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大屋地爵士のJAZZYな生活

ボサノバはお好き?(5) ~ フェイク・ボッサこそワールド・ボッサ ~

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この地上で樹が切り倒されるごとに、その樹はきっと別の場所で、
どこか他の世界で再び成長するのだと、私は信じている。
だから、死んだら、
私はそこへ行きたい。
森たちが平和に暮せるその場所へ。
     アントニオ・カルロス・ジョビン
(青土社刊;アントニオ・カルロス・ジョビン~ボサノヴァを創った男 より)



わたしが勝手に分類したボサノバの4つのカテゴリー、最後は、「フェイク・ボッサ/Fake Bossa」です。聴きなれない言葉かもしれませんが、「fake」とは、「偽の、偽造の、でたらめな、いんちきの」というような意味です。ちゃんとした定義は分かりませんが、ブラジルで生まれた正統派のボサノバ、クラシック・ボッサ以外の音楽、スタンダードJAZZ、シャンソン、POPS、歌謡曲・・・などをボサノバ・アレンジで演奏された音楽の総称を言うようです。従って、大変範囲も広く、懐も深く、カフェ・ブーム以降、ボサノバ人気が続いているといわれますが、巷に流れるボサノバやヒットしたアルバムの殆どが、そしてJAZZボッサもフレンチ・ボッサまでもが、この範疇に入ってしまいますが、JAZZプレーヤーやフランス人アーティストの演奏するボサノバは、どうも特別に分けているようです。

この「フェイク・ボッサ」、その歴史は古く、ボサノバが世界に広まった60年代に起源があると私は考えていて、そしてその元祖は、当時一世を風靡した「セルジオ・メンデスとブラジル’66」だろうと思っています。
「セルジオ・メンデスとブラジル’66/SERGIO MENDES & BRASL'66」。1966年に発表したデビュー・アルバム「マシュ・ケ・ナダ~セルジオ・メンデスとブラジル’66/HERB ALPERT PRESENTS SERGIO MENDES & BRASIL'66」は全世界に衝撃を与えた。

「セルジオ・メンデス/Sérgio Santos Mendes(1941年2月11日 - )」はもともとジャズピアニストであり、「ブラジル’66」結成以前は、「ワンダ・ジ・サー」をリード・ボーカルにした「ブラジル’65」というグループを率いて、従来からの素朴なボサノバを演奏していた。こんな経歴の持ち主であるセルジオが1966年、「ブラジル’66」と言うグループを結成、大変身をし、デビュー・アルバムに収められた「マシュ・ケ・ナダ/Mas Que Nada」が世界的に大ヒットした。まさに天才的ヒラメキのアレンジで世界中にその名を知らしめたのである。このアルバムに収められた10曲のうち、「ビートルズ」の「デイ・トリッパー/DAYTRIPPER」など4曲が ボサノバ・テイストのポップスであり、原曲よりビートを利かせ歯切れよく、二人の女性ボーカルがクールに歌うという「セルジオ・メンデス」独特のフェイク・ボッサ・スタイルがここから始まったのだ。

マシュ・ケ・ナーダ

セルジオ・メンデス&ブラジル’66 / ユニバーサル ミュージック クラシック

 

その後も第2集、「分岐点/EQUINOX」(1967)では、JAZZスタンダードの「ナイト・アンド・デイ/NIGHT AND DAY」を、初めてオーケストラの入った第3集、「ルック・アラウンド/LOOK AROUND」(1968)では、バカラックの「恋のおもかげ/THE LOOK OF LOVE」など3曲、1969年の第4集、「フール・オン・ザ・ヒル/Fool On The Hill」では、タイトル曲に加え、「スカボロー・フェア/SCARBOROUGH FAIR」など3曲が収録されている。 ビートルズの「フール・オン・ザ・ヒル」や「デイ・トリッパー」といった曲をボサノヴァ風にアレンジしたカバーなど、欧米の音楽市場にとって親しみやすいボサノヴァをつくり、世界中での支持につながった。このことからも「セルジオ・メンデス」が、「フェイク・ボッサ」の元祖と考えていいと思う。ブラジル生まれというところが面白いが、故国の音楽ボサノバを知り尽くしていたからこそかもしれない。

