ボサノバの創始者「アントニオ・カルロス・ジョビン/Antônio Carlos Jobim」の言葉である。幼い頃にブラジルの大自然に囲まれ育った彼は、環境問題に対する関心が深く、アマゾンの熱帯雨林を保護するための活動を行っていたという。そしてジョビンの曲には自然を題材にしたり、自然に対する彼の思いを込めた曲が多くある。おいしい水 (Água de Beber / Water to Drink)、波 (Vou te contar / Wave)、三月の水 (Águas de Março / Waters of March)などはその代表であろうし、「Urubu」や「Matita Pere」などのアルバムは自然をテーマにしている。「アントニオ・カルロス・ジョビン―ボサノヴァを創った男」には、自然保護活動を含め、ジョビンの実妹エレーナが語る彼の繊細かつダイナミックな世界観のすべてが語られている。
その「アントニオ・カルロス・ジョビン」に「マイケル・フランクス/Michael Franks」が捧げた歌が、前回のブログで取り上げた「アントニオの歌/Antonio’s Song (The Rainbow)」。その歌詞には、「砂漠」、「雨」、「アマゾン」と言った言葉が出てくるので、マイケルはジョビンの自然への思いや、それが込められた歌を十分に理解していたと思う。その歌詞を読み、また改めてマイケルの歌をじっくり聴いてみて、この歌を聴いていた30数年前の頃の若さや苦さが懐かしくなった。そして、今この歌を「60歳過ぎたら聴きたい歌」にいれてもいいかなと思った。
久しぶりにアルバム「Sleeping Gypsy」をずっと流し続け、YOUTUBEで動画を検索していたら、聞いたことのない女性ジャズ歌手が歌う「アントニオの歌」が眼に留まった。歌手の名は「Live Maria Roggen」。これがまた過度にべとつかず、実にいい味なのである。初めて聞く名前で、アルバムも聴いたこともないが、ノルウェーでは最もリスペクトされているジャズ・ヴォーカリストの一人で、詩人&ソングライターでもあるという。
「 Live Maria Roggen - Antonio's Song 」。2009年8月10日、オスロ・ジャズ・フェスティバルの期間中に、オペラハウスで行われたライブ・コンサートから。Live Maria Roggen;vocal、Jon Eberson;guitar、 Arild Andersen;double bass、Jon Christensen;drums。