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大屋地爵士のJAZZYな生活

観るJAZZ(5) ~ 五線譜のラブレター ~

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「コール・ポーター/Cole Porter」(1891年6月9日-1964年10月15日)というアメリカの音楽家がいます。多分JAZZの好きな人なら知らない人はいないといえるくらい有名な作詞・作曲家です。ミュージカルや映画音楽の分野で、多くのヒット曲を残し、その多くがスタンダード・ナンバーとして、いまだに多くのミュージシャンに歌い継がれている。ちょっと思い出すだけで、「Anything Goes」、「Love For Sale」、「Night And Day」、 「Begin The Beguine」、「I Love Paris」 、「You'd Be So Nice To Come Home To」、「So In Love」、「It's Alright With Me」・・・・・などがすぐ浮かんできます。

インディアナ州生まれ。6歳でヴァイオリンを、8歳でピアノを習う。イェール大学卒業後、ハーバード大学に入学するが、最終的に音楽家としての道を選ぶ。1915年、ブロードウェイ・ミュージカルに楽曲提供し、本格的に作曲家として活動を開始する。しかし、なかなか成功せず、1930年、ミュージカル「ザ・ニューヨーカーズ」に後年スタンダードとなる「ラヴ・フォー・セール」等の楽曲を提供、やっと成功を収めた。そして、1932年にはミュージカル「陽気な離婚(Gay Devorce)」が大ヒット。ここで「フレッド・アステア」が歌った「ナイト・アンド・デイ」は、コールの代表曲の一つとされる。1936年には映画「踊るアメリカ艦隊」に「イージー・トゥ・ラヴ」等を提供し、映画音楽の分野にも進出。1948年、ミュージカル「キス・ミー・ケイト」が大ヒットし、トニー賞を受賞。1958年には怪我が原因で右足に潰瘍ができ、手術を繰り返した末に切断して義足を付ける。その後も多くの曲を作るが、1964年、腎不全のためカリフォルニア州サンタモニカで亡くなる。(「Wikipedia」参考)

そんな「コール・ポーター」の波乱の半生を描いた映画があります。アーウィン・ウィンクラー監督、ケビン・クライン主演「五線譜のラブレター/DE-LOVELY」(2004年公開)。

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1920年代のパリ。この地で遊学の日々を送っていた「コール・ポーター」は、社交界の集まりで、「パリで最も美しい離婚女性」と讃えられた「リンダ・リー」と運命の出会いを果たす。ここから物語は始まります。デートを重ねるふたり。交際を始めてまもなく、ポーターは、自分のバイセクシュアルをリンダに告白するが、彼の音楽の才能と優しさに惹かれていたリンダは、そのことを少しも気にとめず「独立したカップルとして、ふたりで夢をかなえましょう」と受け入れ、ポーターは、彼女との結婚を決意する。

ホテル・リッツで豪華な結婚式をあげたあと、ポーターとリンダはヴェネチアに移り、新婚生活をスタートさせる。しかし、作曲活動のスランプを、バレエ・ダンサーとの情事で埋め合わせるポーター。そんなとき、リンダは人気作曲家の「アーヴィング・バーリン」をアメリカから招く。ポーターの才能に驚いたバーリンは、早速ブロードウェイ・ミュージカルの仕事をポーターに紹介する。「自信がない」とためらうポーターを、「絶好のチャンスよ。人生が変わるわ」と励ますリンダ。その予言どおり、ミュージカルを大成功させたポーターは、一躍売れっ子音楽家の仲間入りを果たしたのだが。
コール・ポーターの同性愛、大成功に伴う享楽的な生活の連続の中、リンダはいったんはコールと別れ、一人パリへ戻っていった。しかし1937年、コールが思いもかけない落馬事故によって、両足切断か、という大怪我に見舞われたことによって、再びリンダはコールにとってかけがえのない女性となった。そんなリンダは、コールに先立つ1954年、肺気腫によって死亡。

映画の中では19曲のポーターの名曲を聞かせるが、アカデミー賞俳優「ケビン・クライン/Kevin Kline」がコール・ポーター役を好演、プロ並みのピアノの腕前と歌を披露する。彼の妻リンダ役に「アシュレイ・ジャド/Ashley Judd」。彼女も自らピアノを弾き、見事な「True Love」を聴かせる。そして、原題は「De-Lovely」。これはポーターの曲「It's De-Lovely」にちなんだもの。そして邦題の「五線譜のラブレター」とは、何とも素敵で魅惑的なネーミングであろうか。

