8月23日、処暑の日。
「すべてを失ったあの夏、我が家の未来が始まった。」
だいぶ昔に読んだことがある、「妹尾河童(せのお かっぱ)」原作、「降旗康男」監督、「水谷豊」、「伊藤蘭」主演の映画「少年H」を観る。昭和初期の神戸の街を舞台に、戦争を生き抜いた「名も無き家族」の物語である。好奇心と正義感が強く、名前のイニシャルから「H(エッチ)」と呼ばれる少年「肇(はじめ)」が、神戸に住む外人を多く顧客に持つ洋服の仕立て屋で、リベラルな父と、熱心なクリスチャンの母、そして妹のごく普通の家族とともに、戦争という理不尽な出来事を体験し、戦後は大人たちの豹変ぶりに怒りを覚えながら、15歳になると独り立ちを決意する。そんな、家族の絆と成長の物語。
私は、終戦の翌年、昭和21年(1946年)3月の生まれであるから、もちろん戦争の体験はないが、その大変さは親父や母親から聞かされていた。しかし、子供の私にはさっぱり興味はなく、戦争ごっこやチャンバラなどに明け暮れていた子供時代であった。「妹尾河童」の自伝的小説ということであるが、私の子供時代に比べ、子供ながらもそのしっかりした価値観に感心して読んだ記憶がある。
そして、帰宅してからは、最近少し読み漁っている「半藤一利」氏の「あの戦争と日本人」の続きを読みだした。夜は久しぶりの豪雨。少しは涼しくなるのかな ・・・。
あの戦争と日本人 (文春文庫)
半藤 一利 / 文藝春秋
さて、「処暑」の日のジャズ・ピアノ。「ニューヨーク・トリオ/New York Trio」なんぞいかがでしょうか。歌心溢れるピアノ弾きで、アメリカのジャズピアニストの中でも、私がご贔屓の一人、「ビル・チャーラップ/Bill Charlap」が率いるピアノ・トリオである。i-PODに替えるまでは、海外出張といえば、必ずもっていった一枚が、このトリオの「過ぎし夏の想い出/The Things We Did Last Summer」。メロディアスで都会的、洗練された音色とタッチが、ヨーロッパのそれとは違う。ニューヨークの匂い、マンハッタンの夜の雰囲気が立ち上がってくるような一枚。サポートは、72歳、ご長寿ベーシスト、「ジェイ・レオンハート/Jay Leonhart」とチャーラップと同じ年のドラム、「ビル・スチュアート/Bill Stewart」。
過ぎし夏の想い出
New York Trio/ヴィーナス・レコード
とろけるようなタッチにうっとりするアルバム・タイトル曲「過ぎし夏の想い出」。
「New York Trio - The Things We Did Last Summer」