立冬。買い物に出かけた駅前のデパートのアトリウムで、菊花展が行われていた。個別の種の花の美しさを競って品評会をするのは、菊と蘭、薔薇くらいではないだろうか。いずれも野生種からは大きくかけ離れ、交配、品種改良を繰り返し、現在のような美しい花になったのであろう。私は菊には興味もないが、この時期、あちこちで行われている菊花展を見ると、やはり美しいとおもうし、ここまで丹精込めて育てる愛好家の苦労は大変だったろうと思う。子供のころ、松本の神社やお城で開催されていた菊人形展に連れて行ってもらったことをなつかしく思い出していた。七五三と重なり、千歳飴を買ってもらうことが楽しみであった。
「イエギク(家菊)」。野生種は存在せず、中国で1500年ほど前に「チョウセンノギク」と「ハイシマカンギク」を親に交配によって生まれたとされている。日本では、奈良時代末期に唐代の中国から渡来し、薬草や観賞用植物として用いられ、平安時代には、陰暦9月を「菊月」と呼び、宮中では「菊の節句」とも呼ばれる「重陽の節句(旧暦9月9日)」が明治時代まで行われ、現在でも皇室園遊会(観菊御宴)として行われている。鎌倉時代には、後鳥羽上皇が菊を好み、自らの印として菊紋を愛用し、身の回りのものに施したことにより天皇および皇室の「紋」となったといわれる。特に「十六八重表菊」が天皇・皇室の「紋」として定着し、その後、明治2年の太政官布告をもって、日本の天皇と皇室を表す紋章と定められた。(Wikipedea 参照)
現在でも日本の大使館などの玄関には、国章の代わりとして菊花紋章の浮き彫りがあり、パスポートの表紙にも、「菊の御紋」をデザイン化した「十六菊」が使われている。国会議員の議員バッジ、自民党の党章にも菊花紋をデザイン化した意匠が用いられ、そのほか、日本の勲章の意匠にも取り入れられるなど、「菊」は「桜」と並び、国花に準じた扱いを受けている。
「桜」が「もののあはれ」、「潔さ」といった日本人の美意識、心情を代表する花なら、「菊」は、国家体制、権力を象徴する花と言っていいだろう。どちらも日本とは切っても切れない花ではある。
第二次大戦中の米国戦時情報局による敵国・日本の研究をもとに執筆され、後の日本人論の源流となった本があることを思い出した。ルース・ベネディクト著「菊と刀」。日本人の行動や文化の分析からその背後にある独特な思考や気質を解明、「菊の優美と刀の殺伐」に象徴される日本文化の二面性を批判的かつ深く洞察した日本人論。 賛否両論いろいろあるが、ベネディクトが一度も来日経験なくしてこの著書を著したというから驚きである。
菊と刀 (講談社学術文庫)
ルース・ベネディクト / 講談社
立冬。朝は相当冷え込んできた。こうなると贅沢なもので、わずか前の、あの夏の暑さとけだるさが恋しくなる。気分だけでもと、ボサノバ・タッチで夏の名残りとけだるさを感じる「Paris Match/パリス・マッチ」の曲をずっと流していた。「Paris Match」。1998年結成、2000年、ビクターエンタテインメントよりデビューした、「ミズノマリ」、「杉山 洋介」、「古澤大(現在は脱退)」からなる男女3人組のユニット。アンニュイな雰囲気が漂う楽曲を得意とするが、そのけだるさが何とも言えず、私はずいぶん聴いていた時期があった。
typeIII
paris matchビクターエンタテインメント
「paris match - cream」
QUATTRO
paris match 古澤大 杉山洋介 Satoshi Sano Shiro Sasaki Pamela Driggs パメラ・ドリッグス OSAMU KOIKEビクターエンタテインメント
「paris match - 潮騒」