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大屋地爵士のJAZZYな生活

おやじのハコものがたり(1) 幻の東京オリンピック

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2016年のオリンピック開催地は、南米ブラジル、リオ・デ・ジャネイロに決定した。メディアが報じるとうり、東京・シカゴの敗因は、「南米初の」というキャッチ・フレーズの新鮮さと「開催を望む国民の熱意」の温度差であったのだろう。国或いは都市の成熟度の高い順に敗れていったことがそれを窺わせる。わが関西に関して言えば、殆ど関心がなかったといえよう。2008年の開催地決定で、大阪が北京に破れたときの招致運動に際して見せた、国、中央政府、東京の冷淡とさえ思えるような不熱心さの裏返しである。また巨費をつぎ込んでインフラを開発・整備をすすめ、またしても東京一極集中、一都市繁栄をさらに加速するだけとしか思えないような気もした。それと、「グリーン・オリンピック?」とかいうコンセプトは、何度聞いても、いまだに何故それが開催の大きな理由や売りになるのかがよく分からない。「オリンピック東京開催」でなくても、世界に日本の環境技術の優位性や環境への取り組みを訴えるのにふさわしいイベントや手段はいくらでもあるであろうに。広島・長崎開催で世界平和、核廃絶を訴えるスポーツ祭典といったコンセプトなら、よっぽど分かりやすいと思うのだが・・・・。

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そうはいっても、東京オリンピックが開催されたのは1964年。大学浪人中のときであった。受験勉強そっちのけでTVにかじりつき、興奮もし、熱狂もした。丹下健三氏設計の代々木体育館、亀倉雄策氏のポスター、市川昆監督の映画「東京オリンピック」、東洋の魔女達の活躍、裸足の英雄アベベの孤高、円谷幸吉の苦悩、へーシンクによる日本柔道の屈辱 ・・・・。そのとき起こったドラマをみんな覚えている。もちろん記念切手や記念硬貨なんかも持っている。そういえば、ピースだったと思うが、記念たばこも発売され、それが喫煙初体験であった。大学のときには、代々木体育館など五輪施設も眼にし、初めて新幹線も乗ったし、名神高速道路も走って感激もした。東京オリンピックは、以後の日本が熱気うずまく高度成長時代へ突入していくスタートラインだった。

さて、リオ・デ・ジャネイロ。ボサノバ、フォルクローレ、ラテン音楽ファンの私としては、南米・ブラジルはぜひとも行ってみたい国である。リオに駐在していた知人に聴いたところによると、ブラジルは、発展途上国に共通する問題、大変な貧富の格差、治安の悪さ、行政・政治の非効率さ、腐敗の横行などをやはり抱えているそうだ。しかし、それらを跳ね返して余りある陽気さ、明るさ、バイタリティにも溢れているという。それは、リオのカーニバルをみたら理解できる気がするが、反面、あの万事アバウトで刹那的なラテン気質は、今後ブラジル政府に様々な難題をもって立ちふさがるに違いないので、本当に開催は大丈夫だろうかという危惧も感じる。そんな本音を抱いているかもしれないブラジル政府に、「リオ・デ・ジャネイロ・ブルー(リオ・デ・ジャネイロの憂鬱)」という曲を、少し皮肉っぽいが、お祝いとして贈ろうか。
一方、東京では、今回の招致活動に途方もない巨費がかかっており、また、一向に進まないお台場開発や外環状道路建設の「てこ」として、五輪招致を利用したとの報道もされている。こちらの戦後処理は、当局にとっては頭の痛い「東京ブルー」、「石原ブルー」になりそうな気もするのだが・・・。

「♪ もう二度とあなたに会うことはない そんな気がする リオ・デ・ジャネイロの憂鬱 ・・・ ♪」と歌う恋の歌「リオ・デ・ジャネイロ・ブルー/Rio De Janeiro Blue」は、「ジョー・サンプル&ランディ・クロフォード」という最高のコンビによる極上のジャズ・アルバム「フィーリング・グッド」からがおすすめ。リズミカルで、メロディアスな名唱である。

フィーリング・グッド

ジョー・サンプル&ランディ・クロフォード / ビデオアーツ・ミュージック



「Randy Crawford & Joe Sample - Rio De Janeiro」

          

そして、ブラジルといえばボサノバ。それも、アメリカ西海岸風のソフィスティケイテッドされたボサノバでなく、ブラジルの空気や街のにおいが熱気とともに伝わってくるボサノバらしいボサノバを最近聴いた。「オスカー・カストロ・ネヴィス/Oscar Castro-Neves」の「Live At Blue Note Tokyo」である。しばらく前にブラジルにおけるボサノバ衰退の危機について書いたが、「オスカー・カストロ・ネヴィス」は、ジョビン亡き後のボサノバ界のトップに立ち、ボサノバをここまで広めてきた巨匠中の巨匠である。「ウェザー・リポート」や「リターン・トゥ・フォーエヴァー」に在籍していた「アイアート・モレイラ」、「エリス・レジーナの再来」と呼ばれるほどの表現力を持つ「レイラ・ピニェイロ」などの実力派ミュージシャンが「東京ブルーノート」に集結、熱いライブを展開した。このライブ前の記者会見で、「ボサノバは過去の音楽では?」という質問に、オスカーは「いや、進化し続けている」と答えたという。

ボサノヴァ・セレブレーション・オールスターズ ライブ at ブルーノート東京!

オスカー・カストロ・ネヴィス / スリーディーシステム



東京オリンピックと大阪万国博覧会を機にスタートを切った、右肩上がりの経済成長の中で、すさまじいコンクリート列島化、ハコもの列島化をこの国は続けてきた。そして時代は変わっても、その延長線上に胡坐をかいて、世の中の流れを見誤った自民党は惨敗を喫し、政権交代が起こった。民主党政権は「コンクリートから人へ」と税の使い道を抜本的に変えようとしている。
あの高度成長時代を通じて次々と建った鉄やコンクリートの「ハコもの」は、われわれ団塊世代みんなの人生の身近に寄り添うような形で多分存在したに違いない。「コンクリートから人へ」に逆行するようであるが、私が日々の生活の中で出会った「懐かしのハコもの」について綴る紀行を記してみたい・・・・。 




  
by knakano0311 | 2009-10-07 09:13 | おやじのハコものがたり | Comments(0)
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