(写真は「リリエンタール・グライダー/Otto Lilienthal's Normal-Segelapparat 1894」;1/160スケール 翼幅41mm)
今ちょっとばかり夢中になりそうな予感がしている工作がある。「
(有)エアロスペース」が製作販売している精密飛行機模型、「マイクロ・ウィング・シリーズ」。真鍮(しんちゅう)または洋白の薄い板を精密に打ち抜いたパーツを、カッターナイフで切り離し、接着剤を使わずにピンセットだけで組み立てていく、そんな超小型の金属模型飛行機である。悲しいかな寄る年波には勝てず、拡大ルーペをかけながら、さっそく買って来た数台の模型の製作を始めたが、これが面白い。我々の年代の男の子は誰でもそうだったかもしれないが、子供のころから結構飛行機好きで、紙飛行機に始まり、竹ひごをまげて作るゴム動力の飛行機、プラモデルなどずいぶんと作った。とても買ってはもらえなかったUコン機を近所の大人が操縦するのを憧れの目で飽きもせず眺めていたこともある。いまでも、ラジコン・ヘリコプターや飛行機といった趣味をしてみたいという思いが湧き起ってくることもある。そして、旅は鉄道ではなく「飛行機」派である。現役を退いた今、飛行機に乗る機会もめっきりが減った、かっては可能な限り、窓側の座席を取り、ヨーロッパや米国出張のときも、飽きもせず外を眺めていたものである。たしか、ANAの生涯飛行マイルは44万マイル(70.4万㎞)を超えていたと思う。
ミュンヘンの「ドイツ・ミュージアム」を訪れたときは、試験飛行中に風にあおられ墜落、脊椎を折り、1896年8月9日、48歳の若さで死去し、後にライト兄弟も動力飛行の参考していた 「オットー・リリエンタール/Otto Lilienthal」の「リリエンタール・グライダー」、第一次世界大戦で「リヒトホーフェン/Ferdinand Freiherr von Richthofen」男爵(通称レッドバロン)の乗機として有名なフォッカー機や、第二次世界大戦で活躍した「メッサーシュミット/Messerschmitt」をはじめとする実物やレプリカの飛行機展示を飽きることなく眺めていたし、コミック「エリア88」に登場し、「サーブ」社が製作するスエーデン空軍の「ドラケン35/Draken35(スウェーデン語で竜)」のこれも実物をマルモの博物館で見た時も、心が躍ったものである。
「撃墜王アフリカの星」、「ブルー・マックス」、「素晴らしき飛行機野郎」、「ライトスタッフ」、「レッドフォックス」、「トップガン」、「ブルーマックス」、「ステルス」、「フライボーイズ」、最近では「レッドバロン」 ・・・・。 数えきれないほどの飛行機、飛行機乗りが主役の映画も見た。その中で、男のロマンと哀愁を描いた戦闘機乗りの傑作映画といえば、「宮崎駿」監督の「紅の豚」であろうか。何回も観たDVD。ちなみに、宮崎が主宰する「スタジオ・ジブリ/Studio Ghibli」の名は、第二次世界大戦中に活躍したイタリア・カプローニ社の偵察/爆撃機、「サハラ砂漠に吹く熱風」と呼ばれた「Ghibli (CAPRONI Ca309 GHIBLI)」に由来していることから、彼の飛行機好きが窺えよう。幼い頃から空を飛ぶことに憧れていた宮崎が、自分の夢として描いた作品であるが、宮崎自身がその演出覚書において、「疲れて脳細胞が豆腐になった中年男のためのマンガ映画にしたい」と記しているという。
1920年代のイタリア、アドリア海には空賊相手の賞金稼ぎをしている豚がいた。「飛ばねぇ豚はただの豚だ」とのたまう彼の名は「ポルコ・ロッソ/Porco Rosso」。紅の翼の飛行艇を巧みに乗りこなす、この豚の活躍を小気味よく描いた一大航空活劇である。
紅の豚 [DVD]
ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
歌手の「加藤登紀子」が主題歌のみならず声優として参加したことでも話題になったが、ポルコの幼なじみで彼が想いを寄せる「ホテル・アドリアーノ」のジーナ役の彼女が劇中で歌っている「さくらんぼの実る頃」は、パリ・コミューン時に生まれた歌。そしてエンディングに流れる「時には昔の話を」は彼女の作詞作曲。今聴くと心にじわっと沁みてくる。まさに、あの昔の学生時代がよみがえってくるように ・・・・。
紅の豚
サントラ / 徳間ジャパンコミュニケーションズ
そして「紅の豚」のエンディング用に「宮崎駿」が書き下ろした水彩画に、「加藤登紀子」、「さくらんぼの実る頃」の作詞者、「ジャン・バチスト・クレマン/Jean-Baptiste Clément」などの詩が加えられた絵本がある。宮崎駿/加藤登紀子「時には昔の話を」(徳間書店)。
時には昔の話を
宮崎 駿 / 徳間書店
【 時には昔の話を 】 作詞作曲;加藤登紀子
「♪ 時には昔の話をしようか
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
一枚残った写真をごらんよ
ひげづらの男は君だね
どこにいるのか今ではわからない
友達もいく人かいるけど
あの日のすべてが空しいものだと
それは誰にも言えない
今でも同じように見果てぬ夢を描いて
走りつづけているよね どこかで ♪」
「時には昔の話を - 加藤登紀子」 映画のサウンド・トラックから。