私には、意味も発音も全く分からないポーランド語でしか歌わないジャズ歌手、私が知っている限り、いわゆるジャズ・スタンダードを一曲も歌わないジャズ歌手、「アナ・マリア・ヨペック/Anna Maria Jopek」が、なぜ私の心をこれほどまでにとらえてしまったのだろうか? 世界中のアスリート達によって展開されるオリンピックの戦いを観ながら、ポーランドとヨペックの音楽的背景について少し考えてみたその続きの話です。
幼少の頃より、ショパン、ラヴェル、バッハ、モーツァルトをこよなく愛した彼女は、伝統ある「ショパン音楽アカデミー」で、クラシック・ピアノを学び、卒業後に渡米、ニューヨークで音楽を学ぶ。そこでジャズに魅せられる。帰国後、1997年、アルバム「Ale jestem(But I am)」でデビュー。このアルバムが瞬く間にゴールド・アルバムに。その後発売された10枚のアルバムは、全てポーランドのプラチナとゴールド・ディスクを獲得。中でも2002年にリリースされた「パット・メセニー」との共演アルバム「Upojenie」は発売後僅か1ヶ月で8万枚を売り上げたという。(公式HPより)
そんな「アナ・マリア・ヨペック/Anna Maria Jopek」のジャズ的出自が知りたくなって、初期のアルバム、彼女の2作目となる「SZEPTEM」 (Mercury/PolyGram 1998) を聴いてみた。公式HPの解説には、「このアルバムは、ポーランドで作曲された代表的な美しいバラードのいくつかをトリビュートし、ヨペックの持つピュアさ、優しさ、クラシックな面を追究するために作られた。そして、Disc-2には、ワルシャワ交響楽団との歴史的な競演のジャズ・ライブが収録されている」とある。
さあ、極め付けのスロー・ボッサは、「ヴィニシウス・デ・モラエス/Vinicius de Moraes」作詞、「バーデン・パウエル/Baden Powell」作曲のあの美しい曲、「アペロ/Apelo」にポーランド語の詩をつけた「Samba Przed Rozstaniem」。これも両Discに収録されている。