長い間使っている家具がいくつかある。結婚以来だから、もう30数年になる。その中に、新婚当時、白木の家具に憧れて買った「IKEA」のステレオ・ベンチとチェストがあった。今となっては購入の動機は思い出せないが、漠然とした北欧への憧れか、白木の家具のもつすがすがしさが幸せの象徴に思えたか、いずれにせよ二人の生活のスタートにふさわしいと思ったからであろう。早速このベンチの上にステレオ・セットを置き、棚にはJAZZのLPレコードを詰め込んだ。やがて長男が生まれ、毎年5月には、義父から贈られた鎧兜の五月人形を、この上に飾るのが恒例であった。その長男が、レコード・プレイヤーのピックアップ・アームを折ってしまい、そこで私の「33回転の青春」が終わってしまったことは、以前ブログに書いたとおりである。その後も、このステレオベンチは、家族の成長や我が家の生活、住まいの変化に合わせ、目的を変えて色々に使ってきた。色褪せて、もう白木の面影もないベンチを見ると、我が家の来し方を感じる。購入後30数年経て、夫婦二人だけの生活となった今、LPからCDに代わったものの、再びステレオ・ベンチとして使い、ベンチは正当なる役割を取り戻したのだ。そして、チェストも大事に使っていたが、破損したため残念ながら近年廃棄せざるを得なかった。
10数年前、初めてスエーデンへ出張したとき、偶然車窓から「IKEA」の工場か直営店を見かけて、感慨がひとしお湧き上がってきたことが思い出される。
もう一つは、照明スタンドである。やや青みがかった白い台座が確か美濃焼、シェードは和紙であった。マンションを購入したときに、お祝いに頂いたものである。そのどっしりして、安定した台座が気に入って30年もの長い間、これを使っている。その間に和紙のシェードは破損したので取替え、ランプ・ソケットも同様に修理して使い続けてきた。電球色のつくる影が程よくレトロで暗く、深夜に聴くJAZZの雰囲気を盛り上げてくれたものである。
蛍光灯やLEDに比べ、省エネ性能が悪くても、新しいモノを作るのに使われた、トータルのエネルギー或いはCO2を考えると、むしろ捨てずに使い続けるのが最もエコであると思う。景気浮揚策としてのエコポイントは分かるのだが、買い替えによってトータルでのCO2削減がすすむとは限らないのだが・・・。
このブログを書きながら浮かんだ曲は、「Time After Time」、「何度も何度も・・」という意味。かってシナトラが歌った同名異曲のスタンダードではなく、POPS畑の「シンディ・ローパー」が歌い、「マイルス・デイビス」がカバーしたことで一躍有名になった曲である。1985年に発表した「You're Under Arrest」に収録されている。長い音楽生活の最後にマイルスがたどり着いたのが、本作に聴かれるポップな世界だったという。当時のマイルスは「マイケル・ジャクソン」と「プリンス」に関心を寄せていたそうで、本作でもマイケルの「ヒューマン・ネイチャー」とシンディの「Time ・・・」をカヴァーしている。本アルバムにおけるポップ・サウンドは、マイルスの一つの到達点といってもいい。
ユア・アンダー・アレスト
マイルス・デイヴィス / ソニー・ミュージックレコーズ
「Miles Davis - Time After Time」
マイルスをリスペクトしている「カサンドラ・ウィルソン」も、マイルスへのオマージュ・アルバム「トラヴェリング・マイルス」で、「Time After Time」を歌っている。今日は「トラヴェリング・・・」ではなく、今まで色々なアルバムで、彼女が歌ってきたPOPSを集めたベストポップス・コンピ版「クローサー・トゥ・ユー~ザ・ベスト・ポップ・ヒッツ・コレクション」をあげたい。シンディー・ローパーをはじめU2、スティング、ヴァン・モリソン、ニール・ヤング、ボブ・ディラン、ジミー・ウェブなどの曲を歌っているが、全体を通して聴いてもコンセプトや曲調に違和感などまったくなく、とても寄せ集めのアルバムとは思えないほどのできばえである。
クローサー・トゥ・ユー~ザ・ベスト・ポップ・ヒッツ・コレクション
カサンドラ・ウィルソン / ユーメックス
「Cassandra Wilson - Time after Time」