もうすぐ3月である。そして、私の68歳の誕生日も近づいてくる。
それはさておき、私が知っている限り、カラオケで最もおじさんたちに歌われている洋楽の曲は、「マイウェイ/My Way」である。「マイ・ウェイ」は、カバーされた回数が、史上第2位(第1位は「ビートルズ/The Beatles」の「イエスタデイ/Yesterday」)と言われている、1969年の「フランク・シナトラ/Frank Sinatra」の大ヒットのポピュラー・ソングで、作詞は「ポール・アンカ/Paul Anka」。とまあ、ここまではほとんどの人が知っていることであろう。
ところが、その原曲の作曲は、1960年代のフランスのアイドル歌手で、39歳の若さで夭折した「クロード・フランソワ/Claude François」であるということは意外と知られていない。1967年のフランス語の歌、「Comme d'habitude(いつものように)」(作詞:クロード・フランソワ、ジル・ティボ/Gilles Thibault、作曲:クロード・フランソワ、ジャック・ルヴォー/Jacques Revaux)が原曲である。
この「マイ・ウェイ」の作曲者として知られ、世界デビュー直前に39歳の若さで急逝した「クロード・フランソワ」の波乱の生涯を映画化したのが、映画「最後のマイ・ウェイ/原題;CLOCLO」(2012)。監督は、「フローラン・エミリオ・シリ/Florent Emilio Siri」、主演は「ジェレミー・レニエ/Jeremie Renier」。
「クロクロ/CLOCLO」という愛称でも知られる、「クロード・フランソワ」は、1939年、裕福で厳格な実業家の父の家に生まれ、家族とともにエジプトで恵まれた毎日を送っていた。ところが、第2次中東戦争によって父が失業し、一家はモナコへと移住。クロードは家計を支えるため、楽団の歌手として働きはじめる。父の死後、パリに進出し、歌手としてデビュー。しかし、なかなか人気が出ず下積みの苦労を味わっていたが、やがて敏腕マネージャーのポールのプロデュースでスターの座へと上り詰める。そんな中、「夢見るシャンソン人形」で一躍有名になった、アイドル歌手「フランス・ギャル/France Gall」との破局を歌った「Comme d'habitude(いつものように)」を、ずっと尊敬していた「フランク・シナトラ」が、英語詩でカバーすることとなった。人気絶頂、世界デビュー目前の1978年3月11日、フランソワはパリの彼のアパートの部屋で、割れた電球で浴槽を照らそうとして感電死した。
1960年代から70年代にかけてといえば、「ビートルズ」の全盛時代。そして私が知っているフランスPOPS界のスター、アイドルといえば、「ジョニー・アリディ/Johnny Hallyday」、彼と結婚した「シルヴィ・ヴァルタン/Sylvie Vartan」、「フランス・ギャル」、「セルジュ・ゲーンズブール/Serge Gainsbourg」。正直言って、「マイ・ウェイ」の原曲がフランスの歌ということは知っていたが、「クロード・フランソワ」を私は知らなかった。この映画でその生涯を初めて知ったのだが、波乱万丈、栄光と挫折、愛と憎悪、家族、悲劇的な死 ・・・、悲劇のヒーローに当てはまるすべての要素を持ったスター、「クロード・フランソワ」の短い人生ドラマにすっかり見入ってしまった。疾走した人生。やはり、神は光と栄光だけを授けないのである。主演は「ジェレミー・レニエ」はよく似ているし、歌もうまく、十分、「クロード・フランソワ」の雰囲気を出していると思った。
そして、3月11日は奇しくも私の誕生日であることに気がついた。
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TCエンタテインメント
「映画『最後のマイ・ウェイ』予告編」
まず、「クロード・フランソワ」のオリジナル、「いつものように」から。
「Claude François - Comme d'habitude(いつものように)」
そして、「フランク・シナトラ」の「マイ・ウェイ」。歌詞が出てきますので、カラオケ十八番の方はどうぞ。
「Frank Sinatra - My Way」