(写真上;群雲櫻 写真下;国道477号線から見る「櫻の森」)
ついに見ごろとなったご近所のエドヒガン。まずは、「日本の里山百選」にも選ばれ、我が遊び場の山からもすぐ近くにある、兵庫県川西市黒川地区の里山に群生する「櫻の森」。この「櫻の森」には、エドヒガンが約50本、その倍以上の数のヤマザクラが自生、群生している。何年か前から、ボランティアの桜守の方々の大変な努力によって、クマザサや雑木を刈り、小道をつけ、ベンチをおくなどして、一般の人が楽しめるように整備がすすんでいる。樹齢100年を超えるような古木には、「微笑み櫻」、「長老」などの名前がつけられているが、今年デビューしたのはいまが満開の「群雲櫻(むらくもざくら)」。その名の通り、数本の櫻が密集して美しさを競っている。「ソメイヨシノ(染井吉野)」にくらべると、花弁もかなり小振りで、楚々とした風情だが、その控えめな美しさに一層魅かれるのである。ちなみに、「エドヒガン」は兵庫県のレッドデータブックに記載されている絶滅危惧種である。
次は私の住んでいる団地の西側、猪名川がつくる渓谷の斜面に自生している「渓の櫻」である。この斜面に樹齢40~50年の「エドヒガンザクラ」が70本ほど群生し、この時期になると、住民の目を楽しませていた。ところが残念なことに、この渓谷はゴミの不法投棄の場所ともなっていて、永年によるゴミで「エドヒガン」の根元が傷められ、枯死の危機に瀕していた。このままでは貴重な櫻が失われてしまうと、数年前から、地元の有志の皆さんが「守る会」を結成し、この谷の整備を始め、放置されていた粗大ごみを片付け、雑木やつるなど伐採をして光を林にいれ、弱っていた「エドヒガン」を再生させた。そして整備が進むにつれ、「ツツジ」などの低木や「スミレ」、「ハクサンハタザオ」などの群生や「フデリンドウ」、「キンラン」などの貴重な草花も出現し、植生の多様化も進んだという。遊歩道などもつけ、見違えるようになったこの谷を、「エドヒガン」が咲くこの季節に市民に一般公開している。
2つの地域とも、「エドヒガン」の保護に地元のボランティアが大きな役割を果たしている。こんな地域は日本のいたるところにあるに違いない。「地方分権」なんて声高に言うまでもなく、地域でおきるものごとに対し、地域はどうしたいのか、或いはどうしたら解決するのかを実践してゆく、このことがいま、一番大事である。どんな小さな活動でも、その積み重ねや広がりが、政治に期待するよりも、確実に地域を住みよくすることにつながっていくはずである。
ところで、この「エドヒガン(江戸彼岸)」、関東地方に多く自生することから、この名がついたらしいが、関東地方からこの「エドヒガン」の便りが聞こえてこないのはなぜだろうか?そして、この「エドヒガン」は、猪名川町、川西市、能勢町、豊能町、池田市、伊丹市などの猪名川水系にのみ自生し、ひとつ隣の三田市、宝塚市、西宮市、伊丹市などを流域とする武庫川水系には自生しないという。これも不思議の一つである。
こんな櫻を堪能した宵は、また「ジョバンニ・ミラバッシ/Giovanni Mirabassi」の「さくらさくら」がどうしても聴きたくなってしまう ・・・。
「Giovanni Mirabassi - さくらさくら」