
「写真;漆金薄絵盤(うるしきんぱくえのばん) 香印坐(こういんざ)」
今年もまた「正倉院展」の秋がやってきた。連休明けは「第65回正倉院展」へ ・・・。
定年後は、比較的空いているウィークデイに行けるようになったため、都合で行けなかった去年を除いては、ほぼ毎年行っている。我が家から高速を走れば、奈良国立博物館まで、1時間ほどの距離である。9時前に家を出たら、10時にはもう博物館のある奈良公園に着いていた。高円にある駐車場に車を預け、奈良公園を抜けて、博物館へと向かう。前売券は持っていなかったが、連休明けのためか行列も短く、5分足らずの待ち時間で入場出来た。
今年のテーマは「在るだけで物語」。とりわけ23年ぶり二度目の出陳となる、蓮華座(れんげざ)のような形をした木工品で、仏前に供える香具の台座であった「漆金薄絵盤」をはじめとする仏具の優品、聖武天皇ご遺愛の「平螺鈿背円鏡(へいらでんはいのえんきょう)」といくつかの屏風がまとまって出陳された。このほか、楽器や伎楽面(ぎがくめん)、貴族の遊びの道具、腰飾りや刀子(とうす)などの装身具、宮中の年中行事にかかわる道具、奈良朝の人々の暮らしを伝える文書などもあわせて出陳されていた。

大きな唐花文(からはなもん)に4羽の鳥がとまり、まわりに小さな花と葉がリース状にめぐる図柄が螺鈿(らでん)や琥珀(こはく)で背面を飾った美しい鏡「平螺鈿背円鏡(へいらでんはいのえんきょう)」。「漆金薄絵盤」と並んでやはり豪華で美しい。

しかし、背円鏡は過去にいくつも見ている。今回は、仏に献納する品々を載せた華麗な台机、「彩絵長花形几(さいえのちょうはながたき)」の控え目な美しさにもっとも興味を覚えた。縦45.0cm 横65.4cm 高9.0cm。ヒノキ材製で、天板は長八稜形(ちょうはちりょうがた)にかたどり、8脚の華足(けそく)を直付(じかづ)けする。天板の側面、華足には青系の地に、赤色でグラディエーションを施された花文が描かれている。その花文が可憐でこの上なく美しい。
その他には、合計18条の染色した練り糸を用いて組みあげた帯で見事な文様が表れている「雑帯(ざったい)、現代にも通ずる機能美を供えた「刀子(とうす)」群、正月に邪気を祓うまじないの儀式に用いた彩色された「椿杖」。いずれも、どちらかといえば地味な出陳品であるが、それらを作った名もなき職人の手間、技、完成までの時間を考えると、とてつもない贅沢な道具や調度に思える。さらに彼らが生きていた時代や人生まで想いを馳せれば、「在るだけで物語」、そんな今年のテーマが実感となって迫ってくる。今年も「眼福」の一日であった。
駐車場へ向かう帰り道、いつもこの頃なら相当に色づいているはずの奈良公園の紅葉は、まだ色づき始め。前日に近畿地方に「木枯らし1号」が吹いたというが、この日の穏やかな秋の陽を浴びながら、今年生まれたと思われる子鹿が草を食んでいた。帰ってから、じっくりと買い求めた目録を眺め、一人で「物語」に浸ってみようか ・・・。
そんなためのBGMに ・・と選んだのは、「ダスティン・オハロラン/Dustin O'Halloran」。

先だって「色彩のピアニスト」として、「Piano Solos Vol.1 and 2」を紹介したばかりである。(参照拙ブログ
「七五三の夜に聴く色彩のピアニスト」) 彼のアルバムに、ドイツ・ベルリンのグルネヴァルド教会での2009年の演奏を録音した「Vorleben」というアルバムがある。「Vorleben」は、ドイツ語で「過去、前歴、前身、素性 ・・・」という意味である。このアルバム・タイトルも、前回のアルバムと同じように、「Opus(作品)××」とだけつけられた曲のタイトルもまた、その奥に潜む「物語」を聴き手に自然に想起させる。
Vorleben
Dustin O'Halloran / Fat Cat
研ぎ澄まされたような「ダスティン・オハロラン」のピアノの音色を2曲ほど ・・・。
「Dustin O'Halloran - Opus 54」
「Dustin O'Halloran - Opus 17」
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