その後、40年以上に長きにわたり、ブラジル音楽のトップに君臨する「セルジオ・メンデス」ですが、69歳の現在も活動は衰えない様で、2008年のボサ・ノヴァ誕生50周年には、ニュー・アルバム「モーニング・イン・リオ」をリリースしている。リード・トラックは、かって「マシュ・ケ・ナーダ」と並んで大ヒットした「ルック・オブ・ラヴ」。世界中から色々なミュージシャンが参加しているが、日本からは「DREAMS COME TRUE」が参加。彼らが参加した「ルガール・コムン」は、ポルトガル語コーラスとのかけあいで、「吉田美和」の日本語ヴォーカルがとても印象的。

モーニング・イン・リオ(期間限定特別価格)

セルジオ・メンデス / UNIVERSAL CLASSICS(P)(M)



それでは、なんといっても一世を風靡した「マシュ・ケ・ナダ」の演奏を ・・・。




「セルジオ・メンデスとブラジル’66」がPOPS的にアプローチしたのに対し、同時期JAZZ的にアプローチしたのは、「ゲイリー・マクファーランド/Gary Mcfarland」であった。私は彼も「フェイク・ボッサ」の元祖の一人だと考えている。「ゲイリー・マクファーランド」といえば、かって「渡辺貞夫」がバークリー音楽院を卒業後、所属していたのが、彼のバンドであり、ここでナベサダはボサノバと出会ったのだ。ジャズ・ヴィブラフォン/マリンバ奏者で、作編曲家でもあるゲイリーは、ブラジル’66デビューのすでに一年前、1965年3月に「ソフト・サンバ/Soft Samba」というアルバムをリリースしている。後の「スムース・ジャズ」を暗示させるような秀逸のタイトルもさることながら、収録されている曲とアレンジが極めて斬新であった。「シー・ラヴズ・ユー」、「ハード・デイズ・ナイト」、「アンド・アイ・ラヴ・ハー」、「抱きしめたい」と、当時絶頂期の「ビートルズ」の曲が4曲、映画音楽「ロシアより愛をこめて(007危機一発)」 、「モア(世界残酷物語)」、スタンダード 曲「グッド・ライフ」、シャンソン「ラ・ヴィ・アン・ローズ(バラ色の人生)」といった選曲とJAZZ風の洒落たボサノバ・アレンジ。なんと、45年も前のことなのである。

ソフト・サンバ

ゲイリー・マクファーランド / ユニバーサル ミュージック クラシック



そのアルバムから「A Hard Days Night」を ・・・・。




多くの大ヒット曲を持つ世界的なアイドルだったためだけでなく、その音楽性が極めて優れていたため、フェイク・ボッサの初期からビートルズの曲の採用が多いようです。その傾向は今でも変わらず、多くのビートルズ・フェイク・ボッサ・アルバムが作られています。そのなかの私のお気に入りの一つを紹介しましょう。ムタンチスのリード・ヴォーカルであり、ブラジル・ロック界のカリスマ、「リタ・リー/Rita Lee」の「ボッサン・ビートルズ/Bossa'n Beatles」。「A Hard Day's Night」、「Michelle」、「I Want To Hold Your Hand」などおなじみのビートルズ曲が軽快なBOSSAのノリで歌われる。何故か数曲がポルトガル語なのもご愛嬌。

ボッサン・ビートルズ
リタ・リー / ワードレコーズ
ISBN : B0007WADLW


「リタ・リー/Rita Lee」が歌う「ミシェル/Michelle」。




「ビートルズ」だけではなく、色々のミュージシャンのヒット曲もボサノバ化されています。あの「ローリング・ストーンズ」、「ボブ・マーレー」、「マイケル・ジャクソン」なども・・・。手当たり次第といっては失礼かな。まあ、ストーンズも「毒気」はすっかり抜けて、甘くかったるくなってしまっていますが。なに、本当は「ジャケ買い」だろうって?

Bossa n' Stones, Vol. 2
Various Artists / / Music Brokers
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(次回に続く)
by knakano0311 | 2010-03-05 09:16 | サウダージ | Trackback | Comments(0)
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