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大屋地爵士のJAZZYな生活

今年のじじい映画は「エレジー」が売りだ ・・・

去年、最近のじじい映画はつまらないと書いたが、今年は年始めから当たり年。共通するキーワードは、ずばり「男はエレジー(哀歌)」。

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まず、「ベンジャミン・バトン~数奇な人生~」(原題: THE CURIOUS CASE OF BENJAMIN BUTTON)。
F・スコット・フィッツジェラルドの短編小説を「セブン」の「デヴィッド・フィンチャー」監督が映画化した感動巨編。今年のアカデミー賞で最も話題となった作品。主演はご存知ブラッド・ピット。共演は「バベル」でもブラッドと夫婦役をした「ケイト・ブランシェット」。第一次世界大戦時から21世紀に至るまでのニューオリンズを舞台に、80代で生まれ、徐々に若返っていく男の数奇な運命が描かれる167分の長編大河ドラマ。

2005年8月末、あのハリケーン「カトリーナ」がすぐそこに迫り来るニューオリンズのとある病院。そこに入院している老婦人が娘に向かって、かって愛した男の回想を始めるところからこの映画は始まる。
愛した男の名は「ベンジャミン・バトン」。裕福な白人家庭の第一子として期待を一身に担って生まれたが、あろうことか、80歳の顔と体を持って生まれてしまった。その醜怪さのあまり、父親は老人施設の前に生まれたての子供を捨ててしまう。その施設の黒人の介護師の女性に拾われ、我が子として育てられる。
幼児の心と肉体を持つ老人。彼は周りの老人たちから、生きるつらさや楽しさ、死などを学び、やがて18歳のころ自立すべく放浪の旅に出る。やがて故郷に帰った彼は、美しい女性に成長した初恋の幼馴染デイジーと再会。若返ったベンジャミン。一瞬の時の交差が二人を恋に陥らせた。

観る前は荒唐無稽なシチュエーションと思ったが、映画が始まると違和感無くストーリーが展開していく。3時間近い長編であるが、飽きなかった。80代の男性として誕生し、そこから徐々に若返っていく運命のもとに生まれた男、ベンジャミン・バトンを演ずる「ビット」。運命の人に巡り会ったが、自分だけが老いてゆく不安にさいなまれるデイジーを演ずる「ケイトショー」。時間の流れを止められず、誰とも違う数奇な人生を歩まなくてはならない男と彼を愛してしまった女の悲しみが伝わってくる抑制された演技であった。不自然さを逆手に取ったストーリーではあるが、その不自然さから生ずる様々な波乱万丈に心からドキドキしてしまう。

切ないのは、逆回りする時計を作ってしまったという子供の戦死を嘆き悲しむ時計職人。いくら時計が逆回転したところで、その職人は息子を取り戻すことができるわけではないし、誰も過去をやり直せない。映画の冒頭に収められたこのエピソードが、この映画のテーマを暗喩するかのようだ。誰もが後戻りできない現実を生きている普通の人生の哀しみ。その哀しみと後戻りしながら生きざるを得ない男の哀しみの対比。しかし、結局のところ、お互いにその現実を受け入れて前向きに進むしかないのだ。

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2作目は、ノルウェイ映画、ベント・ハーメル監督「ホルテンさんのはじめての冒険」(原題: O' HORTEN)。
ノルウェーの首都オスロと第2の都市ベルゲンを結ぶ鉄道「ベルゲン急行」の運転士オッド・ホルテンさん。勤続40年のまじめな運転士ホルテンさんが、定年退職日に人生初の遅刻をしたことから巻き起こる騒動を描くハートウォーミング・ストーリーである。このホルテンさん、謹厳実直を絵に描いたような男。独身で未婚。趣味といえば、パイプ・タバコに夕食に飲む一杯のビール、小鳥の世話ぐらい。同僚たちの祝いの席に招かれた彼は、人生最後の運転をするはずだった翌朝、運転士人生で初の遅刻をしてしまったため、判で押したような毎日の生活パターンに狂いが生じ、風変わりな人々や予測不可能な出来事に遭遇する。
久しぶりに、老人施設に入っている母親を見舞い、母親が女性スキー・ジャンパーの草分けで、女性であるがゆえに数々の制約があったため、彼女が果たせなかった夢や憧れに気がつく。そんないろいろの人や騒動に出会いながら、大げさではないが、あたらしい体験や決断を日常の中で積み重ねていく・・・。

