャズ・トリオ/European Jazz Trio」のアルバム、「Chateau en Suede (スウェーデンの城)」(1989)から。そして、「ケニー・ドリュー・トリオ/Kenny Drew Trio」の演奏でも。「Recollections/欧州紀行」(1989)から。フェイクの妙を聴き比べるのも一興。
さて、城紀行もそろそろ終わりに近づいてきました。異色の組み合わせによるコラボも聴いてみましょうか。これまたご贔屓のノルウェーのピアニスト、「トルド・グスタフセン/Tord Gustavsen」。コラボ相手は、ドイツ生まれのアフガニスタン系女性ボーカル、「シミン・タンデール/Simin Tander」。グスタフセンの全アルバムに参加している盟友、「ヤーレ・ヴェスペシュタ/Jarle Vespestad」を加え、ピアノ、ドラムスに女性ヴォーカルが加わった変則的なトリオ編成の演奏で「A Castle in Heaven」。アルバム、「What Was Said」(2016)から。アップしているのは、アムステルダムでのライブ。「シミン・タンデール」は語るように歌う。静かに浮かび上がる声。神秘的なパシュトー語の響き。イスラムとキリスト教文化の融合。
「レイ・ブラッドベリ―/Ray Bradbury」が好きだった。短編集「10月はたそがれの国/The October Country」。日本語版が発刊されたのが、1965年、発刊。高校入学したてのまだ子供だった私だが、友達に勧められたこの本の、蠱惑的なそのタイトル、イラストレータ、「ジョー・マグナイニ/Joseph Mugnaini」の表紙絵(日本語初版の表紙は原著と同じイラスト)、挿絵に強く惹かれ、その後「レイ・ブラッドベリ―」のファンになっていった。「10月」という言葉に私は特別の魅惑的な響き、あるいは郷愁にも似た感傷を感ずるのは、青春時代に読んだこの本の影響が多分にある。
さて、今宵の歌は、「When October Goes」。「10月が過ぎ去ると ・・・」そんな意味でしょうか。「バニー・マニロウ/Barry Manilow」自身の作曲になる彼のヒット曲。「ミスター・アメリカ」と呼ばれ、「Moon River」、「酒とバラの日々/The Days Of Wine And Roses」などでオスカーをとった、「ジョニー・マーサー/Johnny Mercer」(1976年没)の作詞である。マーサーの妻が彼の死後、遺品を整理していた時にこの詩を偶然見つけ、そのとき直ちに「マニロウに曲をつけて歌ってもらおう」というインスピレーションが閃いたそうである。
この歌は、1984年ポピュラー畑の彼にしてはJAZZ・ブルース色の濃厚な、全曲オリジナルで構成されたアルバム、「2:00 AM Paradise Cafe」(1984)に収録されている。これからの秋の夜長、グラスを傾けながらゆったり聴くにはぴったりの一枚であろう。まるでニューヨークあたりの小さなジャズ・クラブの片隅に居るような気分に浸れる極上のジャズ・バラード・アルバム。
【 When October Goes 】 by Johnny Mercer / Barry Manilow
「♪ And when October goes そして、十月が過ぎ去ると The snow begins to fly 雪が降り始める Above the smokey roofs 煙たなびく煙突の上を I watch the planes go by 飛行機が飛んでゆく The children running home 子どもたちは家路へと急ぐ Beneath a twilight sky 暮れなずむ空の下 Oh, for the fun of them なんと楽しかったか When I was one of them 私もそんな子供達の一人だった
And when October goes そして、十月が過ぎ去ると The same old dream appears あの夢がよみがえる And you are in my arms 今あなたは私の腕の中で To share the happy years 幸せな時を共に味わっているが I turn my head away 私は頭を逸らせ To hide the helpless tears 流れる涙を隠す Oh how I hate to see October go ああ、十月よ、行かないで
続いては「ナンシー・ウィルソン/Nancy Wilson」。1937年生まれ、御年83歳。アメリカ合衆国、オハイオ州出身の女性ジャズ&ブルース歌手。アルバム、「With My Lover Beside Me」(1991)からのピックアップ。今までに70枚以上のアルバムをリリースし、3度のグラミー賞を受賞したレジェンド的な大ベテラン。「グラミー賞・ベスト・ジャズ・ボーカル・アルバム」を獲得した「Turned to Blue」(2006)を最後に、2011年に引退。長い間闘病に苦しんだが、2018年12月、81歳でこの世を去った。私としては、「高倉健」主演の映画、「夜叉」のエンディングでの歌唱、「Winter Green And Summer Blue」がいつまでも心に残っている。
レトロで懐かしい歌唱は、「ローズマリー・クルーニー/Rosemary Clooney」。「Sings The Lyrics Of Johnny Mercer」(1987)から。「ジョージ・クルーニ―/George Clooney」は彼女の甥で、ジョージが出演している人気TVドラマ、「ER緊急救命室」に彼女がゲスト出演したことがある。
「♪ Old Father Time checked, 時の爺さんは、 so there'd be no doubt, もう疑いを挟む余地がないほど確かめてから Called on the north wind to come on out, 北風さんに、来てくれるよう呼ぶんだよ Then cupped his hands, 両手でメガホンを作り、 so proudly to shout, 誇らしげに叫ぶんだとさ "La-de-da, de-da-de-da, 「ラ・ディ・ダ、ディ・ダ・ディ・ダ、 'tis Autumn!". もう秋になったよぉ!」とね
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ♪」
歌うのは我がミューズ、「ステイシー・ケント/Stacey Kent 」。寓話的なこの歌を、子供に語り聞かすような優しく愛らしい歌唱。サックスは、彼女のパートナーの「ジム・トムリンソン/Jim Tomlinson」。アルバム、「The Boy Next door」(2003)から。
今宵の曲、「コンドルは飛んでいく/El Cóndor Pasa」。1970(昭和45)年に、アメリカのフォークロック・デュオ、「サイモン&ガーファンクル/Simon and Garfunkel」が、南米ペルーのフォルクローレ(民族音楽)で、「ロス・インカス/Los Inkas」の演奏に歌を乗せ、大ヒットした。「コンドルは飛んで行く」など名曲が目白押しで、名実ともに彼らの代表作であるとともに、音楽史上に残る不朽の名盤、「明日に架ける橋/Bridge Over Trouble Water」(1970)から。
【 El Condor Pasa (If I Could) 】 by Paul Simon / Jorge Milchberg / Daniel Alomia Robles
「♪ I'd rather be a sparrow than a snail. カタツムリになるよりもスズメになりたい Yes I would,If I could,I surely would. なれるものなら できるなら 本当にそう思う I'd rather be a hammer than a nail. 釘よりもハンマーになりたい Yes I would,If I only could,I surely would. なれるものなら できるなら 本当にそう思う
Away, I'd rather sail away 遠く海を渡って行きたい Like a swan that's here and gone この地に来、飛び立ってゆく白鳥のように A man gets tied up to the ground 人間は大地に縛り付けられ He gives the world 世界に向かって It's saddest sound,It's saddest sound. 悲しく叫ぶだけ 一番悲しい叫びを
I'd rather be a forest than a street. 街路樹になるよりも森になりたい Yes I would.If I could,I surely woud. なれるものなら できるなら 本当にそう思う I'd rather feel the earth beneath my feet, 足の真下に大地を感じたい Yes I would.If I only could,I surely would. なれるものなら できるなら 本当にそう思う