妻の運転免許更新のため、隣町伊丹市の免許更新センターへ送っていった。伊丹のスーパーマーケットにはしょっちゅう買い物に行っているのに、なぜか伊丹は「街ブラ」をすることがなかった街である。ちょうどいい機会なので、街歩きも兼ね、タウン情報誌でちょっと気になっていた展覧会を観てきました。
JR伊丹駅前には、謀反を起し織田信長によって10ヶ月もの長い戦いの末、滅ぼされた戦国大名荒木村重の居城、有岡城がある。ポルトガル人宣教師のルイス・フロイスが「甚だ壮大にして見事なる城」と書き残すほどの名城であったが、荒木氏が滅んだ後は廃城となり、朽ち果てていた。近年その址のほんの一部が発掘され、公園に整備され、わずかに往時を偲ばせている。
そして、かっての伊丹郷は、灘、西宮と並んで古くからの酒どころ。現在では、「白雪」、「老松」などのブランドにその名をとどめるが、かっては36ほどの酒蔵が軒を連ねていたそうである。そんな隆盛を偲ばせるのが、国の重要文化財「旧岡田家住宅」。なんと延宝2年(1674年)築の町屋である。
住宅から店舗に改装され、北に酒蔵が増築されたのは正徳5年(1715年)、築年代が確実な現存する酒蔵としては日本最古である。住宅、釜場・洗い場、旧店舗の部分が見事に保存されており、古民家、古建築のもつどっしりとした風格、雰囲気が今なお息づいている。縁側には月見のためのススキと餅が供えられ、また建物内のあちこちには、竹の虫カゴやツボに入ったスズムシなど、秋の虫の音色が楽しめる粋な仕掛けが置かれていた。
「旧岡田家住宅」に隣接する伊丹市立美術館では、「キタイギタイ ヒビのコヅエ展 ~生きもののかたち 服のかたち~」という少し奇妙なタイトルの展覧会が開催中。現代コスチューム・アーティストとしてテレビや舞台など幅広く活躍する 「ひびのこづえ(1958-)」さんが、この夏、「虫」をテーマに新たな表現世界を展開するという企画。最初は何の展覧会だろうと思っていたが、はいってみてびっくり。身にまとうと、まるで自然の一部となったような感じのコスチューム、一見奇抜で色とりどりな虫たちのような生きもののかたちを想起させるようなコスチュームが所狭しと並んでいる。素材も自然素材というより、ポリウレタン、プラスティック・テープ、針金などむしろ人工素材。それがデザインやフォルムによって、環境にとけこむ線や色、かたち、質感を表現し、まったく元の素材を感じさせないような作品に変貌しているのだ。
(伊丹市立美術館HPより)
まるで、POPでカラフルな楽しい異次元の世界に迷い込んだようだ。だまし絵展もそうであったが、子供達の歓声もまったく気にならない。子供達が、彼女の指導によって、色々の素材で作ったユーモラスでカラフルな「虫」達も展示されている。さらに、「ひびのこづえ」氏が日々の暮らしのなかで「あったらいいな」と思ってデザインした家具(バスタブやソファーまでも)・カーテン・服・バッグ・日常の品々も展示し、殆どの展示品が購入することができる。「ひびのこづえ」の世界は、わが故郷・松本の出身で世界的なアーティスト「草間弥生」の世界や、ガウディの聖ファミリア教会(バルセロナ)の空間を連想させるものであった。そして、会場の一部でもある日本で現存する最古の酒蔵、「旧岡田家住宅」では、野田秀樹作・演出、松たか子・宮沢りえ主演の演劇「パイパー」で使用された、「ひびのこづえ」デザインによる極めてシュールな衣装が展示され、古民家と不思議に調和する空間を形作っていた。
「ひびのこづえ」の展示世界、「キタイギタイ」は、「キタイ・ギタイ= 奇態・擬態」或いは、「着たい擬態」であり、「生きもののかたち 服のかたち」は、「いきもの、きもの」の「ことば遊び」であったかと気がついた・・・。
一般的に言って、「音楽」なども非日常的空間で意識や感覚を遊ばせるという要素が強いのだが、時々何かを寓した「シュール」な歌に出会うことがある。そんな歌の一つは「paris match」の歌う「cream」。
「♪ 今宵も 私孤独りでハイウェイを湖のほとり向かう
群がる鳥振払いたくてあなたはピアノを弾いている
・・・・・・・・
せめて密やかなクリーム 恋のフィルムを乱して
銀の煙につつみ込まれ
離れていくなら そのピアノだけは
このがらんどうの部屋で 今 壊して ♪」 (作詞;古澤大 作曲;杉山洋介)
このほか、「cerulean blue」など寓意に満ちた曲ばかり収録されたアルバムは「type Ⅲ」。ときどき私はこのアルバムを聴いては非現実の世界に遊ぶ・・・。
typeIII
paris matchビクターエンタテインメント
「paris match - cream」