こんな穏やかな日に聴きたいのは、前回に続く「アジアの癒し姫」の二人目、「ジャシンサ/Jacintha」。中国人の母とインド人の父を持ち、シンガポールで活躍しているJAZZボーカリスト。何枚ものアルバムがリリースされているが、彼女の天性の美声とSACD仕様の録音の質の良さで、オーディオ・ファンはシステムのチェック用にしているという。私は普通のCDデッキを使っているが、それでも、その録音の良さは特筆といえる。振幅の大きなヴィブラートを特徴とし、「レスター・ヤング/Lester Young」や「コールマン・ホーキンス/Coleman Hawkins」と並んで、モダン・ジャズ・テナー・サックスの祖と称された「ベン・ウェブスター/Ben Webster」をトリビュートしたアルバムが「Here's to Ben」。「The Look Of Love」、「Stardust」、「Tenderly」などのスタンダード曲が続くが、圧巻は「Danny Boy」。「ア・カペラ」で歌いはじめ、その吐息が感じられるほどの臨場感と、鳥肌が立つほどの歌唱力に圧倒される。