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大屋地爵士のJAZZYな生活

読むジャズ(10) ~ナイチンゲールは歌う~

  (前回からのつづき)

もう一人は「浅暮三文(あさぐれ みつふみ)」、日本推理作家協会賞受賞の新感覚ミステリー「石の中の蜘蛛」。1959年生まれ。「五感」をテーマにしたミステリーを次々と発表しているが、本作は「聴覚」がテーマ。
ギターの修理を職業にする立花は、突然の事故により、音への感覚が鋭敏化し、「そこに残された音」が聴こえるようになる。彼は音を頼りにある女の消息を追い始めるのだが・・・。ストーリーには、楽器の構造、コード(和音)やコード進行に関する専門的記述も多く、作者も楽器をかなり演奏するのではないかと想像させる。

石の中の蜘蛛 (集英社文庫)

浅暮 三文 / 集英社



ミステリーの重要な手がかりとなる「そこに残された音」、その音楽がJAZZバイオリンの巨匠「ステファン・グラッペリ」のアルバム、「魅惑のリズム」に収録されているスタンダードの名曲「バークリー・スクエアのナイチンゲール/A Nightingale Sang In Berkeley Square」であった。浅暮は、グラッペリのバイオリンを評して、「弾いているのではなく、歌っている」と書いている。 
グラッペリの1956年にパリで録音されたこのアルバムは、ピアノ・トリオをバックに、小粋で時に大胆にスウィングする演奏が魅力。エスプリの効いた古き良きパリの香りが漂う名演奏で、「バークレー・スクエアのナイチンゲール」を、彼のバイオリンが、たしかに郷愁を誘うメロディを囁くように甘美に歌う。

魅惑のリズム

ステファン・グラッペリ / ユニバーサル ミュージック クラシック



「ナイチンゲール/Nightingale」は、サヨナキドリ(小夜啼鳥)、 西洋のウグイスとも言われるほど鳴き声の美しい鳥。そのため、恋の詩歌に多く登場する。ただ、その姿はあまり目撃されることはなく、美しい歌声だけが夜に鳴り響くという。そして、なぜか「墓場鳥」というあまりぞっとしない別名もある。そして「バークレー・スクエア」は、ロンドンにある有名な広場であるが、すぐ近くには、イギリスで一番呪われた幽霊屋敷といわれてる有名な50番地がある。著者・浅暮がこの曲を選んだのは、そんなゴシックな背景があったからかもしれない。

「私達が出会ったあの夜は、マジックな雰囲気が漂っていた 天使達はリッツで食事をし、ナイチンゲールはバークレー広場で歌っていた ・・・」と歌いだされる美しい曲「バークレー・スクエアのナイチンゲール」は、「エリック・マシュウィッツ/Eric Maschwitz」作詞、「マニング・シャーウィン/Manning Sherwin」作曲である。ボーカルで聴きたい方には、「アニタ・オディ」の歌唱が有名であるが、ここでは、わがナイチンゲールの一人、「鈴木重子/Close Your Eyes」をあげておきましょう。ジャズ、POPSの名曲を、ピアノ、ギター、ベースのドラムレスのトリオをバックに歌う。選曲の良さにくわえ、バックのしっとりとした渋めの演奏のなかで、鈴木の癒しの歌声が流れる。 

クローズ・ユア・アイズ

鈴木重子 / BMG JAPAN



with you

鈴木重子&木住野佳子 / SMJ



「鈴木重子&木住野佳子 - バークレー・スクエアのナイチンゲール」

         
by knakano0311 | 2009-12-23 09:34 | 読むJAZZ | Comments(0)
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