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大屋地爵士のJAZZYな生活

笑えない話  ~ 映画・人生に乾杯! ~

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じじばば映画の佳作をDVDで観た。年金にはもう頼れなくなった老夫婦が、幸せをつかみ取るために強盗をかさね、その逃避行を描いたハンガリー映画である。ハンガリーで熱い支持を集めたというコミカルでハート・ウォーミングなストーリーの快作。邦題はややベタ過ぎる感があるが、「ガーボル・ロホニ」監督の「人生に乾杯!/Konyec」(2009年日本公開)。

かって運命的な出会いを経て結婚し、今や81歳となった腰痛持ちの夫エミル(エミル・ケレシュ)と、インシュリンが欠かせない70歳の妻ヘディ(テリ・フェルディ)の老夫婦。恋していた頃のことなどはもうすっかり忘れた二人は、年金だけでは暮らしていけず、借金取りに追われる毎日。出会いのきっかけだった思い出のダイヤのイヤリングも借金のカタに取られてしまう始末。高齢者に冷たい世の中に怒りを覚えたエミルは、イヤリングを奪い返すために持病の腰痛を押し、かって共産党幹部の運転手をしていたときの愛車で、ずっと手入れをしていた馬力だけは負けない愛車「チャイカ」を20年ぶりに飛ばし、手に愛銃「トカレフ」を握って、紳士的強盗を重ねていく。一度は警察に協力したヘディだが、奮闘する夫の姿にかつての愛しい気持ちを思い出し、手を取り合って逃げる決心をする。二人の逃避行は、やがて民衆をも巻き込んで、思いもかけない展開に ・・・ 。「ただ息子の墓詣でと海が見たかった」と言い残して警官隊の包囲網に突っ込んでいくラスト・シーン。だが ・・・ 。

じじばば版「俺たちに明日はない」、「テルマ&ルイーズ」のような作品であるが、ソ連共産主義崩壊後のハンガリーの現状に疑問を投げかけるとともに、現在の東欧諸国の実態の一端が垣間見える。この映画はハンガリーだけでなく、旧共産圏東欧諸国で多くの支持や共感を得たという。解決すべき社会問題を浮き彫りにしながら、心温まるストーリーを展開するこの佳作は、現代の日本に通じるテーマ。心温まる一方で、とても笑い話ではすまされない話でもある。日本でも近い将来こんな老夫婦が出てこないとは言えないのだ。

人生に乾杯! [DVD]

東宝



ハンガリー出身のJAZZピアニストといえば「ロバート・ラカトシュ」。澤野工房の最近の収穫であり、いまやレーベルを代表するピアニストとなった。相撲取りのような体格でありながら、そのシャイな人柄と繊細な指先から紡ぎだされる調べは、美メロでありながら、一本しっかりした筋が通っている。「So In Love」、「Allemande」、「Zingaro」など美メロ満載のアルバム。

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So In Love /Robert Lakatos  澤野工房
 
 
  
 
 



 
by knakano0311 | 2010-05-23 09:40 | シネマな生活 | Comments(0)
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