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大屋地爵士のJAZZYな生活

奇跡のシンガー・ソングライター

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(写真はMelody Gardot HPより)

何ヶ月か前のことであるが、CDショップでたまたま目についた「静寂に情熱を奏でる、奇跡のシンガー・ソングライター」というコピーに惹かれてCDを試聴してみて驚いた。JAZZYでブルージー、アコースティックでノスタルジック。あの「ノラ・ジョーンズ」や「マデリン・ペルー」を初めて聞いたときの印象に極めて近いものを感じたのだ。新人歌手の名は「Melody Gardot/メロディ・ガルドー」。アルバムは「Worrisome Heart/夜と朝の間で」。

フィラデルフィア出身、現在23歳のシンガー・ソングライター。16歳の頃、ピアノ・バーでアルバイトとして歌い始める。19歳の時、自転車で帰宅途中ジープに跳ねられ、背骨を含む数箇所の複雑骨折、神経、頭も怪我をするなどの瀕死の重傷を負い、一年間寝たきりの生活を余儀なくされる。リハビリとして医者に音楽セラピーを勧められ、曲を書き始める。病室でみずから録音した6曲入りのEP『SOME LESSONS:The Bedroom Sessions』を2005年に発表。これが話題を呼び、2006年にアルバムをインディーズからリリースしたが、その後ユニバーサルと契約し、「Worrisome Heart」が世界デビュー・アルバムとして2008年8月にリリースされた。

「Worrisome Heart(くよくよする心)/(邦題)夜と朝の間で」。スタンダート・ナンバーのカバーではなく、全編彼女のオリジナル曲で、全10曲、35分程度でちょっと短めだけど、 輸入盤¥1,140 は安い!歌詞を楽しみたい方は国内盤(1600円)がお薦め。
冒頭のブルース、タイトル曲「Worrisome Heart」から惹き込まれてしまう。ゆったりとした、ややけだるい空気の中に感じられる熱いハートと説得力。ハスキーだけどしっとりしたセクシーな歌声。20代の前半の若さながら、欝っぽい暗さだけど色っぽい成熟した女を感じる。「Quiet Fire」。このアルバム全編の印象を表すようなタイトルの曲。そして「Love Me Like A River Does」の切ない歌唱に聴き入ってしまった。

ビジネス・ウィーク誌は評していわく、
「トム・ウェイツの詩に出会ったビリー・ホリディ・・・、或いはニーナ・シモン、初期のリッキー・リー・ジョーンズ、コール・ポーターの洗練さすら思い起こさせる・・・。」

Worrisome Heart

Melody Gardot / Verve



「Melody Gardot - Love Me Like a River Does」

          

第2作目アルバムの「My One and Only Thrill」(輸入盤)は、すでに発売されているが、『マイ・オンリー・スリル』(国内盤)は4月8日にリリースされる予定。その最新作では,ストリングス・オーケストラをバックにガルドーのソングライターとしての音楽性が浮き彫りになっている。プロデューサーにラリー・クライン,アレンジャーにビンス・メンドーサを迎え,一作目と相通ずる繊細さと深みを持つガルドーの音楽の魅力が、ここでも一層鮮やかな輝きを放つ。デビュー作よりやや明るくリズミカルなアルバムとなっているが、ここでも全編オリジナルの中にあって、ただ一曲ラストのスタンダード「虹の彼方へ」は、明るい希望を感じさせる佳唱。

My One and Only Thrill

Melody Gardot / UCJ



「Melody Gardot - My One and Only Thrill」

          

交通事故の後遺症として残った視覚過敏症により、生涯サングラスを手放せなくなったという。アルバム・ジャケットの写真からも、サングラスの奥に、23才の若さながら、背負ってしまったもの重さや人生や人間に対する優しい視線を感じる。
ハスキーで独特のビブラートで優しく包み込むような歌声が魅力で、聴く人の心に深く迫ってくる奇跡のシンガー・ソングライター「メロディ・ガルドー」は、今年最初の収穫・・・。
by knakano0311 | 2009-03-31 13:46 | 音楽のチカラ | Comments(0)
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