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大屋地爵士のJAZZYな生活

神様のカルテ

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映画を観てきた。友人から故郷・松本に実在する相澤病院をモデルにした現役医師による小説があり、それをオール松本ロケで、映画化がすすめられているということを聞いていた「神様のカルテ」。「夏川草介」によるベストセラーで、2010年本屋大賞第2位にも選出された小説である。すぐに読んでみたが、随所に松本の風景が出てくるのですっかり映画にも期待していたのだ。主演は、人気アイドルグループ「嵐」の「櫻井翔」と「宮崎あおい」。「60歳のラブレター」「白夜行」の「深川栄洋」が監督。信州の地方病院に内科医として勤務する「栗原一止(いちと)」が、写真家の愛妻・「榛名」や同僚医師、看護師、患者、アパートの個性的な住人らに支えられ、医師として成長していく姿を温かなまなざしで描いている。

神様のカルテ (小学館文庫)

夏川 草介 / 小学館



久しぶりに「ウルッ~」ときてしまった映画であった。多くの達者な役者たちが脇を固めているが、とりわけ末期がん患者・安曇さんを演じた「加賀まり子」の演技が素晴らしかった。そして、もう一つのテーマになっているのが「孤独死」、「延命治療」、「救急医療」。治る見込みの全くない患者を受け入れない大学病院。誰かに看取られてこの世を去りたいと願う患者。そして延命措置 ・・・。単なる「お涙頂戴映画」ではなく、重いテーマであるが、ごく自然な形で提示されていたように思う。モデルとなった相澤病院は、7年ほど前に脳梗塞で倒れた父親を看取ったところでもある。そんな縁もあり、父親の最後の姿と映画とがダブって、「ウルッ~」ときたのだった。自分の死に方、死後を少しは考える年齢にもなったが、映画「おくりびと」以来、この問題について、考えさせられる映画が多くなったように思う。

残念だったのは、松本の自然、特に北アルプスなど、山の映像が極めて不鮮明であったことだ。いつの時期にロケをしたかはわからないが、晴れた日はいつも、下のコンデジの写真のように、松本のどこからもアルプスはくっきりと鮮烈に見えるのである。安曇さんの死が近づいた屋上でのクライマックス・シーン。彼女の故郷である穂高の方向を眺める先には、彼女の生き方や心情とは程遠い、ぼやっとしたアルプス?しか見えなかった。

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テーマ音楽はあの盲目のピアニスト「辻井伸行」であった。その感性豊かな音色がエンディング・ロールの間ずっと流れ、いつまでも耳に残った。

孤独死を扱った映画であったが、JAZZのスタンダードに「アローン・トゥギャザー/Alone Together」という曲がある。「二人ぼっち」という名訳があったが、「♪ 人ごみの中にいても二人は孤独/この世界で一人一人で生きていく自信がない/きっと僕たち二人が一緒になれば、強くなれる ・・・ ♪」といったような歌詞。(英語歌詞は「コチラ」
「あなたと夜と音楽と」などで有名なコンビ、「ハワード・ディーツ/Howard Dietz」作詞、「アーサー・シュワルツ/Arthur Suhwartz」作曲による1932年の作品。

どちらかといえば希望のない暗い歌であるが、「Not Alone,Together」とすれば、「決して一人じゃない、みんなが助け合えば」という意味になる。「超高齢化社会」、ぜひそんな風にとらえたいものだ。

いろんなカバーがあるが、最初に挙げるとすれば「ビル・エヴァンス/Bill Evans」と共演した「チェット・ベイカー/Chet Baker」の名盤「チェット/Chet」であろうか。チェットはこの録音では歌は歌わずに、トランペットだけを聞かせているが、これがまた歌同様のクールな「泣かせ節」。共演者も豪華で、エヴァンスの他は、「ペッパー・アダムス/Pepper Adams」(bsax)、「ハービー・マン/Herbie Mann」(fl)、「ポール・チェンバース/Paul Chambers」(b)、「コニー・ケイ/Connie Kay」(ds)、「ケニー・バレル/Kenny Burrell」(g)、「フィリー・ジョー・ジョーンズ/Philly Joe Jones 」(ds)というメンバー。

チェット

チェット・ベイカー / ユニバーサルミュージック



歌を歌っているバージョンももちろんある。1985年オランダでの録音。宿泊していたホテルの窓から落ちて死ぬ3年前の録音である。当時56歳、相変わらずの「泣き節」、アップ・テンポでスキャットを交えて歌う、円熟の歌唱と言っていいだろう。

Sings Again

Chet Baker / Timeless



ここでは歌なしの名盤「チェット」から聴いてみましょうか。
 
「Chet Baker - Alone Together」
 
           

もう一枚あげるとすれば、「デイヴ・ブルーベック・カルテット/The Dave Brubeck Quartet」のアルト奏者「ポール・デスモンド/Paul Desmond」のBossaアルバム「テイク・テン/Take Ten」に収録されている「Alone Together」。学生時代からの思い出のアルバムで、いまだに愛聴の一枚となっている。

Take Ten

Paul Desmond / RCA

 


 
by knakano0311 | 2011-08-31 23:00 | シネマな生活 | Comments(2)
Commented by Nardis at 2011-09-02 16:02 x
大屋地爵士 こんにちは!
私も久し振りに夫婦で「神様のカルテ」を見に公開初日に出かけました。思ったより客の入りが悪く余計な心配をしてしまいましたが、まあ上場の評判のようです。昨年、原作を早々に読み、期待して出かけました。「さよなら、クロ」もそうでしたが、地元出身者にとっては多少細部に不満が残るのは仕方のないことかも知れません。因みに原作を読んだ信州にいる母親は神様のカルテの舞台は松本の相澤病院だとなぜか力説していました。私の一押しの「Alone Together」はDon Friedman/Flashback中の一曲です。
Commented by knakano0311 at 2011-09-02 16:47
Nardisさん  コメントありがとうございます。なかなかいい映画でした。「クロ」とは同期、トンボ祭の仮装大会にも出演したという思い出もあります。そうそう、Don Friedmanも名盤ですね。
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