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大屋地爵士のJAZZYな生活

夢はかなうのか ・・・ ~両腕のないピアニスト~

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もうすでに知っている人もいるでしょうが、TV番組でから得た「音楽のチカラ」の情報。

中国発のYOUTUBEで、今、全世界で話題になっている音楽映像がある。「リュー・ウェイ(劉偉)」、23歳の青年が、なんと両腕を失ったピアニストがピアノを弾く映像である。両腕のない彼は足の指でピアノを弾くのである。尖閣諸島問題で中止になった「SMAP」の上海公演の穴埋めとして上海体育場で開催された中国の人気オーディション番組「チャイナズ・ゴット・タレント/China's Got Talent」という公開オーディション番組で、彼が優勝したときの映像。この番組は「スーザン・ボイル」を生んだイギリスの「Britain's Got Talent」の制作会社が中国で同じようにに企画した番組である。

北京に生まれた彼は、10歳のとき、かくれんぼで遊んでいて、配電室に紛れ込み、高圧線に触れて感電し、生死の境をさまよい、気がついたときには両腕が切断されていたという。「自立して生きていくのよ」という母の言葉に励まされ、食事、文字を書くことなど一通りのことは、健常者と同じようにできるようになったという。しかし、向上心の強い彼は水泳を始め、障害者の水泳大会で何回も優勝するほど上達し、夢であった北京パラリンピックの出場を目指したが、感電のときの後遺症でドクターストップがかかる。4年前、19歳のときであった。しかし、ここで彼はくじけなかった。もうひとつの夢、「ミュージシャン」になることを目指し、ピアノを学ぼうと決心した。しかし、彼のような両腕のない障害者を受け入れてくれる音楽学校などどこにもなく、やむをえなく独学でマスターしたという。そして、今、オーディション番組で優勝し、音楽家への道が開け、世界ツアーも企画されているという。すごいのは両腕がない彼がピアノを弾くということことではなく、そのことがなくとも彼のピアノは人を感動させる「チカラ」を十分に持っているということである。

「僕はほかの人を抱きしめる幸福感を味わうことはできないけれど、ピアノの音色でも­っと幸せな気持ちになることはできる」とは彼の言葉。ファイナルでの曲は「ジェームズ・ブラント/James Blunt」のヒット曲、「You Are Beautiful」。 「リュウ・ウェイ」の演奏と歌で ・・・ 。

             
 
さて、話は日本へ。私もTVのニュース特集を見るまで知らなかったのであるが、「ヘレン・ケラー記念音楽コンクール」というコンクールがあるのをご存知でしょうか。昭和24年(1949年)に「全国で唯一の音楽でプロの道を目指す盲学生の音楽コンクール」として始まったコンクールで、当初は盲学校音楽教育の実態を知ってもらい、音楽家を志す盲学生の登竜門にするのが目的だったようだ。TVのニュース特集では、「大阪視覚支援学校」から、プロの声楽家を目指す高校生、大学生の二人の生徒に密着取材していたが、その二人の努力は「リュウ・ウェイ」さんのそれに劣らない真摯なものであった。このコンクールからは、小学4年生時にデビューしたバイオリニストの「和波孝禧」さん、同じ小学4年生時に絶賛を受けたチェンバロなど鍵盤楽器奏者の武久源造さんら、国際的に活躍する演奏家を輩出しているという。特に2009年に「バン・クライバーン国際ピアノコンクール」で優勝した「辻井伸行」さんも、このコンクールの優勝者であったためか、今年はコンクールへの参加者が急増したという。辻井氏が視覚障害者に与えた勇気と希望は計り知れないものがあったのだ。

かって日本にも、「Britain's Got Talent」ようなオーディション番組がいくつかあったのだが、最近は目にする機会はまったくない。NHKの「のど自慢」もあるが、プロへの道を開くものではない。産業界や経済界は従業員を「派遣社員」にシフトしつづけ、今年の大学4年の就職内定率は過去最悪だという。政界は苦労知らずの二世議員で占められ、新人議員が多数を占める民主党はその幼稚さを露呈している。まともに人材発掘を怠ってきた結果、若者に夢や希望、チャンスすらも与えることができなくなった日本の現状とこのオーディション番組がなくなってしまったTV界とが二重写しに見えるのは考えすぎだろうか。そして、この日本にまだ若者達の夢をかなえることができる「チカラ」はまだ残されているのだろうか ・・・・ 。

 

  
by knakano0311 | 2010-11-24 11:08 | 音楽のチカラ | Comments(0)
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