2月12日(現地時間)に行われた第54回グラミー賞授賞式は、最優秀レコード賞、最優秀アルバム、最優秀楽曲など主要3章を含む6部門を英国出身の歌手「アデル/Adele」が受賞した。まさに独壇場であった。正直「えっ」と思った。まだ23歳の女性シンガー・ソングライターである。しかし去年、アルバムが全世界で売れに売れた、そんな話題のシンガーがいると名前だけはかすかに記憶に残っていた。
「アデル」。2008年に19歳でリリースしたデビュー・アルバム「19」がイギリスでヒット・チャート第一位となり、グラミー賞最優秀新人賞を獲得、続いて、2011年に21歳でリリースしたセカンド・アルバム「21」が、英米両国で初登場1位を獲得、その後全世界19カ国で1位を獲得し、全世界トータル売り上げがなんと1,700万枚を突破したという。
さっそく、YOUTUBEを見たり、CDをレンタルして聴いてみたが、あれだけの声量、歌唱力を持つジャズ、POPS系の女性歌手は日本にはいないと素直に感じた。いるとすればとすれば、演歌歌手、オペラ歌手あたりか ・・・。声を響かせる体の大きさ、ボリューム、首の太さが比べ物にならないのである。最近亡くなった、「エタ・ジェームス/Etta James」さんや「ロバータ・フラック/Roberta Flack」を敬愛しているという。音楽アルバムを聴いてみると、ジャズやソウルをバック・グラウンドに持っていることがよくわかるし、その赤裸々な感情を告白する歌詞とソウルフルな歌声は迫るものがある。しかしながら、いまひとつ「入れ込む」というほどまでには魅かれなかったことを正直に言っておこう。
19
Adele / Sony
21
アデル / ホステス
それでは、年間最優秀アルバムを受賞した「21」から、年間最優秀楽曲を受賞した「ローリング・イン・ザ・ディープ/Rolling in the Deep」を聴いてみましょうか。
「ADELE - Rolling in the Deep」
しかし聴きながら思ったことであるが、最近音楽に関して、私は少しコンサーバティブになってしまったかも知れない。「ジャズは人生のBGM」と称してはばからない私が言うのもおかしいのであるが、かって、前衛、アヴァンギャルド、反体制などの象徴であったJAZZも、いまや蕎麦屋やこじゃれたカフェで聴かれるほど、日常的でBGM的な音楽になってしまったし、ジャズ・コンサートへ行ってもお客さんはほとんどが私と同世代の爺さん婆さん。「JAZZファンはコンサバ」と言っても、あながち的外れとは思えない。私も、新しいJAZZ、新しいミュージシャンに対して、「喰わず嫌い」といった傾向になってきているのを認めざるを得ない。経済的な事情もあるのだが、CDショップなどでも、新しいジャズアーティスト、しかも殆どがオリジナルとなったら、まず手が出ないのが本音。「アデル」のような新しい才能をもつアーティストが出てきて、もっともっと音楽界に刺激を与えてくれるといいのだが ・・・。団体さんばかりの日本ではそれも無理か。