ホルテン役の俳優「ボード・オーヴェ」が実にいい。エレジーを感じるのだ。そして、彼の周りに登場してくる外交官を自称する男、大事な役どころで、この男の真実は終盤で明らかになるのだが、この男にもなんともいえない「エレジー」を感じてしまう。
そして、勇気と自信と希望を胸に、あたらしい人生の第一歩を踏み出そうと、ホルテンさんはベルゲンの駅に降り立った。さりげないエンディング。あたらしい人生に一歩踏み出していく勇気を与えてくれる佳作のじじい映画。

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3作目はタイトルもずばり、「エレジー」(原題: ELEGY)。私が大のファンでもあるイチオシの女優「ペネロペ・クルス」が出演しているというので見た作品。
「現代アメリカ文学の巨匠、フィリップ・ロスの短編小説「ダイング・アニマル」を映画化した大人の愛の物語。セックスから関係をスタートさせた男女が、真の愛に目覚めるまでをしっとりと描く」というキャッチであるが、教え子である「ペネロペ・クルス」が、30歳も歳の離れている、雑誌「LEON」から抜け出してきたような大学教授の「ちょいワルじじい」に惚れてしまうが、女が真剣になるにつれ、男が引いてしまうというよくある不倫劇がテーマ。やがて女性に起こる重大事・・・。ダメ男のエゴや言い訳はいつも悲しいエレジー、そんな映画でした。この若い女性の観客が多いと聞くが、一度主人公への彼女たち評価を聞いてみたいものです。我が奥さんの評価は聞かずもがな・・・。

身勝手な初老の大学教授役には「ベン・キングズレー」。美ぼうのヒロインを体当たりで演じているのは、今年のアカデミー賞にもノミネートされたスペインを代表する若手女優、「ペネロペ・クルス」。ペネロペの美貌、ヌードで見せる熟れた肉体、気品と匂い立つ艶やかさ、その存在感。どれをとっても抜群に良かったなあ。1,000円(夫婦50割引)払うだけの価値は十分ありますね。
えっ!本題の「男のエレジー」はどこへいったって?「ペネロペ・クルス」の肉体がすばらしいので、他は全て忘れました。私はといえば、少し横目で奥さんの反応を見ながらの映画鑑賞。これは「エレジー」というより、もはや・・・・。じじい一人で観るべき映画。


エレジー(哀歌)をテーマにしたソロ・ピアノ集。「Brad Mehldau/ブラッド・メルドー;Elegiac Cycle/エレゲイア・サイクル」。「繰り返しながらつながっていくエレジー(哀歌)の輪」とでもいう意味であろうか。1999年2月1・2日ロス・マッドハンター・スタジオでスタンウェイを使っての録音。ブラッド・メルドー初のソロ・ピアノ・アルバム。全ての曲をメルドー自身が作曲し、プロデューサーもメルドー自身。名前は聴いていたが、演奏を聴くのははじめて。もともと、エヴァンス派らしく、翳のある美しさ、叙情性には定評のあるピアニストらしい。まさしくエレジーにぴったりのアルバム。平穏の中に見え隠れする狂おしさ、高ぶる情感のと静謐さのバランス。少し危ない蠱惑(こわく)的魅力に満ちたピアノ・ソロ・アルバムである。
「ビル・エヴァンス」の輪につながる若きピアニストの発見・・・。  

エレゲイア・サイクル

ブラッド・メルドー / ダブリューイーエー・ジャパン



「Brad Mehldau - The Bard Returns」

          


注1)elegy [名](複 -gies)
    哀歌, 悲歌, 挽歌(ばんか);エレジー;挽歌[哀歌]調の詩
注2)elegiac [形]
    1 《古典韻》挽歌(ばんか)形式の, 哀歌体の.
    2 哀調的
    発音記号は[エレジャイアック]となっている
by knakano0311 | 2009-03-10 22:50 | シネマな生活 | Comments(0)
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