最近感動した「じじばば」映画3作のレポートを・・・。
最初は、『ミリオンダラー・ベイビー』以来、4年ぶりに「クリント・イーストウッド」が監督・主演を務めた人間ドラマ「グラン・トリノ」。これも面白かったが、監督のみの作品「チェンジリング」に引き続き公開された話題作。
朝鮮戦争に従軍し、過酷な経験を持つ気難しい主人公が、近所に引っ越してきたアジア系移民一家との交流を通して、自身の偏見に直面し葛藤する姿を描く。アメリカに暮らす少数民族を見つめる温かなまなざしと、いまだに気骨を失わないアメリカの男の感動物語。
妻に先立たれ、息子たちともその頑固さの故、折り合いが悪い元軍人のウォルト(クリント・イーストウッド)は、フォードの自動車工の仕事を引退して以来、単調な生活を送っていた。そんなある日、自慢の愛車「グラン・トリノ」が盗まれそうになったことをきっかけに、隣に引っ越してきたアジア系移民の、自己主張が苦手な少年タオと知り合う。やがて二人の間に芽生えた友情は、一家を襲う理不尽な暴力へと立ち向かっていく。イーストウッド演じる主人公と友情を育む少年タオにふんした「ビー・ヴァン」、彼の姉役の「アニー・ハー」などほとんど無名の役者を起用。この辺のキャスティングが実に上手いのだ。フォードの熟練工としてアメリカを支えてきた誇り、気骨、職人魂。今それらを失ってしまったアメリカの凋落、金融経済界の堕落に重なる。過去のアメリカの気骨を象徴したような、この骨太の男のラストシーンに涙を禁じえなかった。異なる価値観や文化を共有しつつも、アメリカの気骨を復活させようというイーストウッドのメッセージにも聞こえた。自らの出演作では「男の肖像」を演じつづける「クリント・イーストウッド」の圧倒的な存在感、演技、脚本、演出。どれをとっても当代随一の映画人といって差し支えない。そして、今年の「じじい」映画に流れるテーマ、「男はエレジー」をこの映画にも感じてしまった。
ラストに流れるエンディング・テーマ曲は、無類のJAZZファンで自らもピアノを弾くイーストウッドのお気に入りなんでしょう、今では希少の男性JAZZボーカル「ジェイミー・カラム/Jamie Cullum」がピアノの弾き語りで歌う「グラン・トリノ/Gran Torino」。(
ここをクリックするとエンディング曲が観られるHPへジャンプ)
【追記・註】音楽はベーシストの息子のカイル・イーストウッドが担当。
弱冠20歳という若さで異色な存在感を放つ、イギリス発の男性ジャズ・シンガー「ジェイミー・カラム」の2003年、デビュー作「Twenty Something」。スタンダードに加え、「ジミ・ヘンドリックス」、「ジェフ・バックリィ」などのカバーも含む全14曲をピアノの弾き語りにより、多彩な表情で聴かせてくれる。ジャケットでも分かるように、ちょっとワイルドだが童顔。しかしその歌声は独特の太いかすれた歌声で対照的。ピアノもうまく、「ダイアナ・クラール」などに対抗できる男性歌手として、これから大きな期待がもてそう。
Twenty Something
ジェイミー・カラム / ユニバーサルミュージック
2作目は見た人に勇気を与え、ほのぼのとした暖かい印象残す、「ばば」映画「マルタのやさしい刺繍」。
スイスの谷間の小さな村を舞台に、80歳のおばあちゃんたちがランジェリー・ショップを開くために奮闘する様を描いた人間ドラマ。閉鎖的な村人の冷たい視線や家族の反対を浴びながらも、マルタおばあちゃんと3人の女友だちが、老いてもなお生きがいを見つけ出していく。
夫の死により打ちひしがれたマルタ(シュテファニー・グラーザー)。そんな中、村の男声合唱団の新しい団旗を、仕立て屋だったマルタが作ることに。生地店で美しい生地を見ているうちに、お針子としての昔のプライドを取り戻し、かっての夢であったランジェリー・ショップを開くことを思いつく。
スイス気鋭の女性監督ベティナ・オベルリとスイスを代表する大御所女優たちがコラボレートし、年を重ねることや夢を追うことがそう悪いものではないということを教えてくれる。80才のおばあちゃんが「ランジェリー・ショップを開く」のが夢というストーリーがいい。 おばあちゃんたちひとりひとりの個性が丁寧に描かれていて、おとぎ話と感じさせないし、ユーモアもたっぷり、心温まる素敵な「ばば」映画である。
マルタのやさしい刺繍 [DVD]
CCRE
3作目は、感動の「じじばば」ドキュメンタリー映画「ヤング@ハート」。(なんと!ドキュメンタリー=記録映画ですよ)
アメリカの老人ホームを舞台にデイ・サービスを利用する平均年齢80歳のお年寄り達で結成されたロックンロール・コーラス隊「ヤング@ハート」の活動を追った音楽ドキュメンタリーである。年に1度のコンサートに向けて、「ジェームズ・ブラウン」や「ボブ・ディラン」、「ソニック・ユース」の曲を練習するメンバーたちの7週間の様子を、ドキュメンタリー作家として活躍するスティーヴン・ウォーカー監督が映し出す。自らの老いや病を見つめ、また仲間の死に直面しながら、日々を生きる老人達が、自分の世界を広げたいからと、歌った事のないパンクやロックに挑戦する姿には本当に感動する。
説明不要!、解説不要!!「生きることは歌うこと、歌うことは生きること」。これぞまさしく「音楽のチカラ」。
「ヤング@ハート 予告編」
最近待望のDVDが出ました。音楽ファンの「じじばば」は必見ですぞ!!
ヤング@ハート [DVD]
ポニーキャニオン
コンサートを目の前にしてボブを病気でなくし、ボブと二人で歌うはずだった歌を、本番のステージで、酸素吸入器を傍らに一人で静かに歌いだすフレッド。「♪ ベストを尽くしたと思ったが、上手くいかなかった時/手に入れたいと思っていたものが必要でなかった時/疲れているのに眠れないとき/そんな時は逆風の中に立つ気分 ・・・・・ /この手で君を癒してあげよう ♪」。その心に沁みてくるバラードは21世紀最大のロック・バンドといわれる「コールドプレイ/FIX YOU」。オリジナルが収録されているアルバムは「X&Y」。
X&Y
コールドプレイ / EMIミュージック・ジャパン
注)もちろん映画のオリジナル・サウンドトラックもリリースされています。
ヤング@ハート−オリジナル・サウンドトラック(ライヴCD付2枚組)
サントラ / Warner Music Japan =music=
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