ミステリーの重要な手がかりとなる「そこに残された音」、その音楽がJAZZバイオリンの巨匠「ステファン・グラッペリ」のアルバム、「魅惑のリズム」に収録されているスタンダードの名曲「バークリー・スクエアのナイチンゲール/A Nightingale Sang In Berkeley Square」であった。浅暮は、グラッペリのバイオリンを評して、「弾いているのではなく、歌っている」と書いている。
グラッペリの1956年にパリで録音されたこのアルバムは、ピアノ・トリオをバックに、小粋で時に大胆にスウィングする演奏が魅力。エスプリの効いた古き良きパリの香りが漂う名演奏で、「バークレー・スクエアのナイチンゲール」を、彼のバイオリンが、たしかに郷愁を誘うメロディを囁くように甘美に歌う。