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大屋地爵士のJAZZYな生活

Soul Food を食べる

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黒枝豆を求めての丹波篠山までのドライブといえば、昼食は定番の蕎麦でしょう。この付近に何軒かの贔屓の蕎麦屋はあるが、一番のご贔屓は波之丹州蕎麦処「一会庵(いちえあん)」。何回かこのブログでも取り上げているが、茅葺きの古民家を風情ある蕎麦屋に仕立て、メニューは「蕎麦切り」、「蕎麦そばがき」、「蕎麦ぜんざい」の3種だけ。薬味も山葵もなく、濃い目の出汁でいただくというシンプルだが、店主こだわりが感じられる蕎麦を喰わせる。もちろん「蕎麦切り」を注文する。

「蕎麦切り」発祥の地は、中央道長野線、塩尻ICからも近い木曽路の北の端、洗馬(せば)近くの「山本宿」であるという。このことは、江戸時代の粋人「太田蜀山人」の著書にそう書いてあるらしい。それまでの「蕎麦がき」、いわば「蕎麦団子」みたいな食べ方を、「蕎麦切り」、伸ばして細く切って、「団子」から「麺」としての食べ方に変えたのが始まりである。

信州・松本生まれの私にとっては、蕎麦は「ソウル・フード/soul food」。「ソウル・フード」とは、アメリカ南部で奴隷制を通して生まれたアフリカ系アメリカ人の伝統料理の総称である。「ソウル・フード」という名称が定着したのは、アフリカ系アメリカ人に関する色々な事柄を指すのに「ソウル」(「魂」)という言葉がよく用いられるようになった1960年代半ば頃であるという。(Wikipedia参照) 私は「自分の出自やアイデンティティを一番感じられる食べ物」と思っていますが ・・・。

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寒くてなかなか米が育てにくい、山ばかりで平地が少なく水田が開けにくい、火山灰に覆われた痩せた土地が多い ・・・ 、大抵の蕎麦の産地と同じように、そんな理由から信州では蕎麦が盛んに栽培されたのであろう。物心ついたときは、もう蕎麦を食していたと思う。あの貧しい時代でも蕎麦だけは美味かった。そして実家の周りには、蕎麦畑が今でも多くある。帰省時は、うまい蕎麦があると聞けば、車で松本は言うに及ばず、安曇野、木曽あたりまでも走り回って食いに行くほどの蕎麦好きでもある。蕎麦の他にも、おやき、イナゴ、蜂の子、山葵漬け、野沢菜漬け、馬刺し ・・・、信州の「ソウル・フード」はいくつもあるが、やはり一番は蕎麦である。

そして関西暮らしが長くなってからは、うどん、お好み焼き、鱧(はも)、押し寿司、いかなごの釘煮、黒枝豆なども、段々「ソウル・フード」に近くなってきたように思える。日本各地には、その土地土地の「ソウル・フード」が必ずある。仙台ならば笹かまぼこ 三陸海岸や広島なら牡蠣、北海道ならばチャンチャン焼き ・・・というように。そしてその「ソウル・フード」は、その土地の土地柄、伝統文化、気質(かたぎ)などを育んできたのである。今回の震災、原発事故によって東北地方の豊かな「ソウル・フード」が途絶えることがないように願うばかりである。まっ、何百年という長い歴史から生まれてきた「魂の食い物」、そうた易く途絶えることはないであろうが ・・・。

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ところで話は変わって、「ジョー・サンプル/Joe Sample」が率いる「魂委員会/The Soul Committee」とはいかなるものでありましょうや。サンプルは今年72歳。「クルセイダーズ/The Crusaders 」と、のちによりシンプルに名前を変えたジャズ・フュージョン・バンド、「ジャズ・クルセーダーズ/the Jazz Crusaders」の創始メンバーの一人で、リーダーでもあった。そのサウンドは、トロンボーンとテナーサックスに、リズムと彼のフェンダー・エレクトリック・ピアノを絡ませ、独特のファンキーなフィーリングを醸し出す演奏が特徴で、相当な人気があった。1991年にその活動も事実上停止し、10年のブランクを置いて、2002年にほぼオリジナル・メンバーからなるグループ「The Crusaders 」を再結成したが、アルバムも「ルーラル・リニューアル/Rural Renewal」この一枚だけで、かっての人気も熱気もすっかり陰ってしまったようである。その一方サンプル個人では、「レイラ・ハザウェイ/Lalah Hathaway」、「ランディ・クロフォード/Randy Crawford」とのボーカルとの共演盤が大ヒットするなど活動は衰えていない。

「クルセイダーズ」の活動停止期間に、たった一度だけサンプルが率いて全盛期の「クルセイダーズ」も顔負けの熱気あふれる演奏を聴かせたことがある。それが「魂委員会/Joe Sample and The Soul Committee」であり、そのアルバムはスタジオ・ライブと言っていいほど乗りまくったファンキー色の強い「Did You Feel That?」である。メンバーは、当代きってのドラマー、「スティーブ・ガッド/Steve Gadd(ds)」をはじめ、「フレディー・ワシントン/Freddie Washington(b)」、「マイケル・ランドー/Michael Landau(g)」、「ジョエル・ペスキン/Joel Peskin(ts)」、「オスカー・ブラッシャー/Oscar Brashear(tp)」らで、Tr+Saxであるが、かっての「クルセイダーズ」のと同じ2ホーン編成であることも興味深い。アルバム頭からガッドの力強く重いショットと、ワシントンの弾けるベースが聞こえてくると、気分は瞬時にグルーヴへ。そしてサンプルお馴染みのファンキーで渋いエレピ・ソロとくれば、煮えたぎるグルーヴ感は一気に頂点へ。「ファンキー魂、ここに在り!」の叫びが聴こえるようだ。 

Did You Feel That?

Joe Sample Warner Bros.



1994年リリースの「魂委員会」たった一枚のアルバム、「Did you feel that?」から「Mystery Child」を。

「Joe Sample and The Soul Committee - Mystery Child」
 
          
 
さあもう一曲、景気のいいところで「Viva De Funk」。ファンキー万歳!
 
「Joe Sample and The Soul Committee - Viva De Funk」 

          
 
 
 
 
by knakano0311 | 2011-10-15 09:09 | 爵士定規 | Comments(0)
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