老いた「コール・ポーター」が過去を振り返るところから始まり、劇中劇やミュージカルがあったり、実際の映画の一シーンがでてきたり、このミュージカル風映画にはちょっと戸惑うかもしれないが、ポーターの名曲やそのエピソード満載でJAZZファンにはたまらない映画である。そして、さらに映画に登場して劇中で歌うアーティストたちが豪華で見ものである。「エルビス・コステロ」、「ダイアナ・クラール」、「シェリル・クロウ」、「ララ・フェビアン」、「ナタリー・コール」、「アラニス・モリセット」など・・・。JAZZファンには見逃せない「観るJAZZ」である。

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「コール・ポーター」へのトリビュート・アルバムは多くのアーティストによって作られている。たとえば、「エラ・フィッツジェラルド/シングス・ザ・コール・ポーター・ソングブック」(1956年)、「オスカー・ピーターソン/プレイズ・コール・ポーター」(1959年)などがその有名なものであるが、ここではまず、スタンダード・ソングのコンピレーション盤「The Very Best of Cole Porter」をあげておきましょう。
「Ella Fitzgerald」、「Peggy Lee 」、「Tony Bennett」 、「Sarah Vaughan」、「Dean Martin」、「Helen Merrill」、「Eartha Kitt」、「Billie Holiday」、「Mel Torme」、「Anita O'Day」、「Dinah Washington」、「Carmen McRae」、「Fred Astaire 」・・・、これだけの豪華メンバーが集まって「コール・ポーター」を歌うというのも、ちょっとした聴きもの。

The Very Best of Cole Porter

Cole Porter / Hip-O/UTV



そして、若手、今最も旬で私が好きなピアノ・トリオである「ビル・チャーラップ」率いる「ニューヨーク・トリオ」のトリビュート盤は「ビギン・ザ・ビギン~コール・ポーターに捧ぐ」。チャーラップのピアノはスタンダード・ソング、いわゆる「歌」ものの解釈が抜群である。この歌心は当然ながらチャーラップ一人によるものではなく、他の二人、特にベースの「ジェイ・レオンハート」の技によるところが大きい。このアルバムは、NYトリオの極めつけの「歌もの」である。

ビギン・ザ・ビギン~コール・ポーターに捧ぐ

ニューヨーク・トリオ / ヴィーナス・レコード



ジャズ・ボーカリストにとって、スタンダード中のスタンダードである「コール・ポーター」のソング・ブックに挑戦するということは、想像以上に大変なことではないだろうか。女性ボーカルのこれまた旬の「シェリル・ベンティーン」。いわずと知れた「マンハッタン・トランスファー」のソプラノ・ボーカルである彼女は、これまでにもいくつかのソロ・アルバムをリリースしているが、気力・歌唱力ともに最も充実している彼女が「コール・ポーター」に挑んだ・・・。

コール・ポーター ソング・ブック

シェリル・ベンティーン / キングレコード



ポーターの曲の中で、とりわけ甘美なメロディを持つ曲が「So In Love」。テレビ番組「日曜洋画劇場」のエンディング・テーマといえば、ご存知の方も多いのではないだろうか。私が好きなポーター・ベスト3に入る曲でもある。1928年ニューヨーク生まれの白人で、今年で御年82歳になる「ジーン・ディノヴィ」が甘美に華麗に奏でる「So In Love」。枯れるどころか、その甘美な艶と甘さにますます磨きがかかる。華麗にして踊るようなタッチ、流れるような指使いから紡ぎ出される旋律。このピアノタッチの心地よさは何だろうか。まさに「酔いしれる」とはこのこと。

ソー・イン・ラヴ

ジーン・ディノヴィ / エムアンドアイカンパニー



「So In Love」の女性ボーカルを一枚あげておきましょう。フィンランドから白夜の夏を吹き抜けてきた凛とした風。北欧女性ヴォーカル、「ソフィア・フィンニラ/Sofia Finnila」の「EVERYTHING I LOVE」。シベリウス音楽院で声楽を学び、1999年にフィンランドで開催された国際ジャズ・シンガー・コンテストで優勝し、フィンランドで着々と実力を重ねたキャリアの実力派。CDショップで1曲目「Cheek To Cheek」、2曲目「So In Love」を試聴して惹き込まれてしまった。ストリングスのバックでボサノバが甘美に流れる。

EVERYTHING I LOVE

ソフィア・フィンニラ / ZOUNDS



最後に映画のシーンから「ケビン・クライン」と「アシュレイ・ジャド」のうたう「So In Love」をどうぞ。


          
by knakano0311 | 2010-02-19 10:35 | 観るJAZZ | Comments(0)
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