秋の番組改編期を迎え、各TV局とも新番組が一斉にスタートした。新番組への移行期は、各局ほとんど同じような番組で、お笑い芸人を使ったバラエティか、衝撃の映像XX発といった、金も知恵も使わないような番組、あるいは新聞のTV欄を見ただけで見たいという気持ちが萎えるような番組のオンパレードであった。改編された新番組も少し見てみたが、二、三の番組を除いては、いずれも目新しさを感じず、結局今までと同じように、ニュース、朝の連ドラ、大河ドラマ、衛星放送かハイビジョンのドキュメンタリーぐらいしか見たいものがないという状態が続きそうである。その替わり、圧倒的に我が家のTV主流となっているのがDVDのディスプレイとしての機能である。
ツイッター、スマート・フォン、電子ブック、i-Pad、体験型ゲーム、3Dテレビ、地デジ化、ワンセグなどテレビ番組そのものではない周辺の部分での技術革新や高品質化がどんどん進む中で、テレビ番組そのものに感じる、この置き去り感、取り残され感は一体何なんだろうと思う。TVがつまらなくなったと感じるのは私だけだろうか?
我々の少年時代、家庭へ白黒TVが導入された時代は、番組の始まるのが待ちどおしく、TVの前で座って待っていたり、TVのない家の子どもは、ある家に観せてもらいに行っていたくらいTVにわくわくしていた。その時代は、もちろん技術的には、今に比べてはるかに稚拙であり、画質も圧倒的にお粗末であったにもかかわらず、なぜあんなにもTVに熱中できたのだろうか。まだTVずれしていない、新しいメディアの受け手である側の我々が欲するものを、作り手側がしっかりと投げてくれたからである。つまり、技術ではなく、見たい側の思いと、見せたい側との思いが一致していたのだ。
我が家にTVがきたのは、小学生5年生か6年生の頃ではなかったろうか。それから中学生の間の4、5年が私がもっともテレビに熱中した時期であり、当時夢中になったヒーローは、アニメ・ヒーローでも特撮着ぐるみヒーローでもない、実写TV映画のヒーローであった。「月光仮面」、「快傑ハリマオ」、「隠密剣士」である。
「月光仮面」は、「川内康範」原作で、現TBSテレビで、1958年(昭和33年)2月から1959年(昭和34年)7月まで放映された、日本初のフィルム製作による連続冒険テレビ映画であった。「大瀬康一」扮する「祝 十郎(いわい じゅうろう)」という私立探偵が、様々な事件を追う。彼が消えた途端に月光仮面が現れ、事件を解決することから、「祝十郎=月光仮面」を暗示していた。その「月光仮面」のコスチュームがすごい。全身白づくめのタイツ姿にターバン、サングラスといういでたちでオートバイに乗って颯爽と現れる。今考えれば、異様あるいは不思議としか言いようのない扮装であるが、当時はそれを格好いいと感じて熱狂し、そのコスチュームを子ども達は皆、自分で工夫して作ったものである。
「快傑ハリマオ(注:
怪 傑ではない)」は、1960年4月から1961年6月まで日本テレビ系列で放送されていたテレビ映画。なんといっても舞台の設定が東南アジアというのが面白い。抑圧される東南アジアの人々を解放すべく、正義の使者「ハリマオ」が活躍するという物語。太平洋戦争前後にマレー半島で日本軍に協力し、「マレーの虎」と言われた「谷豊」をモデルに制作されたという。頭を白いターバンで巻き、黒いサングラスをかけた姿で部下達と共に颯爽と登場する。武器は拳銃で、走る列車の屋根の上などでのアクション・シーンは、スピーディで斬新であった。主演は、「勝木敏之」、「ハリマオ」とは、マレー語で 虎のことである。
「隠密剣士」は1962年から1965年までTBS系で放映された連続テレビ時代劇。主人公は、徳川11代将軍家斉の異母兄弟という「秋草新太郎」。主演は「月光仮面」と同じ「大瀬康一」であった。時代劇なのに潜水艦が出るなどの奇抜なストーリーや、「忍者の動き」や「刀の構え」、「卍型手裏剣」等、細部にわたって盛り込まれたアイデアが面白く、以後の忍者映画の定番ともいえるスタイルをこのとき確立していたともいえる。「霧の遁兵衛」こと「牧冬吉」など、TVから新しいキャラクターやスターが生まれたのもこの頃である。多分予算などは大きな要素ではなく、作り手が面白いものを作りたいという情熱が、様々なアイデアや効果、特撮を生み出していったのではないだろうか。
さて、今夢中になっているTV映画があります。米国TV映画シリーズの「フリンジ/FRINGE」と「ヒーローズ/HEROES」。オカルト的な科学や超能力という、私はあまり信じていないカテゴリーのストーリーに、見事にはまってしまったのは、子どもの頃に見たあのヒーローたちが登場したTV映画と同じように「次はどうなる?」という「わくわく感」があるからでしょうか。いずれも新しいシーズンのDVDリリースが始まり、夜出かけることはまずない私にとって、またDVD漬けの夜が続きそうである。
FRINGE / フリンジ 〈ファースト・シーズン〉Vol.1 [DVD]
ワーナー・ホーム・ビデオ
HEROES シーズン1 DVD-SET 1
ジェネオン・ユニバーサル
今年は「ブルース・リー/Bruce Lee、李 小龍」(1940年- 1973年)の生誕70周年。彼の特集をTVでやっていたが、「燃えよドラゴン/ENTER THE DRAGON」が日本公開されたのが1973年12月。その時点で既に彼は32歳の若さでこの世を去ってしまっていた。(1973年7月20日死去)。今までとはまったく違うアクションを見せたこの映画で人気が爆発、さかのぼっての彼主演の香港映画が次々と公開された。私もそうだが、団塊の世代は、リアルタイムで彼の映画を観て、彼が「ヒーロー」となった世代であろう。そして我々の子の世代、1979年生まれのジャズ・ピアニスト「上原ひろみ」も「ブルース・リー」の大ファンであるらしい。「フジコ・ヘミング」をして、「何かを持っている娘」と言わしめた人気のジャズ・ピアニストに「ブルース・リー」へのオマージュの作品がある。「リターン・オブ・カンフー・ワールド・チャンピオン/Return Of The Kung-Fu World Champion」である。2005年の「ジャズディスク大賞 日本ジャズ賞」を受賞したサード・アルバム「スパイラル」に収録されているほか、ライブなどでもよく演奏されるという。
スパイラル(通常盤)
上原ひろみ / ユニバーサル ミュージック クラシック
私のような年をとったJAZZファンには、なかなかついていけませんが、一応紹介してきましょうか。
「上原ひろみ/Return Of The Kung-Fu World Champion」。
Hiromi Uehara - piano & keyboard、Tony Grey - bass、Martin Valihora - drums